読切(脚本)
〇散らかった研究室
助手A「あ、どうも、どうも。これを読んでいる、皆さん。あなたは本当は高次元の存在だということ、知っていますか?」
助手A「えっ? 知っているって?」
助手A「それはそれは。出鼻くじかれましたね」
助手B「誰と話しているの?」
助手A「読者」
助手B「読者って、何?」
助手A「いや、ほらっ、何となく」
助手B「またさっぱり要領えないわね」
助手A「要領えないのが取り柄だからね」
助手B「ヘンな自信を持たないで」
助手B「それより国際学会中の博士から手紙が来てるわよ」
助手B「はい、これ」
助手A「今時、手紙?」
助手A「どれどれ・・・・・・」
助手A「・・・・・・いやあ、これは傑作だな」
助手A「あははははははははははははっ」
助手B「もう気持ち悪いわねぇ」
助手B「で、何て書いてあったの?」
助手A「教えない」
助手B「また子どもみたいな」
助手B「おやつに、かぼちゃプリン出さないわよ」
助手A「いや、ちょっと、それは困った」
助手B「でしょ? 教える気になった?」
助手A「全然」
助手B「じゃあ、かぼちゃプリンは無しね」
助手A「それも困る」
助手B「人生は決断の連続」
助手B「あなたはどんな未来を選ぶ?」
助手C「この人にそんなこと言っても、無駄ですよ」
助手B「来ていたの?」
助手C「そのプリン、僕が食べちゃいましたから」
助手A「マジか」
助手C「大マジです」
助手C「世界は常に流転している」
助手A「そこは流転しなくていいよぉ」
助手C「それで、手紙の内容は何だったんですか」
助手A「教えない」
助手C「そんなに重要なことが書いてあったんですか」
助手A「全然」
助手C「じゃあ、教えてくださいよ」
助手A「ヤだね」
助手A「たいしたことじゃないから、無理して知る必要ないよ」
助手C「どうします?」
助手B「どうしようかしらね」
助手C「無理やり取り上げるって、手もあるんですが」
助手C「ほらっ、あの人、腕力ないし」
助手B「でも、無理に取り上げると、あの人、食べるわよ」
助手C「まさか」
助手B「見た人いるんだって。ある人がお腹すきすぎて、紙食べるところを」
助手B「「やっと、数式できたのに」って、大騒ぎしていたらしいわ」
助手C「えーっ、知らないなあ。そんな楽しい話なら、僕の耳に入ってよさそうだけど」
助手C「紙、食べたことあるんですか」
助手A「ないよ」
助手C「おかしいなあ。この人、恥ずかしいと思って、隠すタイプじゃないのに」
助手A「ボクはないけど、君が紙食べたって、ウワサは聞いたことがあるなあ」
助手C「僕はありません。寝ながら食べたなら、一番に僕の耳に入ってよさそうじゃないですか」
助手A「おかしいなあ」
助手C「おかしいなあ」
助手A「みんな、パラレルワールドの住人と入れ替わっている?」
助手C「そんな愉快な話ならいいですけどね」
助手C「それに、その手紙、どうせ会議中の博士の落書きでしょ?」
助手A「バレた?」
助手C「僕も、貰ったことありますからね。どれ見せてくださいよ」
助手C「ああ、もう、しょうもない。各国の英知の似顔絵描いているよ。しかも、かなり下手くそ」
助手B「このイラストのとなりの字、何?」
助手C「う~ん、かなり読みにくいけど、「間もなく地球は滅びるよん」って、書いてあるな」
助手C「宇宙物理学専門の博士に「間もなく」って、言われてもねえ。早くて一千万年後?」
助手B「あらっ。博士、最近、分子物理学に専門を鞍替えしたのよ」
助手B「「宇宙の神秘は細部に宿る」とか言って」
助手B「めちゃくちゃ短い時間単位扱うのよね」
助手C「天才肌で助手の力を必要としない人だから、気づかなかったよ」
助手A「「よん」って書かれたって、なあ」
助手C「ねえ」
助手B「まだ時間あるから、わたし、かぼちゃプリン買ってくるね」
助手A「三個だぞ」
一見くだらない事ばかり話してそうな助手達だけど、本当はすごい研究員なんじゃないかなあと想像しました。頭が良くてもただ論理的なら公務員になるだろし、でも彼らのようにひとひねりあるからこそ風変りな教授の手助けができるのかも。おもしろかったです!
読んでて不思議な感じがしました。
ひょっとして…もう…?みたいな感じがしたんですよね。
この人達は本当に生きてるのかが謎でした。
楽しく読ませていただきました!
かぼちゃプリンがすべての肝になっているところ5おもしろかったです。どんな秘密も好物や甘いもの、おいしいものの前では台無しということですね。