〇幻想空間
天使ちゃん「ここは天界にある 生と死の狭間の世界・・・」
天使ちゃん「現世で亡くなられた人間に 異世界で第二の人生を歩めるよう、 新たな役割を授ける神聖な場所・・・」
天使ちゃん「私はそんな方々のご要望を聞き、 快適なセカンドライフを送れるよう スキルを与える存在なのです・・・」
天使ちゃん「・・・という訳で、 あなたは何をお望みなのでしょうか？」
ニート「チートスキルくれ」
天使ちゃん「ニートスキル・・・？」
ニート「ニートじゃねぇ！チート！」
ニート「異世界転生といえばチートスキルって 相場が決まってんだろうが」
ニート「超つえぇ〜能力を手に入れて、 悪い奴も気に入らない奴もやっつけて 俺は異世界で好き勝手過ごすんだ」
天使ちゃん「え、えーっと」
天使ちゃん「そんな都合の良い展開で あなたは楽しいのですか・・・？」
天使ちゃん「もう少し謙虚な心があった方が 良いと言いますか・・・」
天使ちゃん「もっと人を救いたいとか、 世の中を良くしたいとか、 そういう志があった方が良いと 私は思うのですが・・・」
ニート「うるせぇな駄天使」
天使ちゃん「だ、駄天使!?」
ニート「そういうのはいらないんだよ！ 無双出来ればなんでも良いの俺は！」
ニート「そんな説教臭いのとかマジうぜぇし、 俺さえ良ければ世の中どうなろうが 知ったこっちゃねぇし〜！」
ニート「俺はやりたい放題したいの！ 自分さえ良ければ良いの！」

〇炎
天使ちゃん「ええ加減にせえクソニート！」
ニート「え、えぇっ!?」
天使ちゃん「自分みたいな奴に力渡したら 大変なことになるわ！誰が渡すか！」
天使ちゃん「なんでもかんでも自分の 思い通りになるなんてそんな 都合のええことある思うな！」
天使ちゃん「みんな苦労するなり、運を掴むなりして、 自分の人生を良うしようと人それぞれ 頑張っとるんじゃボケが！」
天使ちゃん「主導権は全てうちにある！ あんまいちびっとったら 石にでも転生させんぞクソガキが！」
ニート「ヒ、ヒィィィィ〜!! すみません！調子こいてました！」
天使ちゃん「自分はもう村人Aから始めんかい！ 頑張ったら開花するスキルやるさかい、 真摯な心をまず学ばんかい！」
ニート「は、はい！すみません！ 天使様、ありがとうございます！ 俺、頑張ります！すんませんでした！」
天使ちゃん「まったくきょうびの若いもんは・・・ あんな奴ばっかりか・・・！」
天使ちゃん「あ・・・」

〇幻想空間
天使ちゃん「オホン・・・あらいけない・・・ 私ったらつい取り乱して・・・」
天使ちゃん「私は天使・・・聖なる存在・・・ 神の顔に泥を塗るような真似は 絶対に避けねばなりません・・・」
天使ちゃん「さて、気を取り直して・・・ 次の方は何をお望みなのかしら・・・」
おっさん「女の子にモテたい」
天使ちゃん「・・・は？」
おっさん「おじさんも若い頃は モテモテで大変だったんだよ」
天使ちゃん「あ、あの・・・」
おっさん「でも歳を取るとなかなかねぇ・・・ やっぱ若返ってハーレムなんかを 築き上げたいとおじさんは思うのよ」
おっさん「世界中の女の子がみんな おじさんの恋人になって欲しいな〜」
おっさん「あ、でも可愛くない子とか スタイル悪い子はいらないな〜」
おっさん「そんな奴は女の子とは認められないよね ていうか、人として価値がないよね」

〇炎
天使ちゃん「死にさらせ！」
おっさん「え、えぇっ!?」
天使ちゃん「黙って聞いとったら好き勝手 ぬかしよってクソ親父が！」
天使ちゃん「人として価値があれへんのは自分じゃ！ 世界は自分中心で回ってるんちゃうぞ！」
天使ちゃん「呆れて物も言われへんわ！ 自分はあれや！BLの刑に処す！ 男だけの集落に送り込んだるわ！」
おっさん「そ、そんなぁ〜！ 女がいないと生きていけない〜！」
天使ちゃん「まったく！ふざけよって！ 若者だけちゃうくておっさんもかいな！ 現世にはクソしかおれへんのか!?」
天使ちゃん「・・・もう嫌」

〇シックなバー
天使ちゃん「はぁ・・・」
「どうしたの？浮かない顔して」
魔王ちゃん「すっかり堕天しちゃって・・・ なんかあったの・・・？」
天使ちゃん「うぅ・・・魔王ちゃん・・・ ちょっと聞いてくださいよ・・・」

〇シックなバー
魔王ちゃん「な、なるほど・・・そんなことが・・・」
魔王ちゃん「ほんと男って馬鹿ばっかなんだから！ もっと周りに目を向けて欲しいわ！」
天使ちゃん「うぅ～・・・ほんと魔王ちゃんの 言う通りですよ～！どうにかしてください！」
天使ちゃん「飲まないとやってられませんよ！ マスター！とにかく強い奴ください！」
天使ちゃん「ありがとうございます・・・」
天使ちゃん「くあ〜！効くわ〜！」
魔王ちゃん「あんまり飲みすぎないようにね 神様に怒られちゃうよ？」
天使ちゃん「魔王ちゃんは元JKの転生者なのに ほんと良い子ですよねぇ・・・」
天使ちゃん「魔族に転生して、魔族として 異世界から争いを無くしたい 転生する時にそう願いましたよね」
天使ちゃん「そしたらどんどん成り上がって 魔王にまで上り詰めて、 あんなに荒れ果てていた魔界を 統治してしまうんですから・・・」
魔王ちゃん「私なんか全然大したことしてないって・・・ 天使ちゃんが良いスキルくれたからでしょ」
天使ちゃん「ほら！それ！」
魔王ちゃん「ど、どれ!?」
天使ちゃん「その謙虚さですよ！今日転生した人間に そんな謙虚な人、全然いなかったんですよ!?」
天使ちゃん「明日も仕事なんですけどもう 嫌になっちゃいましたよ！」
魔王ちゃん「まぁまぁ・・・あなたのおかげで 救われた人達もたくさんいるんだから・・・」
魔王ちゃん「愚痴ならいつでも聞いてあげるから！ だからあんまりヤケにならないでね？」
天使ちゃん「うううう〜！魔王ちゃん！ありがと〜！」
天使ちゃん「マスター！もう一杯！」

〇幻想空間
天使ちゃん「昨日は魔王ちゃんにたくさん 愚痴聞いてもらったおかげで スッキリしましたね・・・」
天使ちゃん「ちょっと飲みすぎましたけど・・・」
天使ちゃん「よし、心機一転！今日も頑張りましょう！」
天使ちゃん「では、転生者の方！ご要望は!?」
ペテン師「世界征服してぇ〜」

〇炎
天使ちゃん「顔洗うて出直せ！」