GOSSIP BOX(ゴシップボックス)- アナザーエンディング -

根本聡一郎

エピソード9(脚本)

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根本聡一郎

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〇東京全景
佐藤キャスター「行方不明となっていたドルチェ&ドラゴンズ社長の室井秀明氏についての速報です」
佐藤キャスター「室井氏は、男女数名と共に監禁され、その様子がネット上で中継されていることが分かりました」
佐藤キャスター「警察では、前例のない劇場型犯罪として、捜査を進めています」

〇ゴシップボックス_ゴシップボックス・内(ライティング白)
室井秀明「おい、待てよ! おいっ!」
  室井はディスプレイにつかみかかるようにして吠える。
  しかし、既に画面からフードの人物は消え、闇だけが広がっている。
薬師寺透「・・・・・・」
田中あい「そんな・・・」
  室井は赤いドアの方に向かうと、ドアノブを乱暴に叩いて声を張り上げた。
室井秀明「おい、誰か聞こえるか! 閉じ込められてるんだ!」
室井秀明「誰でもいい、聞こえたら返事をしてくれ!」
室井秀明「このままじゃ、俺も会社もおしまいなんだよっ! くそ・・・」
「・・・・・・」
  失望で誰もが動かない中、ディスプレイに再び映像が光った。
青木谷さち「ねえ、また何か映ってる! もしかしたら・・・」
薬師寺透「・・・これ、この部屋の中継ですよ。 まだ続けてるんだ」
青木谷さち「なんでまだ・・・」
田中あい「見てください、投稿者からのコメントが増えてます」
田中あい「『ニセモノに飽きたみなさんへ。これが本物のリアリティショーです』」
田中あい「『続きを見たい方は、ぜひ応援コメントとサポートをお願いします』・・・って」
青木谷さち「応援って・・・人が困ってるの見て、何が楽しいの?」
薬師寺透「でも・・・サポートしてる人、もういるみたいですよ」
薬師寺透「ここの数字、どんどん増えてるから」
青木谷さち「悪趣味ね・・・最ッ低」
  さちの悪態に反応して、沢山のコメントが流れていく。
  『最低なのは六股してるお前だろw』
室井秀明「こいつら、こっちが言ったことにすぐ反応してる」
室井秀明「この部屋の物音も、全部生配信されてるってわけか・・・」
田中あい「私たち、見世物にされてるんだ・・・」
田中あい「プライベートの秘密も、困ってる様子も、それでこれから、弱ってく様子も、みんな見世物にされるんだ・・・」
室井秀明「・・・・・・」
「・・・・・・」
薬師寺透「待ってください・・・僕らの声は、全部ネットで生配信されてるんですよね?」
青木谷さち「そのようね」
薬師寺透「それなら、カメラに向かって助けを呼び続けたら・・・誰か一人くらい、助けに来てくれるんじゃないですか?」
青木谷さち「こんな性格悪い中継観てる人たちに、そんなお人好しがいる訳ないでしょ」
薬師寺透「あ、またそんなこと言うと、コメント欄で叩かれますよ・・・?」
青木谷さち「ここから出られないなら、いくら叩かれようがもう関係ないでしょ」
薬師寺透「そ、そんな・・・諦めないで頑張りましょうよ!」
室井秀明「薬師寺、お前は根本的に勘違いしてる」
薬師寺透「え?」
室井秀明「もし、この配信を観てる誰かが俺たちを助けたいと思ってくれたとして、そいつはここに来れない」
薬師寺透「どうして・・・」
田中あい「私も、中継を観てる皆さんも、ここがどこだかわからないからです」
薬師寺透「あっ! そういえば・・・」
田中あい「だからくーちゃんさん、ごめんなさい」
田中あい「心配してもらえるのは嬉しいんですけど・・・私も、自分がどこにいるかわからないんです、ほんとうにごめんなさい」
薬師寺透「え、くーちゃんって・・・」
室井秀明「さっきからコメントしてるやつだ」
室井秀明「『あいちゃんどこにいるの?』って投稿、荒らしみたいにずっとしてる」
青木谷さち「さすが地下アイドル、もう配信先の『お客さん』を意識しはじめたのね」
室井秀明「いま、外の世界とつながってる唯一の道がこの配信だからな・・・意識するのは間違っちゃいないが、いかんせん情報がなさすぎる」
薬師寺透「あれ、でもくーちゃんって名前、どこかで・・・」
  くーちゃん『あいちゃんはいつどこでさらわれたの?』
田中あい「あ、くーちゃんさんありがとうございます」
田中あい「私が攫われた時間は・・・学校帰りだったので、五時半過ぎだと思います」
田中あい「世田谷の、ワイズマン学園のそばですね・・・」
田中あい「でも、このままじゃ、明日の学校にもいけなくなっちゃいそう・・・くーちゃん助けてぇ」
室井秀明「この状況でコメント返しにファンサって、すげえ根性だな」
青木谷さち「地下アイドルってたくましいのね・・・」
  くーちゃん『さちさんはどこで何時に攫われたの?』
薬師寺透「あ、今度は、さちさんが攫われた場所を知りたいって」
青木谷さち「私?」
室井秀明「ファンが増えたぞ、良かったな」
青木谷さち「冗談言ってる場合じゃ・・・」
田中あい「でも、きっと答えておいたほうがいいですよ。犯人の手掛かりになるかもしれませんし」
青木谷さち「そういうことなら・・・私が攫われたのは・・・熱海。六時半時頃だったかな」
室井秀明「熱海?」
薬師寺透「え、なんでそんなところいたんですか?」
青木谷さち「今週末は旦那が地方に出張だったから・・・土曜日の伊沢君と温泉に来てたのよ」
青木谷さち「で、いっしょにいるとこ見られたらまずいから、別々に帰ることになってたんだけど・・・一人になった途端に」
田中あい「黒マスクの男に話しかけられた・・・」
薬師寺透「なんか、いろんな意味で自粛してなかったんですね」
青木谷さち「だって、普段なら予約でいっぱいなところも今なら簡単に取れちゃうんだよ? チャンスだと思うじゃない」
田中あい「でも、結局ピンチになっちゃったわけですね・・・」
  くーちゃん『室井さんは どこでいつさらわれたの?』
薬師寺透「あ、次は室井さんが同じ質問されてますよ」
室井秀明「はぁ? なんで俺が・・・」
青木谷さち「ファンなんじゃないの、よかったわね」
室井秀明「野郎のファンなんか増えたって・・・」
田中あい「どこで攫われたか、聞かれてますけど」
室井秀明「俺は・・・名古屋だ。 奴らに攫われたのは・・・三時頃だな」
青木谷さち「名古屋ぁ?」
薬師寺透「どうしてまた、そんなところに」
室井秀明「広告の打ち合わせで、スポンサーのところ行ってたんだよ」
室井秀明「このご時世だからリモートでとは提案したが、向こうのお偉いさんに『ネットじゃニュアンスが伝わらない』とかなんとか言われてな」
室井秀明「・・・あ、俺はリモートにしたかったんだぞ! ちゃんと言ったからな!」
薬師寺透「ちゃんと自粛してたの、僕だけじゃないですか・・・」
薬師寺透「あ、ちなみに僕が攫われたのは川崎市の二子新地で、六時頃だったと思います」
薬師寺透「僕以外もみんな、車で連れ去られたみたいです」
青木谷さち「なんであなた、聞かれる前にこたえるの」
薬師寺透「いや、だって、僕だけ聞かれなかったらさみしいなと思って・・・」
室井秀明「しかし、このくーちゃんってのは、いったい何が目的で俺らのことなんか・・・」
田中あい「あぁぁっ!」
青木谷さち「どうしたの、急に大声出して・・・」
田中あい「くーちゃんって、私たちの・・・『あモラル少女隊』のおっかけしてた方のハンドルネームと一緒です!」
薬師寺透「あっ! あの『特定班』ってあだ名で呼ばれてた人?」
田中あい「はい・・・たぶん私が配信に出てるってどこかで知って、観に来やが・・・」
田中あい「・・・ってくれたんですね」
室井秀明「おい、大丈夫か、一瞬本音出てたぞ」
青木谷さち「でも・・・なんで私たちのことまで聞いてくるの?」
田中あい「それはちょっと、わからないですけど・・・」
薬師寺透「あっ、くーちゃんがまたコメントしてますよ」

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