読切(脚本)
〇豪華なリビングダイニング
美沙がとことことやってくる。
美沙「ねえねえ、お母さん」
沙苗「なに?」
美沙「どうして、お父さんと結婚したの?」
突然の娘の言葉に驚きつつも、笑みを浮かべながら答える。
沙苗「そりゃ、もちろん、好きだからよ」
美沙「どういうところが?」
沙苗「うーん。たくさんあるけど・・・なんていうのかな。なんか、放っておけないところがあるのよね」
美沙「・・・ふーん」
沙苗「ふふ。ちょっと、難しかったかもね」
美沙「お母さんは、いつ、お父さんを好きになったの?」
沙苗「中学生のときよ。・・・あ、そうだ。久しぶりだから、見ながら話そっか」
〇書斎
アルバムをペラリとめくる早苗。
美沙「写真だー」
沙苗「お父さんとお母さんが中学生のときのだよ」
美沙「あははは。なんか、お父さんもお母さんも違う―」
沙苗「そうね。お父さんもお母さんも、凄く若いね」
美沙「ねえねえ、お母さん。写真、知らない人もいっぱい写ってるよ」
沙苗「お母さん達が中学生の頃はスマホなんてなかったの。だから、学校行事があったら、写真屋さんが写真を撮りに来てくれたのよ」
美沙「学校行事?」
沙苗「そう。運動会とか、文化祭とか、学校のお祭りみたいなこと」
美沙「へー。いいなあ。私もお祭り行きたい」
沙苗「もう少し大きくなったらね」
沙苗「・・・で、その写真屋さんがみんなの写真を撮ってくれて、気に入った写真があれば、買うって感じだったのよ」
美沙「写真を買うの?」
沙苗「そうよ。今は、スマホがあるから、すぐに写真が撮れるから便利なんだけどね」
沙苗「あの頃は、自分で撮れなかったような写真を買えたから、あの時代は、あの時代でよかったのよ」
美沙「・・・・・・」
沙苗「よく、友達同士で、どの写真を買うかって、盛り上がったわね。・・・懐かしいなぁ」
ペラリとアルバムのページをめくる早苗。
美沙「ねえ、お母さん。お父さん、いっつも横向いてるー」
沙苗「ふふ。そうなの。お父さん、集合写真になると、いつも横向いてるの。変だよね」
美沙「恥ずかしいのかな?」
沙苗「あはは。そうかも。あの頃、お母さんも友達とよく、話してたんだよね。どうして、横向いてるんだろって」
美沙「どうしてなの?」
沙苗「結婚してから、一回、聞いてみたのよ。お父さんに。だけど、別にって言って、教えてくれないのよね」
美沙「ふーん・・・」
ペラペラとアルバムのページをめくる美沙。
美沙「あ、お母さんだ!」
沙苗「え?」
美沙「お母さんいる」
沙苗「そりゃ、いるわよ。お父さんと同じクラスだったんだから」
美沙「違うよ」
沙苗「何が?」
美沙「お父さんがこっち向いてるとき、お母さんもこっちにいるよ」
沙苗「・・・え?」
美沙「ほら、こっちも。お父さんがこっち見てるところに、お母さんがいる」
美沙「お母さんがあっちにいるときは、お父さんもあっち見てる」
沙苗「・・・・・・」
美沙「ね?」
沙苗「・・・もう、言ってくれればいいのに」
遠くからガチャリとドアが開く音がする。
美沙「あ、お父さん、帰ってきた!」
沙苗「よし、じゃあ、一緒に、お帰りなさい言いに行こっか」
美沙「うん!」
バタバタと美沙と沙苗が玄関の方へ歩いて行く。
〇飾りの多い玄関
美沙「お父さん、お帰りなさい!」
沙苗「お帰りなさい、あなた」
終わり。
いいお話でしたー!
ボイスじっくり聞かせていただきました!
とっても懐かしく心温まりました。
昔の学校行事って、教師や写真屋さんの撮った写真は壁に張り出して、それを購入するスタイルでしたよね!そこで好きな人がキレイに映った写真を買う人もいたり…(おっと年齢がバレ…)
そんな思い出を母子で共有するこのストーリー、読んでいて幸せな気分になります。
写真撮影の時、シャイだから横を向いてるのかと思ったらそういうことだったんですね。読んでてほんわかしました。久しぶりにアルバムでもひらいてみようかな?