『秘密です』

あずどん

読切(脚本)

『秘密です』

あずどん

今すぐ読む

『秘密です』
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古い倉庫の中
先輩「秘密です」
  薄暗い工場の中で男の静かな声が響いた
新人「・・・つれないな、少しくらい教えてくれたっていいじゃないっすか」
新人「俺は新入りっすよ?」
新人「この工場のことはなーんにも知らないんですー」
新人「何を作って、どこに運ぶかくらい教えてくれたっていいじゃん?」
  新人らしき男がそう愚痴をこぼすと、男はため息をついた
先輩「新人くん、一応僕も先輩ですよ?」
新人「はいはい、山瀬先輩」
先輩「はー。なんでこんな子の指導員になってしまったんですかね」
新人「そんなにケチつけなくても良いじゃないですか?ってか先輩マジでこの工場で作ってるもんとか知らないんすか?」
先輩「秘密です」
  山瀬はそう新人を突き放すと、作業を再開し始めた
新人「でも不思議じゃないんすか?こんななんも入ってなさそうな軽い箱を点検する作業なんて。中身気になりません?」
先輩「さあ、どうでしょうね」
  のらりくらりと交わす山瀬に、ムキになったのか新人社員は大声を張り上げる
新人「あーあ、つまんな!少しくらい教えてくれたって良いじゃないっすか!」
「おー、おー、新人暴れてるねぇ。どうした?」
  工場の奥の方からガタイの良い男と、その恋人らしき女が現れた
新人「いやー、山瀬先輩がこの工場のことなんも教えてくれないんすよ」
先輩「まあ、そりゃあ、だってなぁ?」
先輩「私たち、何も知らないもの」
  2人は不自然に目を彷徨わせながら、そう答えた。
新人「本当に、何も知らないんすか?それともオレが新入りだからハブられてるとか?」
  酷く悲しそうな顔をする新人にガタイの良い男は狼狽える。
先輩「それは・・・」
先輩「ねえ、少しなら教えてあげても良いんじゃない?」
新人「やっぱり、何か知ってるんすね?」
  ガタイの良い男はこほんっと咳払いをする。
先輩「少しだけ、だからな?お前も秘密にしろよ?」
新人「はい」
先輩「ここは、どこかの御曹司が立てた工場でよ。目に見えない何かを作っては、金持ち売ってるらしいぜ」
先輩「つまりこの軽い箱には貴重なお宝が入ってるってわけよ」
先輩「私も、最初の説明でそう聞いたわ」
新人「へー、そうなんすね」
新人「・・・山瀬さんもそういう話聞いたんじゃないっすか?」
  すると、山瀬は全員に向かってにこりと笑顔を見せてこう答えた
先輩「さあ、どうでしょう?秘密です」

〇豪華な社長室
  大きなビルへと足を運ぶ。
ボス「さて、今日はどうだったかな?」
新人「男が1人出荷できそうです。名前は、山瀬。 他はダメですから、解雇しましょう」
ボス「そうか、そうかよかった。では、明日にでも夫人に話をつけておこう。彼女も最近詐欺にあったらしくてなぁ」
新人「・・・お金持ち大変ですね」
ボス「まあ、その為に私たちはあの工場を作ったんだ」
ボス「何も入っていない空箱で、こうも簡単に秘密を守れる人間を発掘出来るとは思わなかったよ」
新人「給料も良い。過酷な労働でもない。ただし、この工場についてのすべてを秘密にしなければならない」
新人「ただこれだけなのに、なんで守れないんでしょう。僕はそちらのほうが不思議ですよ」
新人「でも、秘密を守る人間を生み出す工場なんて面白いものですね」

コメント

  • 切り口が何ともいえずいいですね。
    秘密の工場は秘密を守れる人を探す場所だったとは、オチでびっくりしました。
    新人くんの演技がすごいです。笑

  • 発想がとても面白かったです!
    世にも奇妙な物語…ですね笑
    秘密って秘密にされればされるほど気になりますよね。
    自分は…言わない自信がありませんが…笑

  • 秘密といわれるから知りたくなるんです、言われなければ気にもならないのに不思議ですよね、最後まで秘密を守るのは至難の業です。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ