読切(脚本)
〇黒
とある満月の後・・・
〇ビルの裏
男1「いいじゃん ここでしようぜ」
女1「やだあ~雨も降ってるのに」
男1「どうせ濡れるだろ いいから」
女1「しょうがないわねえ ふふっ」
(ドド・・・ッ ピカピカ)
〇雷
〇黒
女1「な・・・なに!?」
男1「このニオイ・・・!?」
〇ビルの裏
???「ブブ・・・ プシュウ・・・プシュウ・・・」
女1「・・・きゃ!?」
男1「ば・・・化け物!!」
女1「きゃああああっ!!」
男1「うわあああああっ」
???「・・・・・・」
???「また・・・ つまらぬモノを見てしまった・・・」
遠野「・・・月乃?」
美夜「!! 遠野君・・・!!」
美夜「(嘘・・・見られた!?)」
遠野「今いた美しいヒトは・・・!?」
美夜「えっ」
遠野「月乃・・・ 今いた美しいヒトはどこなんだ!!」
美夜「(ええええええ)」
〇学校の校舎
(キーンコーンカーンコーン)
〇教室
美夜「うう 悪寒が・・・」
あかり「どうしたの? 風邪?」
美夜「いや・・・ 昨日の夜 雨に打たれちゃって・・・」
あかり「はあーー!? なんだってそんなことになったのよ」
美夜「そ それは・・・(言えない・・・)」
遠野「風邪にはハチミツ大根だぞ 月乃」
美夜「と・・・遠野君!!」
遠野「昨日の夜 大変そうだったからな なんなら首にネギも巻いとくか?」
遠野「待ってろ 調理実習で使うネギがこの辺りに・・・」
そう言うと
遠野君は ポケットを探り始めた
美夜「!! いっ いいのっ!! 大丈夫 気にしないでっ!!」
遠野「? そうか? おかしいな この辺にあったはずなんだが・・・」
遠野君は 立ち去りながら
ポケットや胸元を 探し続けた
あかり「はあ~・・・ わっかりやすいったら無いわねえ」
美夜「なっ 何がよ!!」
あかり「遠野秋巳(とおのあきみ) 好きなんでしょ? 昨日何があったの?」
美夜「!! ばっ・・・やめて!!」
あかり「質問に答えて」
美夜「別に・・・ちょっと 軽く失恋っていうか」
あかり「えええ どういうこと!?」
美夜「!! そ それは・・・ (これはヒトに言えない・・・!!)」
遠野「おーい 月乃 悪い ネギ見つからなかった」
美夜「いっ・・・いいよ!!」
遠野「お詫びと言っちゃあなんなんだが 今夜ウチに本を取りに来てくれないか?」
美夜「え・・・本? (いや それより・・・)」
あかり「ちょっと アンタ 美夜に夜 出歩かせるつもり?」
遠野「ああ そうだよな スマン じゃあ」
美夜「!! いっ いいの・・・!! 大丈夫・・・行く行く!!」
あかり「大丈夫って 美夜 アンタ・・・」
美夜「大丈夫・・・ せっかくのチャンスなんだもん! あ!!」
美夜「(言っちゃったーーーー!!)」
あかり「はああ・・・まあいいわ 痴漢とかに気をつけてね」
美夜「うん・・・(でもそれより気をつけなきゃいけないのは・・・)」
〇住宅街の公園
遠野「ま・・・ また会えるなんて思いませんでした!!」
???「ブブ・・・プシュウ・・・(私もまた会うなんて思いませんでした・・・)」
遠野「嬉しいなあ 近所にお住まいなんですか?」
???「(遠野君・・・なに喜んでるんだろ・・・)」
遠野「あ これ 友達に貸そうとした 本なんですけどね」
???「(・・・友達・・・)」
遠野「見て下さい・・・美しいでしょう・・・!! アナタみたいな怪物が沢山載ってるんです」
???「!!(・・・か 「怪物」・・・!!)」
遠野「ここの粘着質な佇まいなんか ホラ これと良く似てる」
遠野「ひょっとして海坊主の一種ですか?」
???「・・・ッ」
遠野「!! あっ!! ちょっと待って・・・!!」
遠野「もしかして 怒らせちゃいました!? ボクが 怪物だなんて言ったから・・・」
???「・・・・・・」
遠野「でも 違うんです! 誤解されやすいですけど ボクにとっては 誉め言葉で・・・」
???「・・・・・・」
遠野「あの・・・ボク達 付き合いませんか!?」
???「(えっ)」
遠野「好きです・・・付き合って下さい!!」
そう言うと 遠野君は深々と頭を下げた
遠野「? あれ? ネギ・・・」
彼の懐から なぜかネギがポロリと落ちた
私の涙は落ちても落ちても止まらなかった
〇UFOの飛ぶ空
〇住宅街の公園
???「ひどい・・・ こんな怪物が好きだなんて・・・」
私の涙は それからもこぼれ落ち続けて
ヌメり気のある体は枯れ果てるようだった
遠野「!! つ・・・月乃・・・!?」
美夜「遠野君・・・ こんな女(?)が好きなのね」
遠野「違うんだ 月乃 俺はお前を前から知っている・・・!!」
美夜「(え!?)」
遠野君は これまでの事情を話し始めた
〇海岸の岩場
子供の頃・・・海で溺れて死にかけたこと
その時助けてくれたのが海坊主だったこと
遠野「月乃・・・ 俺は美しいモノは 心の目で分かるんだよ・・・」
遠野「あれがお前だったことも・・・」
美夜「遠野君・・・」
私の記憶も よみがえってきた
7年前の 遠い昔
波間で必死にもがく 太った男のコ・・・
美夜「(・・・え? 「太った男のコ」・・・!?)」
〇住宅街の公園
遠野「・・・ふふ 俺だって気付かなかったろ」
美夜「と 遠野君・・・!!」
遠野「さては このイケメンぶりに惚れたな? ふふ それが俺のヒ・ミ・ツ」
美夜「そ そんなんじゃ・・・」
遠野「何でも 心の目で見なきゃ駄目だぞ 特に 自分自身のことはな」
そう言うと 遠野くんは
ポン! と 私の肩を 叩いた
遠野「行こう 月乃・・・ お前はもう 怪物なんかじゃないんだから」
美夜「・・・うんっ!!」
〇黒
・・・それから3年
私は怪物にならなくなった
月夜の晩も どんな時でも
〇海岸の岩場
全てのモノが美しく見え
今までは 私の嫉妬や不安が
自分自身を怪物にしていたのだと気付いた
遠野「おーい! 月乃ー!!」
ハタチになった私達は
普通の人間同士としてお付き合いしている
美夜「(・・・て ん?)」
〇UFOの飛ぶ空
〇海岸の岩場
美夜「・・・・・・」
???「・・・・・・」
遠野「・・・・・・」
遠野「・・・美しい・・・」
美夜「・・・・・・」
〇黒
美夜「(遠野君の 嘘つき・・・)」
(おわり)
楽しく読めるお話でした。
何を美しいと思うかは、本当に人それぞれですよね。
彼女もまさか!だったでしょうが。
でも、彼女の前で他の人を褒めるのは良くないと思います。笑
「風邪の時には,大根とネギ」が頭に残りました!でも…調理実習のネギが無くなって先生,困っただろうなぁとも思いました(笑)
うんうん、人間でも見た目がコンプレックスだと周りも歪んで見えたりしますよね。
まぁ自分の見た目が好きな人なんてあまりいないでしょうけど…。
見た目より中身!怪物…でも中身!笑