凡人さんと神様弟

雪華火鈴

代償と願いの結末〜海を見た者〜(脚本)

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雪華火鈴

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〇古いアパート
チャラ男「・・・」
チャラ男「ん?・・・ここは・・・・・・」
  落っこちたと思って・・・気づいたら、家の前にいた。
チャラ男「夢・・・・・じゃ、ない・・・よな?」
  ・・・あまりにも現実味が無い状況に、つい夢であったのではないかと疑った。
  だが、ドスが効いた声がこれは現実だと突きつける
ガラの悪い男「おい!テメェ・・・金を払わないで逃げる気だったな?」
チャラ男「・・・んな訳ねぇだろ。母さんを置いて逃げられるか・・・・・!」
ガラの悪い男「あ゙あ゙?! お前・・・自分の立場ってのを弁えろよ?」
ガラの悪い男「こっちはなぁ? 金を貸してやって、「払えない」って言うような延滞者にも、時間をやったっつーのになぁ?」
ガラの悪い男「んな訳ねぇ・・・だァ?」
ガラの悪い男「なら早く金返せよ!500万、キッチリ揃えてなァ・・・!!」
チャラ男「そ・・・それは・・・・・!」
チャラ男「・・・ッ!」
チャラ男「・・・さい」
ガラの悪い男「あ?なんつった?今」
チャラ男「もう少し・・・もう少し待って下さい」
ガラの悪い男「もう待てねぇよ、一体どんだけ待ったと思ってんだ?」
チャラ男「あと少し・・・きっともうすぐ、金が用意でき──」
ガラの悪い男「待てねぇ、つってんだろ!!」
ガラの悪い男「お前、いい加減に─」
信者「お取り込み中のところ、失礼します」
ガラの悪い男「は?おい、ちょっと待てよ!こっちは─」
信者「貴方が、佐藤健志(さとう たけし)様ですね?」
チャラ男「は、はぁ?俺がたけしですけど・・・貴方は一体・・・・・・?」
ガラの悪い男「無視すんじゃねぇよ!」
信者「私はただ、健志様に『言われていた通り』に、500万をご用意してお届けに来ただけですので・・・」
チャラ男「500万・・・?!」
  もしかして・・・あれは夢じゃなかったのか?それじゃあ・・・!!
チャラ男「なぁ、500万でいいんだよな?」
ガラの悪い男「・・・ああ。ウチは、信用第一だからな・・・だが─それ、本物か?」
信者「・・・我らが神を侮辱するおつもりですか?」
ガラの悪い男「え?いや・・・そういう事じゃ──」
信者「我らが神の契約者と、その契約を疑うというのなら、『我ら』が黙っていませんよ? アナタ方も消されたくはないでしょう?」
ガラの悪い男「分かってるよ・・・この辺で働いている以上、そんな当たり前の事を破ろうとはしないよ・・・」
信者「それでいいんですよ。 ・・・さぁ、こちらを持って、速やかにお引き取り下さい」
ガラの悪い男「ああ・・・」
  男は、渡されたアタッシュケースを持ってそのまま去っていった
チャラ男「ありがとう! これで、もう・・・アイツらに脅されなくてすむ・・・・・!!」
信者「いえ・・・私は神託を受け、自らの務めをまっとうしただけですので・・・」
  「それでは・・・」と言い残して、信者は去っていった。

〇古いアパートの部屋
  先程の借金取りとのやり取りを、1部ごまかしながら母さんに話す。すると母さんは驚きすぎて、開いた口が塞がらないようだった。
  でも同時に「それは、お友達にも悪いし・・・それにそんなに簡単な事なのかしら?」・・・と言っていた。
  ・・・何でだろう?何を心配してるんだ?
  いい事じゃないか、『たかが』寿命の半分で借金を返せたのだから。

〇街中の道路
  ──数ヶ月後
チャラ男「母さん、俺・・・コンビニで働く事になったよ」
たけし母「あら・・・その格好でも良かったの?」
チャラ男「うん!」
チャラ男「ま、まぁ・・・・・流石に髪は黒く染めようかな〜・・・って、思ってるけどね」
  あの日から、あの借金取りの顔は見なくなった
  ・・・まぁ借金を返したのだから当然だが・・・・・・
  あの契約をしたおかげで、俺たちは幸せに暮らせるようになった・・・と言っても過言では無いと思う
  正直、契約した時はやめた方がいいかもしれないと思っていたけど・・・
  ・・・今は、心の底からあの不思議な神様に感謝している
チャラ男「あれ?そういえば・・・・・・」
たけし母「健志? どうかしたの?」
チャラ男「・・・ああ、いや・・・・・何でもない」

〇海辺
アイリス・インフィニティクラウン「・・・・・忠告しておく、辞めた方がいい。 きっと・・・後悔する結果になる。 それでも・・・私と契約するのかい?」
アイリス・インフィニティクラウン「さぁ? ・・・でも、僕がまだ人間だった時よりは全然あるよ」

〇街中の道路
  不意に、あの言葉が少し・・・気になっただけだ
  だって──
チャラ男(俺は今、後悔なんてしてないし・・・それに、何で後悔なんてするんだろう?)
チャラ男(自分よりも長い・・・って、言ってたのに・・・なんでだ?)
チャラ男(・・・まぁ、どうでもいいか!)
  ・・・健志は、考える事を諦めた
  『さぁ?・・・でも、僕がまだ人間だった時よりは全然あるよ』
  この言葉の意味を少しでも、考えていたのなら・・・或いは──
  だが、どれだけ考えようともそれは、仮定の話に過ぎない
  気まぐれで、無慈悲な神の最後の情けを、理解しようともしなかったのだ・・・
  彼は選択をし、契約は結ばれ・・・
  そして、願いは叶えられたのだ
  故に──
  ──世界に、警告の音が響く

〇街中の道路
  ──ドンッ
  ──グシャッ!
  『何か』が地面に落ちた時のような、鈍い音がする・・・
通行人「キャアアアアアアアアッ!!」
  耳をつんざく悲鳴が聴こえる
通行人2「ヒッ、ヒィィィィ!」
通行人3「ひ、人が撥ねられたぞ!だ、誰か、誰か救急車を呼べー!!」
  救急車・・・?
  救急車を呼べば、まだ助かる?
  ──否
通行人5「む、無理だわ・・・も、もう・・・・・・もう・・・!!」
  ──地面を真っ赤に染める、おびただしい数の『ソレ』は・・・彼女の息子の周りで広がっている
たけし母「たけ・・・し?」
  彼女には、何が起こったのか・・・よく分からなかったようだ
たけし母「た、けし? 健志・・・健志!? どうしたの?!一体何が・・・」
  それは、あまりにも一瞬の事で・・・彼女には、分からなかった・・・・・いや、『分かりたくなかった』
  ──彼女の足元で、広がり続ける赤い絨毯が・・・一体、何なのかを・・・・・・
  大きくなる、騒ぎとひとだかりからすこし離れた位置に『その存在』は、立っていた
???「あれ?今日、オフだったよな?」
  そう言うと、彼はいつの間にか持っていた分厚い本で佐藤健志の名前を探す
???「うわ〜あるじゃん名前・・・担当おれなのに・・・・・休日がぁ〜」
???「はぁ・・・仕方ない」
???「早く済ませて休日を楽しもう」
???「そして──」
  その存在は、『死神』
  死者の魂を管理する者たちである
???「椿様に、あの御方の文句言ってやる!」
  ブラックな職場で働く、苦労神達の一柱である

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