〇教室
担任「はい、みんな席について 転校生を紹介するから」
担任「静かに。一ノ瀬さん、入ってくれ」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「あたし、一ノ瀬愛里。よろしくね♡」
男子生徒「うおお！すっげえ可愛い！」
女子生徒「え、でもメイクしてるし、服違うくない？」
担任「あ、あぁ。一ノ瀬さんはいいんだ」
担任「じゃあ、藤堂の横に座ってくれ」
担任「学級委員長だし、色々頼りになると思う」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「はぁーい」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「よろしく。なんでも聞いて」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ありがとっ」

〇教室
藤堂玲花(とうどう　れいか)（私立中学に転校生って珍しいよね）
女子生徒「ねぇ、坂センはいいって言ってたけど、この学校メイクとかダメなの」
女子生徒「明日からはやめといた方がいいよ。生活指導怖いし」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「・・・」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「なんでそんな酷いこと言うの？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「皆に好きになってほしくて頑張ったのに」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「酷い──！」
男子生徒「愛里ちゃんカワイソー」
男子生徒2「言いすぎじゃね？」
女子生徒「なんでそんな風に言われないといけないの？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（だいぶやばい子が来たっぽいな）
藤堂玲花(とうどう　れいか)（さっきの子──佳奈か、慰めないと）

〇本棚のある部屋
　　佳奈：あいつマジ意味わかんない！
藤堂玲花(とうどう　れいか)「ほんとにね」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（この話もう30分くらいはしてるな）
藤堂玲花(とうどう　れいか)（そろそろ切り上げないと──）
お母さん「玲花？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「ごめん、お母さんが呼んでる」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「一ノ瀬さん、明日から気をつけてみるね」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「佳奈は全然悪くないんだから」
　　佳奈：──うん。おやすみ
お母さん「玲花。勉強もせずに楽しそうね」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「クラスの子の相談に乗ってたの」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「委員長の仕事だよ。お母さんがやれって言ってたでしょ」
お母さん「なにその言い方。お母さんが悪いの？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「、違うよ。ごめん、勉強するね」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（一ノ瀬さんって、お母さんに似てるな）

〇教室
藤堂玲花(とうどう　れいか)（どうしよう。揉め事仲裁大変なんだよね）
男子生徒「え、図書室？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「うん、連れてってくれる？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「ねぇ、案内私がするよ。学級委員長だし」
男子生徒「いやいや俺が」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「中井、バスケ部で呼ばれてたでしょ。部長に怒られるよ？」
男子生徒「そうだった」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「ということで案内変わっていい？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「うん。お願い、玲花ちゃん」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（急に距離ちか）
藤堂玲花(とうどう　れいか)（まぁ、これで二人で話せそう）

〇図書館
藤堂玲花(とうどう　れいか)「着いたよ」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「広ーい！ありがと、玲花ちゃん」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「気にしないで。本好きなの？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「うーん、すごい好きってわけでもないの。家に読んでない本沢山あるし」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ただ、あの本が置いてるか気になっただけ」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「あの本？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「絵本なんだけど、王子様が孤独なお姫様を救ってくれるの」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「絵本はあんまり置いてないかも。探そうか？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「うん、お願い！」

〇図書館
藤堂玲花(とうどう　れいか)「うーん、ないみたい」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「そう、なんだ」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「どうして。この学校の人は愛里を嫌いなの？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「愛里の大好きな本、置いてないなんて」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（やっぱり似てるなぁ）
藤堂玲花(とうどう　れいか)「酷いね。一ノ瀬さん可哀想。その本、購入申請しようか？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「いいの。パパに頼んだら入れてくれるから」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（あぁ、確かお嬢様だって先生言ってたっけ）
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「そんなことより、玲花！」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「この学校に来てから、酷いこと言われて本も無くて、すっごく悲しかったの」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「でも玲花ってかっこよくて、心配してくれて、本当の王子様みたい！」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ね、愛里って呼んで？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「・・・愛里」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「あはっ♡夢が叶っちゃったぁ」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花、大好き。裏切らないでね──」

〇教室
　　──あれから数日
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ねえ、学食いこっ」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（完全に目を付けられたな）
男子生徒2「藤堂ってさぁ」
女子生徒2「一ノ瀬さんって」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（やたら遠巻きにされてるし）
藤堂玲花(とうどう　れいか)（なんとかしないといけないのに）
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「あ、ごめん。行こっか」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（なんで私は──）
　　佳奈：話したいことがあるの。中庭に一人で来て

〇学園内のベンチ
藤堂玲花(とうどう　れいか)（佳奈、我慢の限界来てそうだなぁ）
女子生徒「玲花」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「佳奈。ごめん、話って？」
女子生徒「あのさ、何してるの？」
女子生徒「あんなやつの味方して。最低！」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「ごめん、ちゃんと言おうとしたんだけど、先生が──」
女子生徒「知ってる。あの子一ノ瀬グループの子なんでしょ？」
女子生徒「お金持ちだからって贔屓して、先生も玲花もサイッテー」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（一ノ瀬グループ──そりゃ先生も及び腰になるよね）
藤堂玲花(とうどう　れいか)（てかやば、機嫌取らなきゃ）
女子生徒「もう頼らないから！」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（まずいなぁ）
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「・・・」

〇教室

〇黒
担任「藤堂だからできるだろ？」
女子生徒「さっすが、天才児は違うね〜！」
男子生徒「なぁ〜何とかしてくれよ藤堂ー！」
　　──天才。さすが。すごい。
　　──これやって。できるだろ？ねぇまだ？

〇本棚のある部屋

〇黒
お母さん「・・・！」
お母さん「──！」

〇黒
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花」

〇本棚のある部屋
藤堂玲花(とうどう　れいか)「・・・朝か」

〇学校の廊下
藤堂玲花(とうどう　れいか)（皆が求める私──）
甲高い叫び声「だから！あんたがやったんでしょ！」

〇教室
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「知らないもん！」
女子生徒2「あんたが突き落としたんでしょ?!佳奈が、」
女子生徒2「死んじゃった──」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「え？」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花！ねえ、皆があたしを虐めるの」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花はあたしのこと守ってくれるよね？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「え、あ。──うん」
女子生徒2「はぁ?!」
担任「何騒いでるんだ」
女子生徒2「先生、佳奈が！」
担任「山本か？帰宅途中の事故だそうだな・・・連絡が来ている」
女子生徒2「事故じゃない、あいつのせいなの！」
担任「原田、それは言いがかりだ」
担任「お家の方から苦情も来ている。虐めなんかやめなさい」
女子生徒2「──！」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「守られるだけのお姫様じゃないんだよ？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)（愛里が、やったのか──）
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ね、褒めてよ。家、来て？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「──うん」

〇一戸建て
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ここだよ！転校する時にパパが買ってくれたの」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「今日はね、お手伝いさん全員追い払ったから二人きり」

〇シックな玄関
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ママはね、あたしを産んだ時死んじゃって」

〇一階の廊下
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「パパは優しいけどあんまり会えなくて」

〇部屋の前
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「寂しかった。ずっと王子様を待ってたの」

〇可愛い部屋
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「パパにね、また転校しようって言われてね」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「でもあたし玲花と離れたくない」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「玲花。これからも一緒にいてくれるよね？」

〇可愛い部屋
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「──え？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「愛里ってさ、ワガママだよね」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「自分の願いは絶対叶うと思ってて、何もしなくて、浅はかで」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「あんたもお母さんも担任もクラスの奴らも！」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「──みんな馬鹿ばっか。 合わせるの疲れてさぁ」
一ノ瀬愛里(いちのせ　あいり)「ど、して？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「邪魔者は消せば良いって、教えてくれたのはあんたでしょ？」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「こんなに簡単なことだったんだぁ」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「気づかせてくれてありがと。バイバイ」
藤堂玲花(とうどう　れいか)「今の方が可愛いよ。眠り姫みたいで、さ」