秘密のプレゼント

でらお

秘密のプレゼント(脚本)

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〇広い玄関(絵画無し)
曽我部 豊「ただいま」
  玄関の扉を開け、学校から帰ってきた僕はそう呟いた。
  すると台所の方から、僕の声を聞きつけた女執事がやってきた。
女執事「お帰りなさい、お坊ちゃん」
  この女執事は僕の家でかれこれ10年以上働く、長い付き合いの執事だ。
  仕事は丁寧かつ迅速であり、執事としては非常に優秀である。
  今も僕がだらしなく脱いだ靴を、すぐに執事は綺麗に並べている。
女執事「・・・くっさ」
曽我部 豊「今、くっさって言った!?」
女執事「おええええ」
曽我部 豊「吐くな吐くな」
女執事「・・・何がどうなったらこんな匂いが生み出されるわけ?」
曽我部 豊「真顔でそういうこと言われると普通に傷つくからやめて」
女執事「・・・・・・お仕事やめようかな」
曽我部 豊「10年以上続けてきた仕事をやめようって思うほど臭かったのか!?」
女執事「なんて、こんな給料がいい職場は手放しませんよ」
曽我部 豊「結局金かよ」
  この女執事、仕事は出来ても、社交辞令はうまく使いこなせないのである。
  それは今に始まった話ではないし、今更解雇なんてことにはならないだろう。
曽我部 豊「なんかいい匂いがするな」
  玄関を開けた瞬間から、台所からいい匂いがここまでただよってきていた。
  今日の夜ご飯はご馳走なのだろうか。
女執事「お坊ちゃんの靴の匂いの話ですか?」
曽我部 豊「違うわ!キッチンからの匂いの話だ!」
女執事「しくしく」
曽我部 豊「僕の足が腐っていてすぐに切断しなきゃいけないみたいな雰囲気を勝手に作るな!」
  そんな茶番はさておき。
  家に執事がいるというかなり珍しい状況であるので、そろそろ僕のことを説明しなければならないだろう。
  僕の名前は曽我部 豊。
  僕のことを語る上で、父親の説明は欠かせない。
  僕の父親は日本で大成功を収めた起業家だ。なんの事業で成功したのか、それは詳しくは知らないが、とにかく大成功したらしい。
  その結果、父は莫大な資産を手に入れた。
  実際、僕が今暮らしているこの家は、敷地面積350㎡オーバーの7SSLDKの豪邸だ。
  ちなみにトイレは家に4つある。
  今は女執事との二人暮らしであるのだが、それは二人で住むにはあまりにも広すぎる家だった。
女執事「なんで今日は学校に行ったんですか?」
曽我部 豊「学生が学校に行くにはなにか特別な理由が必要なのか?」
女執事「じゃあ明日は学校に行くんですか」
曽我部 豊「・・・・・・あ、あさ起きられたらな」
女執事「またずる休みするんですか。出席日数足りなくなりますよ」
曽我部 豊「別に卒業できなくてもいい」
女執事「まあたしかに、お坊ちゃんが一生働かずに暮らしていくためのお金は、この家には十分にありますもんね」
曽我部 豊「そうだ。僕はこれから一生楽しく遊んで暮らしていくんだ!」
女執事「・・・・・うわぁ」
曽我部 豊「な、なんだよ」
女執事「成功者の息子って本当にダメ息子に育つことが多いんだなぁって」
曽我部 豊「う、うるさい!」

〇田舎の一人部屋
  女執事との会話をきりあげ、僕は二階への自室へと向かった。
  自室に鞄だけ置いて、そのまま次はシアタールームへと向かう。

〇映画館の座席
  僕はシアタールームでアニメや映画を見るのが日課である。
曽我部 豊「前から気になっていた映画を見よう!」
女執事「そこにいつか勉強っていう選択肢が入るといいですね」
曽我部 豊「うわっ」
  僕が映画を見ようと意気込んでいると、部屋に女執事が現れた。
  その両手には八個入りのたこ焼きが二つ用意されている。
曽我部 豊「急に話しかけるなよ、びっくりするだろ」
女執事「それがなにか問題なんですか?」
曽我部 豊「その発言は執事失格だ」
女執事「人間失格の人に言われたくないです」
曽我部 豊「・・・僕の方がよっぽど重症じゃないか」
  やっと自覚したんですね、なんて女執事がぼやきながらシアタールームにあるソファーに座り、たこ焼きをぱくぱくと食べ始めた。
曽我部 豊「仕事中にたこ焼きを食べるやつなんているかよ」
女執事「え?これも仕事ですよ?」
曽我部 豊「僕が友達がいなくて可哀想だから、仕事で友達やってあげているみたいなこと言うな」
女執事「友達がいないのは事実ですよね?」
曽我部 豊「たまたまな」
女執事「お坊ちゃん知っていますか?友達ってお金で買うものなんですよ?」
曽我部 豊「友達はいないけどそれくらいは嘘だって分かるわ!」
  話をしながら映画を見る準備を完了させ、僕もソファーに座る。
  ふと女執事が持っているたこ焼きに手を伸ばすと、手を叩かれた。
曽我部 豊「そのたこ焼き、僕にもくれるんじゃないの!?」
女執事「あ、これは人間の食べ物なので」
曽我部 豊「きっついジョークだなあっ!」
女執事「たこ焼きが欲しいなら、なにか言わなきゃいけないことがあるんじゃないですか」
曽我部 豊「たこ焼きをください?」
女執事「なんでおでこが地面についていないんですか?」
曽我部 豊「たこ焼きに土下座するまでの価値ははない!」
  かといって、小腹が空いていたのは紛れもない事実だった。
  ここは仕方がない。
  そう、仕方がないのだ。

〇田舎の一人部屋
  僕はシアタールームから一旦出て、自室へと戻る。
  そして学校の帰り道で買ったあるものを鞄から取り出し、再びシアタールームへと戻った。

〇映画館の座席
曽我部 豊「はい」
  僕は持ってきたそれを女執事へ差し出す。
女執事「これはなんですか?」
曽我部 豊「ほら、今日誕生日だろ」
女執事「覚えてくれていたんですね」
  毎日顔合わせるやつとは少しは上手くやっておいた方がいいだろ、と僕は照れながらに言う。
  これくらいの照れ隠しは許して欲しい。
  じゃないと恥ずかしくて死んじゃう。
  女執事は僕からプレゼントを受け取ると、微笑みながら僕に向かってこう言い放った。
女執事「あれもこれもお父さんのお金ですね」
曽我部 豊「今すぐにそのプレゼントを返せ!今すぐにだっ!」

コメント

  • どっちが雇い主でどっちが執事なのかわかんなくなるようなこの絶妙な力関係がたまりませんね。執事さんの態度はきっと愛のムチなのでしょう。

  • 中々キツい性格ですね…。
    けど、これはこれでアリな人も多いのではないでしょうか。
    え?私ですか?ご褒美だと思います!毎日謝意を込めて…ってこのくらいにしておきます笑

  • 主人と執事の主従関係以外の関係性が2人の間に出来上がっていて面白いですね。こんなコミュニケーションも有りだと思いました。

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