読切(脚本)
〇森の中
サメ「そ、そこのかた!!」
サメ「どなたなのかは、存じませんが・・・」
サメ「たすけてください!!!!!!」
雨が激しく降りしきる、深い森の中
???「どうしたのか?」
サメの元へと、オオカミが悠々と歩いてくる
サメ「あ、あの!!」
サメ「これを、取ってもらえませんか!?」
サメの体には、地面から伸びた木の根っこが絡みついていた。
オオカミ「これは大変だな」
オオカミ「取ってやる。少し待っていろ」
サメ「あ、ありがとうございます!!」
オオカミは、サメの元へと歩みよる。
オオカミが、サメの体に絡みつく木の根へと手を伸ばす。
ズルズルルルル・・・
木の根っこは、地面の中へと帰っていく。
オオカミ「これで、動けるだろう」
サメ「うわぁ!! ありがとうございます!!」
オオカミ「うむ」
オオカミ「・・・」
サメ「・・・」
オオカミ「・・・・・・」
サメ「・・・・・・!!」
サメ「な、なにか!! お礼をさせてください!!」
オオカミ「・・・うむ」
オオカミ「とりあえず、我の家まで行こうか」
サメ「は、はい!!」
〇洋館の玄関ホール
サメ「うわぁー!!」
オオカミ「まあ、狭いところだが、くつろいでくれ」
サメ「えっ!? 狭くなんてないですよ!! すっごく広いですって!!」
オオカミ「そうか」
オオカミは、ゆっくりと頷く。
サメ「ちなみに・・・」
サメ「ここって、何人ぐらいで住んでるんですか?」
オオカミ「ああ」
オオカミ「我、一人だ」
サメ「ええっ!!」
サメ「それなら、今日は二人っきりですね」
オオカミ「ふっ。そうだな」
ぐぅーーーーーーーーーーーーーーーーー
長くて、大きな大きな腹の音が、響き渡る。
オオカミ「・・・ちなみにだが、料理は作れるか?」
サメ「料理なら得意ですよ!! 任せて下さい!!」
サメ「ヒレによりをかけて、舌を唸らせるような料理、作って見せますよ!!」
オオカミ「ふっ」
オオカミ「魚のヒレは、我の大好物だ」
サメ「えっ・・・・・・あはは。任せて下さい!!」
サメ(きっと、オオカミさんなりの冗談・・・だよね?)
オオカミ「楽しみにさせてもうらよ」
サメ「・・・はい!!」
サメ「まずは、材料の準備からですね」
サメは、オオカミに背を向けたかと思えば、大きく大きく口を開いた。
サメ「ぶぇぇぇぇ!!!!!!」
〇魔物の巣窟
サメ「オオカミさん、オオカミさん!」
サメ「どの子が好みですか?」
オオカミ「・・・」
オオカミ「うむ」
オオカミ「・・・」
オオカミ「・・・」
オオカミ「・・・」
オオカミ「うむ」
オオカミ「みんな頂こうか」
サメ「は・・・い?」
サメ(あれ? オオカミさん。何か変わったような・・・)
オオカミ「調理方法は丸焼きで頼む」
サメ「ま、丸焼き・・・ですか?」
オオカミ「ふっ。汝が真に調理出来るのか見ものだな」
サメ「丸焼きぐらい余裕ですよ!! 任せて下さい!!」
サメ(うん、分かったぞ!! 急におしゃべりになったから、変わったように見えたんだな。きっと、とってもお腹が空いているんだね!!)
サメ「それじゃあ、超速で調理しちゃいます!!」
サメ「よいっ・・・しょっと」
サメ「ぱくっ、ちょな」
「ふおぉぉぉぉ!!!!」
サメ次郎「それじゃあ、早速始めます!!」
オオカミ「いや」
オオカミ「もう十分だ」
サメ次郎「ふぇ?」
オオカミ「我慢出来ん」
オオカミ「汝を頂こう」
オオカミ「楽にしておけ」
オオカミ「すぐに終わる」
オオカミの体は溶け始める
次の瞬間には、ドロドロと溶け、全く違う何かへと形を変えていた
オオカミ?「ジット、シテテネ?」
サメ次郎「うわぁぁぁぁ!!」
サメは、走って入り口から逃げようとする
だが、入り口の扉が、階段が、
いや
建物全体が、先ほどのオオカミのように溶け始めていた
オオカミ?「オイシソウナ、ヒレ」
オオカミ?「イタダキマース!!」
〇森の中
溶けだしたはずのその屋敷は
次の日には、元通りになっているのであった
「げぷっ・・・」
「まずかったー・・・」
〇黒
注意事項
ちゃんと、生肉には火を通そうね
サメ「良い子のみんな!!」
サメ「僕との約束だよ!!!!」
人間界においてはどちらも強者で喰う者という感じですが現実ではなかなか出会うことのないサメ対オオカミという設定が斬新であっという間に読めました。
突拍子のない物語設定に驚きましたが、”出オチ”にならずに読み手を引き込む文章力に驚きです。終始楽しく読ませてもらいました。
すごい勢いで進む話に、ついノってしまいました!
すごく読ませる話ですね!
サメさんがえらいめに遭ってるんですが、なぜか楽しく読んでしまいました。
狼さんとサメさんの掛け合いがまた面白かったです。