放課後は密室でできている

アシッドジャム

読切 放課後という名の密室にて(脚本)

放課後は密室でできている

アシッドジャム

今すぐ読む

放課後は密室でできている
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
神楽坂 優子(誰もいない放課後の教室ってなんか好きだな)
  ノートに詩を書きはじめた
  放課後は密室でできている
  教室には全ての感情が滞留している
  わたしの感情はいつだって怪物になるってぼくが言う
  そんな怪物を飼い慣らそうなんて思っていない
  紙に書いたピアノが燃えている
  永遠に音楽にならない音をきいている
  怪物となった感情が教室の中で音もなく踊る
  どうして感情は怪物になってしまったのか?とわたしは言う
  それは逆だ。怪物とはそもそも感情のことなんだとぼくが言う
  放課後は分裂している
  分裂した放課後は密室を無数に作り続ける
  そして・・・
  教室の扉が開く音を聞いてノートを閉じた
西野 ハル「あれ?神楽坂さんまだ残ってたんだ?」
神楽坂 優子「え?あ、うん」
神楽坂 優子(私の名前知ってるんだ)
神楽坂 優子(同じクラスの人だよね? 名前は・・・)
西野 ハル「西野だよ」
神楽坂 優子「え?」
神楽坂 優子(今わたし声に出してた?)
西野 ハル「誰だっけって顔してたでしょ?」
神楽坂 優子「め、面目無い」
西野 ハル「面目無いって最近聞かないわ! 神楽坂さんって面白いね!」
神楽坂 優子(わ、わたしが面白い? そんなの初めて言われた。 いや、これは喜んでいいやつなのか?)
西野 ハル「もう1学期も終わるんだからクラスメイトの名前くらい覚えてよ〜泣きそう・・・」
神楽坂 優子「えっと、本当にわたし人の名前とか覚えるの苦手でえーとあのその」
西野 ハル「ごめんごめん! 冗談だよ〜」
神楽坂 優子「かたじけない」
西野 ハル「かたじけないって! 武士みたい!」
神楽坂 優子「うー、変ですね」
西野 ハル「使い方もちょっと違うし! 神楽坂さんって話すの苦手?」
神楽坂 優子「そうですね。苦手かもです」
西野 ハル「そのノート」
西野 ハル「何か書いてたの?」
神楽坂 優子「え?いや、別に大したものじゃ・・・」
西野 ハル(不味かったかな?)
西野 ハル「実は神楽坂さんがよく放課後一人で教室にいるのを見てたんだよね」
神楽坂 優子「え?」
西野 ハル「俺、委員会でよく残ってたんだけど、この教室の向かい側で集まってるからさ」
西野 ハル「いつも一生懸命何か書いてるなって思ってて」
西野 ハル「携帯鳴ってるよ? っていうかガラケー!?」
神楽坂 優子「あ!うん・・・」
神楽坂 優子(知らない番号)
西野 ハル「出ないの?」
  少し躊躇しながら受話ボタンを押して
神楽坂 優子「もしもし?」
「もしもし。優子?」
神楽坂 優子「は、はい。どちら様ですか?」
神楽坂 優子(この声って・・・)
「ハル。西野ハル」
神楽坂 優子「え?西野くん?」
西野 ハル「ん?」
「そこに今俺がいるよね?」
神楽坂 優子「は、はい。これって一体」
「放課後は密室でできている」
神楽坂 優子「何でそれを」
「とにかくそれは──」
  ノイズが鳴って携帯が途切れた
西野 ハル「どうかした?大丈夫?」
神楽坂 優子「ああ、ええ」
西野 ハル「何の電話だったの?」
神楽坂 優子「電話の相手が・・・」
西野 ハル「相手が?」
神楽坂 優子「ちょっとかけなおしてみます」
西野 ハル「お?電話だ」
西野 ハル「知らない番号だ」
西野 ハル「もしもし」
神楽坂 優子「もしもし。 神楽坂です」
西野 ハル「ええ!あれ?どういうこと?」
  二人とも電話を切った
西野 ハル「神楽坂さん俺の番号知ってたの?」
神楽坂 優子「違うんです。さっきこの番号からかかってきて」
西野 ハル「え?どういうこと?全然わかんないんだけど・・・」
神楽坂 優子「わたしもわからない。さっきの電話の相手はわたしが神楽坂っていうことを知ってて、西野ハルって名乗ったんです」
神楽坂 優子「声も西野くんの声でした」
西野 ハル「どうなってるんだろう?」

〇教室
神楽坂 優子(高校生活ももう終わりか)
神楽坂 優子(ずいぶん書き溜めたな)
神楽坂 優子「ハルくん・・・」
西野 ハル「あれ?こんなところにいたの? 卒業パーティー行くでしょ?」
神楽坂 優子「うん。行くよ」
西野 ハル「なんか初めて優子ちゃんと話した時を思い出すね」
神楽坂 優子「あれより変な事は今まで無かったね」
西野 ハル「確かに。一生忘れないだろうな」
神楽坂 優子「ハルくんとずっと一緒のクラスでよかった」
西野 ハル「ぼくも優子ちゃんと一緒で楽しかった」
神楽坂 優子「ハルくんと出会わなければきっと友達もいないで、きっとずっと1人で高校生活送ってたよ」
西野 ハル「そんなことないよ。俺なんて大したことしてないよ。きっと優子ちゃんなら俺がいなくても・・・」
神楽坂 優子「そんなことないよ!」
神楽坂 優子「ごめん。急に大きな声出して。でも本当にわたしはハルくんに感謝してるから!」
西野 ハル「うん。ありがとう」
西野 ハル「えっとじゃあ俺幹事だから先に行くね」
神楽坂 優子「うん。わたしもすぐに行くよ」
西野 ハル「会場の場所わかる?」
神楽坂 優子「いつもの駅近くのお店だよね?」
西野 ハル「そう!わからなかったら連絡して! じゃあまた後で!」
神楽坂 優子(何であんなにドキドキしたんだろ?)
神楽坂 優子(高校生活でいろんな詩を書いたな)
神楽坂 優子(あれ?)
神楽坂 優子(何も書かれてない)
神楽坂 優子(どうしてだろ?)
神楽坂 優子(いろんな写真撮ったはずなのに)
神楽坂 優子(写真が全部消えてる)
神楽坂 優子(ハルくんの写真もない・・・)

〇ネオン街
神楽坂 優子(ハルくんも他のクラスメイトも連絡つかなかったけど大丈夫かな?)
神楽坂 優子(会場の場所ここだよね)
  優子は店の扉を開けて中に入った

〇教室
  店の扉を開けると先ほどまでいた教室だった
神楽坂 優子「どういうこと?何で?」
西野 ハル「やあ」
神楽坂 優子「ハルくん!?」
神楽坂 優子「ここって教室? どうなってるの?みんなは?」
西野 ハル「そもそもぼくらは存在しないんだよ」
神楽坂 優子「何を言ってるの?」
西野 ハル「存在しないのは全部か」
  そういうと西野ハルは電気が消えるみたいに消えた
  優子は机の置かれたノートを見つけて開いた
  窓の外には永遠の夜があった
  ぼくがいなくなった教室にわたしだけが取り残された
  きっとぼくが言ったように、わたしも存在しないのかもしれない
  わたしがいなくなった後も、きっと感情だけが怪物となってこの教室に滞留し続ける
  怪物は思う
  放課後は密室でできている

〇トラックのシート
  カーステレオのボリュームを上げる
  今回179tapでした
  記録の完全修復まであと12674890389054332566759tap
  「GENSEKI」プラットフォームからダウンロードされた型は現状で最適解だと出ています

コメント

  • 最初に優子の詩の「わたし」と「ぼく」の使い分けが気になっていたらなんと…。ラストシーンの電話があの時優子にかかってきた電話なのかな?スマホ画面に閉じ込められた放課後の教室に閉じ込められた優子の感情。時空の歪んだ入れ子構造のミステリーの雰囲気、楽しめました。 Tap数が目標に達して完全修復されたら何が起こるか見てみたい気もします。

  • トップでお見かけした時から興味をひかれるお話でした。このスマホ画面を部屋に見立て、某シーン以外を放課後の一枚絵で固定されているのも作者様の仕掛けだろうと思いました。最後の、彼女は情報で出来ていた…不思議な余韻が残るお話でした。

  • えええっ!? 何で何で何で!? 何だったの!?
    なんかカッコイイなーとは感じました(⁠☆⁠▽⁠☆⁠)

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ