僕らは今日も黄昏に笑う

綾瀬海斗

読切(脚本)

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綾瀬海斗

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〇寂れた村
  昔昔、ある所に・・・。
  
  人間の子供が住んでいました。
  その子の名前は◻️◻️◻️。
  親兄弟もなく、毎日生きるので精一杯な生活をしていました。

〇山道
  一度でいいから、世界を見てみたい。
  子供は、ただそれだけを叶えるために、山の中腹にある小さな神社に向かいました。
  そこから世界が見えるかは分からなかったけれど、年に一度、村の人達がそこに向かうことは知っていました。
  なので、そこに行けばきっと世界を見れるはず。
  そう思った子供でしたが、その足取りは次第に重くなっていきます。
  1日ロクな食事もとれていない幼い身体にとって、山を登るというのはとても過酷なことだったのです。

〇神社の石段
  あと少しで着く。
  手を伸ばせば届く距離。
  神社を目の前にして、子供はとうとう倒れてしまいました。
  起き上がろうにも、もう身体には力が入らない。
「もう、死ぬのかな・・・」
  ぼんやりした意識の中で、ゆっくり目を閉じようとする子供の耳は何かを捉えた。
  チリーーン チリーーン
  小川のせせらぎのように澄んだ、優しい音。
  カラコロと石畳に響く、下駄の音。

〇古びた神社
  そして・・・・・・。
???「生きたいか?」
  男とも女とも分からぬ、不思議な雰囲気を漂わせる言の葉。
  薄れゆく意識の中で、子供は何かを呟く。
名も無き子供「」
  そして、そのまま意識を手放してしまったという・・・。

〇寂れた村
  その後、子供がどうなったのかは誰にも分からないのでした。

コメント

  • 世界を見たいと願う事=神の存在に近づくこと、と考えれば、この子供が神社を目指したのはあながち間違いではありませんでしたね。数え切れないほどの人間が神のいる場所を目指して道半ばで命を失ってきた人類の歴史を小さな物語に凝縮させたような不思議な味わいがありました。

  • 丁寧に紡がれた言葉での物語という感じで、読んでいてどんどんと入ってきました。その後を想像させるラストの余韻も心地いいですね!

  • 短い作品の中に色々と込められたものを感じました。
    作品は言葉数ではなくどう読者に考えさせるかが一番だと私は思います!
    この男の子はなんて言葉を発したんだろう…。

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