告白

織葉黎旺

告白(脚本)

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織葉黎旺

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〇テーブル席
  待ち合わせ十五分前。予定通りに私は、彼に呼び出されたカフェについた。
  陽の当たる窓際の席。彼はいつも通りそこに座っていた。どこか所在なく外の景色を眺める彼が可愛く見えて、くすりと微笑んだ。
「いらっしゃいませー」

〇テーブル席
  日曜日の昼下がり。家族連れやカップルで賑わう店内で、俺は一人焦っていた。
一弥「あー、めっちゃ緊張する・・・!」
  時間は待ち合わせ三十分前。遅れてはならないからと急いできたものの、逆に待ち時間が長くなってしまってもどかしい。
一弥「ん・・・・・・」
  とりあえずお冷で喉を潤す。店員の視線が痛いが、それもあと15分ほどの辛坊──のはずである。
店員「いらっしゃいませー」
  入店のジングルと店員の声とともに、彼女が現れた。
眞希「おまたせ、待った?」
一弥「いや、全然!俺も丁度今来たとこッ──!?」
  上げた腕に当たり、水の入ったコップが宙を舞う。またやってしまったと頭が真っ白になったその時、視界の端から細い腕が伸びた。
眞希「もう、大丈夫?相変わらずそそっかしいんだから」
一弥「ああ、悪い悪い。助かったよ」
  倒れかけたコップを、咄嗟に眞希が受け止めてくれたことで事なきを得た。
  結構抜けたところのある俺を、眞希はいつも先回りして助けてくれる。勿論とても感謝しているのだが、実は──
  俺はそんな彼女に秘密がある。今日はそれを、告白しに来たのだ。
一弥「眞希、俺お前に話さなきゃいけないことがあるんだ」
眞希「どうしたの?」
一弥「ずっと隠してたんだけど、俺、実は──」
一弥「眞希のこと、好きなんだ!」
  一瞬の沈黙。頬が紅潮しそうな程の火照りを感じながらも、それに堪える。彼女がゆっくりと口を開いた。
眞希「・・・え、知ってるけど」
一弥「えっ」
眞希「いや、ずっと前から知ってたよ?出会った頃から」
一弥「えっ、えっ」

〇映画館のロビー
一弥「ポップコーンとドリンク、ください」
店員「かしこまりましたー」
  何とか列車に乗り込んで、数駅隣の映画館に着いた。
  朝から上映している作品が少ないのもあってか、館内の客足はまばらだった。
???「あの、すいません」
一弥「はい?」
眞希「これ、落としましたよ」
一弥「あ、ありがとうございます!」
  彼女が手に持っていたのは映画のチケットだった。どうやらポケットから落ちてしまったらしい。
一弥「すみません、助かりました!」
眞希「いえいえ、お気になさらず。・・・あの、よろしければ近くの席で一緒に見ませんか?一人で見るというのはどうにも恥ずかしくて」
一弥「ええ、むしろ大歓迎です!」
眞希「ふふ、ありがとうございます。よかったらその後ご飯行きませんか?美味しいお店知ってるんです」
一弥「いいですね、是非行きましょう!あ、俺、一矢っていいます」
眞希「一矢さんね、よろしく。私は眞希。敬語は別に使わなくてもいいよ、県大の三年でしょ?私もなの」
一弥「え、同い年じゃん。っていうかよくわかったな」
眞希「ちょっと見覚えあったからね。いつも学食でトンカツ定食頼んでるでしょ?」
一弥「ああ、よく覚えてたな!」
眞希「目立つからね、印象に残ってたの」
一弥「なんか照れるな」
  ──同じ大学の同い年、という共通の話題で盛り上がり、なんやかんやと距離を縮めて映画鑑賞。

〇映画館の座席
眞希「面白かったね、感動して思わず泣きそうになっちゃった」
一弥「ああ、売れてるだけあるな」
  ──共に映画を見て。

〇おしゃれなレストラン
一弥「このパスタ美味いな!」
眞希「でしょう?」
  ──共にご飯を食べ。

〇観覧車のゴンドラ
眞希「綺麗な景色だね」
一弥「・・・だな」
  ──遊園地で遊んで。気づけば、すっかりデートの様相になっていた。
  今日初めて会ったとは思えないくらいに、眞希とは気があった。あっという間にもう夕方である。
一弥「今日はありがとうな、眞希。よければまた遊んでくれ」
眞希「うん、こちらこそ」
  ゴンドラの中で夕陽に照らされる彼女の微笑みが、たまらなく美しくて──きっとその時に、俺は彼女を好きになったんだと思う。

〇テーブル席
  ──そして今に至る。
一弥「え、ずっと知ってたの!?」
眞希「うん、だって一矢の反応わかりやすいんだもの」
  ずっと見透かされていたのか。それは──だいぶ恥ずかしい。
眞希「・・・告白の答え、聞きたい?」
一弥「・・・ああ」
  ゆっくりと瞬きをした。彼女は薄く微笑むと、こちらに近づき、優しく抱き留めてきた。
眞希「ありがとう。私も、ずっと、ずーっと前から一矢のことが好き」
一弥「よっしゃー!」
  ぎゅっと抱き返す。ほのかな甘い香りと柔らかく、温かな感触。幸せってこういうことなんだなあ、と思った。
眞希「ごめんね、でも私も一つ、秘密にしてたことがあるの」
一弥「え・・・?」
  視界がゆっくりと歪み、廻り始める。人も景色もぼやけ始めて、俺が最後に見たのは彼女の、恍惚とした笑顔だけだった。

〇駅の出入口
眞希「きゃっ!?」
一弥「すいません、大丈夫ですか!?」
  また、彼とぶつかった。これで何回目だろうか。四桁を過ぎた頃からは数えるのをやめてしまったのでわからない。
  彼に隠していた私の秘密──それは、この世界が繰り返しているということ。彼の告白を受ければ、出会った瞬間に戻される。
  初めは恐ろしい生き地獄だと思ったけれど、それはとんでもない勘違いだ。
  所々で差をつけて、変化を楽しむのも、告白を焦らして仲良く歳をとるのも面白い。
一弥「あの・・・立てますか?」
  ふふ、今回はどうしようかしら。そんなことを考えながら、私は愛しい彼が差し出した手を取った。

コメント

  • 楽しいストーリーでした。彼ではなく彼女に(笑)二人の会話もとても純粋で心穏やかに読ませて頂きました、会話を重ねることでお互いを知ることが出来るのっていいですね。

  • この秘密を抱えたままお話をハッピーエンドに持っていく、彼女の愛の強さにやられました。私も恋したみたいな幸せな気持ちです。

  • お互いにとって二人が運命の相手だということなのでしょうね。何千回と繰り返しても少しずつ変化をつけて彼の新しい一面を知っていく…本当に赤い糸で結ばれた相手とでなければウンザリしてしまいますものね!末永く続くといいな

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