エピソード1(脚本)
〇立派な洋館(観測室の電気点灯)
迷彩柄のメイド服が私の普段着です。
朝は日が昇る前に目覚め、敬愛するお嬢様の体調をチェックしに、絢爛豪華たるお部屋に入室します。
〇貴族の部屋
優花「・・・・・・失礼いたしますお嬢様」
紅葉「すー、すー・・・・・・」
優花((ああ、なんと愛らしい寝息でしょうか。呼吸は正常、脈拍も普段通り。お嬢様のすべすべのお肌はお美しい・・・・・・))
優花「本日の朝食はフレンチトーストですよ、お嬢様・・・・・・」
お嬢様が起きないよう、耳元で優しく囁きます。
紅葉「うーん、ふれんちとーすとぉ・・・・・・」
優花「はわあ! 寝返りを打つお嬢様可愛すぎますう!」
優花((・・・・・・い、いけません このままではお布団にもぐりこんで添い寝をしたくなってしまいます!))
優花「朝食を作りにいきましょう!」
〇城の会議室
フレンチトーストを配膳していると、お嬢様が騒がしくお部屋から駆け下りてきました。
紅葉「優花! 何故起こさないのです! 遅刻ですわ!」
優花「いえ、起こしに行きましたが、紅葉お嬢様が気持ちよさそうにお眠りになっているので従者としては心苦しく」
私はキリッとお嬢様に告げます。お嬢様はキッと強い眼光で私を見上げます。
紅葉「優花、あなたが優しいのは知っています。ですが私は九条院家の当主になる人間です。甘やかしてはなりません!」
お嬢様は、今は亡きご両親から九条院財閥を託されております。遊びたい盛りでしょうに、己を律するその姿勢に感服です。
優花「はっ、申し訳ございません」
私は恭しく頭を下げます。
毎朝お嬢様のこの叱責を聞く為に、敢えてお嬢様を起こさないのは秘密です。
紅葉「わかればいいのですわ」
紅葉「さあ優花、フレンチトーストを食べている時間はありません。 私の愛車のカギはどこですの?」
優花「こちらにございますお嬢様」
私は懐で温めておいた自転車のカギをお嬢様に差し出します。
紅葉「ありがとう優花。それじゃあ、行ってきますわ!」
カギを受け取ったお嬢様は玄関へと駆け出していきました。
優花「お嬢様、お車での送り迎えも可能ですのに私がご入学祝いでプレゼントした自転車で登校してくれるなんて・・・・・・」
優花「素敵です!」
ですが、必死に自転車をこぐお嬢様を思い浮かべると、従者としては心配です。
優花「スカートが翻らないでしょうか? 汗ばむ肌、透けるブラウス・・・・・・」
優花「ああ! 素敵で背徳的なお嬢様が目に浮かんで!」
こうしてはいられません。迷彩メイド服の本領を発揮する時が来たようです。
〇刑務所
何を隠そう、私は元米軍特殊部隊出身。
日常に溶け込みお嬢様を見守るなどたやすいこと。
〇城の会議室
下っ端メイド「メイド長? 準備運動までしてどこかへお出かけですか?」
下っ端メイドが不審な顔で見上げてきます。
愚問です。
優花「邪な輩にお嬢様のあられもない姿をさらすなど言語道断です! わかりますよね!?」
下っ端メイド「・・・・・・はぁ。またそれですか」
下っ端メイド「早く帰ってきてくださいよ? まだ、仕事があるんですから」
下っ端メイドはため息を吐きながら仕事に戻っていきました。
一応、お嬢様を見守ることも仕事ですよね? ね?
建前はさておき
優花「お嬢様、今行きます!」
私は風を置き去りにする速度で駆け出しました。
〇住宅地の坂道
すぐに、学校への上り坂を自転車で必死にこぐお嬢様の背中が見えてきます。
紅葉「やはり車での送り迎えを頼むべきでしたわ」
紅葉「ですが、私は九条院家の次期当主。こんな坂ごときに負けませんわ!」
お嬢様は立ちこぎを始めました。
その速度は亀以下ですが、お覚悟を決めた形相と汗で透けるブラウスが最高です!
優花「うう、もう遅刻確定なのに、頑張るお嬢様のお姿が見れて私は幸せ者です」
いつもの植え込みに身を潜め、お嬢様のひらひらするスカートを注視していると。
男子生徒「君も遅刻? 俺もなんだ。よかったら一緒に学校さぼらない? ゲーセンとかさ」
通りがかりの男子生徒がお嬢様に声を掛けました。
優花((・・・・・・お嬢様をナンパとはいい度胸ですね。あまつさえゲーセンなどと))
私は迷彩メイド服の裾をまくり上げ、スリットから消音拳銃を取り出します
優花「お嬢様を不良にしないため、本場米軍仕込みの射撃術を披露する時がきたようです!」
植え込みから身を乗り出そうとした、その時でした。
紅葉「恥を知りなさい! 私たちは高校生なのです。学ぶべき時に学ばずして立派な大人になれますか!」
お嬢様の一喝が空気と通行人と男子生徒の時間を止めます。
優花(流石お嬢様! 頭がお堅いところも愛しております!)
男子生徒「す、すんません!」
〇学校の校舎
登校終了のチャイムが鳴ります。
教師「しめるぞー」
紅葉「ま、待ってください!」
お嬢様は最後まで必死に自転車をこぎましたが、門は閉ざされてしまいました。
教師「九条院、また遅刻か?」
紅葉「・・・・・・はい、申し訳ありませんですわ」
教師に叱られ、うなだれるお嬢様。
私は消音拳銃で教師の頭を狙撃したい欲求にかられますが、耐えました。
優花(ふっ。今日も命拾いしましたね教師)
〇住宅地の坂道
私は植え込みから抜け出して、お屋敷に引き返すことにしました。
目を閉じると、立ち漕ぎの時ちらりとお見えになったお嬢様のおパンツが浮かびます。
優花「ふふ、今日はクマさんを選んだのですね・・・・・・」
優花「やっぱり、自転車をプレゼントして正解でした!」
〇立派な洋館
さあ、今日も良いお仕事ができそうです。
迷彩柄のヨコシマメイド
お巡りさんここです!
メイドさんの経歴がアルティメットすぎて笑いました。たった24時間で2名ほど消し去りそうになっていたのが怖すぎます。お嬢様がメイドさんの目線からでもそうでなくても魅力的な女の子で良いです。
楽しいストーリーでした。メイドさんは大変ですね。二人の会話のテンポがよくて一気に読ませて頂きました。続編があれば読んでみたい気がします。