君のとなり

朝比奈萌子

【読切】君のとなり、全エピソード。(脚本)

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〇教室
里奈「はあ・・・・・・今日も彰人くん、かっこよかったなぁ」
美久「いつまでも密かに想い続けてないで、告白しちゃえば?」
里奈「無理だよ! そんな勇気ないし・・・・・・」
美久「だからって毎日部活のお菓子作りに熱中してるだけじゃ、両思いにはなれないわよ?」
里奈「わかってるけど、それにしか誇れるところ、ないんだもの」
美久「まだまだ時間がかかりそうね」
里奈「・・・・・・・・・・・・」

〇学校の廊下
里奈「今日も部活がんばろう!」
里奈「あ、彰人くんだ!! やっぱりカッコイイ・・・・・・」
里奈「(遠くから見ることしかできないけど、いつか彰人くんに私の作ったお菓子、食べてほしいな)」

〇学校の昇降口
里奈「クッキー、うまくできたな!」
里奈「また幼馴染みの雄馬に食べてもらおうっと」
里奈「あ、雄馬だ!」
里奈「雄馬!」
雄馬「おう、里奈。どうした?」
里奈「雄馬、部活お疲れさま! 今日はクッキー作ってみたんだ。また食べて感想聞かせてくれる?」
雄馬「お、おう。いつもすまないな」
里奈「いいの、感想もらえて私も助かっているから!」
雄馬「・・・・・・・・・・・・」

〇女の子の一人部屋
里奈「あ、雄馬からメールだ!」
里奈「えーと、「硬さはちょうどよかったけど、少し甘いかもしれない」か・・・・・・」
里奈「相変わらず雄馬、的確な感想くれるから、助かるなぁ」
里奈「いつか彰人くんに食べてもらえるようなお菓子、がんばってこれからも作ろう!」
里奈「あ、今度は美久から電話だ!」
里奈「はい、もしもし?」
美久「で、今日こそ彰人くんに近づけたわけ?」
里奈「うん、お菓子の腕がまた一歩上がったよ!」
美久「・・・・・・そういう意味じゃなかったんだけど」
里奈「あ・・・・・・」
美久「それよりね、今日、雄馬くんを見たよ」
里奈「そりゃあ、同じクラスだから見るよ」
美久「そうじゃなくて、彰人くんと一緒にいたところを見たのよ!」
里奈「え!? どうして?」
美久「そんなことまで私にはわからないわよ」
美久「ただ、報告しておいたほうがいいと思って」
里奈「うーん、雄馬に聞いてみるべき?」
美久「それがいいんじゃない? 彰人くんとお近づきになれるかもよ」
里奈「そ、そんなやましい考えは持ってないけど!」
里奈「でも気になるから、明日雄馬に聞いてみるよ」
美久「それがいいよ、じゃあまたね!」
里奈「うん、ありがとう」
里奈「(雄馬が彰人くんと友達だったなんて・・・・・・初耳だなぁ)」

〇学校の屋上
  翌日、私は雄馬を屋上に呼び出して、例の件を聞いてみた。
里奈「急にこんなところに呼び出してごめんね」
雄馬「いいけど、どうしたんだ?」
里奈「美久が昨日、雄馬が彰人くんと一緒にいるところを見たって言っていたんだけど・・・・・・」
雄馬「・・・・・・・・・・・・」
里奈「単刀直入に聞くけど、雄馬と彰人くんはどういう関係なの?」
雄馬「えっ・・・・・・そ、そりゃあ友達ってだけで──」
里奈「なんで言いにくそうなの?」
里奈「もしかして私が彰人くんを好きだから、遠慮しているの?」
雄馬「い、いやぁ・・・・・・」
雄馬「さすがにもう黙っているのは無理かなぁ」
里奈「え?」
雄馬「実はお前にいままでもらっていたお菓子、俺は一度も食べてないんだ」
里奈「えっ!?」
里奈「そんな、ひどい! まさか捨てていたの?」
雄馬「違う! そんなひどいことするわけないだろう!」
里奈「じゃあ、どうしていたの?」
雄馬「それ」
里奈「え?」
雄馬「それが彰人と関係があるんだ」
里奈「ど、どういう意味・・・・・・?」
雄馬「俺は甘いものが苦手だから、甘いものが好きな彰人に食べてもらっていたんだ」
里奈「え・・・・・・ええ~!?」
里奈「彰人くんにそんなこと・・・・・・! そんなの迷惑じゃない!」
雄馬「それが迷惑というわけでもなくてだな」
里奈「どういう意味?」
雄馬「彰人は前々からお前のお菓子が食べたかったんだ」
里奈「えっ・・・・・・」
里奈「それって──」
雄馬「うん、彰人のやつ、実はお前のことが好きなんだよ」
雄馬「それで俺に協力してほしいってずっと言っていて」
雄馬「お前がお菓子をくれるようになってからはぜんぶ彰人にあげていた」
里奈「じゃあ、あの感想は・・・・・・?」
雄馬「あれは彰人の感想だ」
雄馬「あいつ、少しでもお前に近づきたくてアドバイスしていたらしい」
雄馬「いつか自分の存在に気づいてくれるかと思って」
里奈「・・・・・・・・・・・・」
里奈「そうだったのね・・・・・・」
雄馬「秘密がばれたこと、彰人に言っておくから、放課後ふたりで話したらどうだ?」
里奈「えっ、で、でも・・・・・・」
雄馬「いい加減、両思いなことに気づけよ?」
里奈「!!」

〇学園内のベンチ
  雄馬の勧めで、私と彰人くんは放課後にふたりで会うことになった。
里奈「あ、あのっ、急にこんなことになってごめんなさい!」
彰人「いや、君は何も悪くないよ」
彰人「僕のほうがいろいろ秘密にしていて悪かったと思っているんだ」
里奈「そんなことない!」
彰人「えっ」
里奈「私、私は彰人くんがずっと好きだったから、うれしかったの!」
彰人「・・・・・・・・・・・・」
里奈「お菓子のアドバイス、本当にためになっていた」
里奈「そのおかげで腕が上がったから」
里奈「私、いつか彰人くんに食べてもらえるお菓子を作りたいってがんばっていたの」
彰人「そうだったんだね」
彰人「僕はいつか里奈ちゃんに僕の存在を気づいてほしくて、回りくどいことしちゃったけど」
彰人「君のお菓子を食べるの、本当に楽しみだったんだ」
里奈「彰人くん・・・・・・」
彰人「ずっと君のとなりにいたいと思っていた」
里奈「そんな・・・・・・アイドル王子さまの彰人くんがそんなこと──」
彰人「それは周りが勝手に思っているだけだよ」
彰人「僕はずっと、君のことが好きだったんだ、里奈ちゃん」
里奈「彰人くん・・・・・・! うれしい!」
彰人「僕もやっと気持ちを伝えられてうれしいよ」
  こうして私たちは想いを通じ合わせることができた。

コメント

  • 優しい気持ちになれるストーリーでした。二人の気持ちは通じ合っていたのですね。言葉にして伝えると早いですが中々踏み切れないものですね。

  • まさかの両思いとは。
    不器用な二人の思いを結びつけてくれたのが雄馬君で、後はお互いに少しだけ勇気を出せばよくて…甘酸っぱくてかわいいお話でした。

  • 登場人物、みんな不器用で一生懸命で、いかにも学生っぽくてドキドキしました。普通は気付かれないような回りくどい行為でのハッピーエンドは素敵です。

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