PARTY〜遠吠えのできない私が勇者様の仲間になった理由〜

朝永ゆうり

遠吠えなんてできなくたって(脚本)

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朝永ゆうり

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〇児童養護施設
イヌ族「逃げろー!」
イヌ族「わぁぁ」
魔王「泣ーけ!わーめけ!さ・け・べー!」
魔王「ムカつくのよねぇ・・・あなた達、イヌ族」
魔王「耳の良さと 遠吠えとかいう声のせいで──」
魔王「勇者とかいう 訳分からない力をもつ人間の力になって」
魔王「仕掛けた奇襲を ことごとく打ち破ってくれて」
魔王「あー、忌忌しい!」
リタ「そんな・・・」
リタ(私たちの村が・・・)
リタ「すぅー・・・」
リタ「ワオーン!」
リタ「ワオーン、ワオーン」
リタ(お願い、届いて)
リタ(助けて、誰か・・・)
魔王「今の遠吠え、あなたね」
魔王「ムカつくのよねぇ、その声」
魔王「ええい!」
リタ(苦し・・・ 声が、出ない・・・)
魔王「はぁ!」
リタ(から、だ、が・・・)
魔王「ふふふ♡」

〇黒
「あの子 村の危機を助けてもらうために 遠吠えしたのよ」
「それで声を奪われるなんて 自業自得よね」
「イヌ族の恥だわ」
「遠吠えは 勇者様に危険を知らせて お守りするために使うものでしょ?」
「自分たちのために使うなんて、ね」
「しかも死に損ねて 森の奥に住んでるんでしょ?」
「まあ 村の中で見ないだけいいじゃない」
「そうね 目障り目障り」
「アハハハッ!」
リタ(私は、目障り・・・)
リタ(仕方ないわ 自業自得だもの・・・)

〇廃倉庫
リタ(あの日 目が覚めたらこの小屋にいたのよね)
リタ(一体どなたが──)

〇空

〇けもの道
リタ(今日はたくさん取れたわ あとは木の実をもう少し──)
イヌ族「聞いた? 勇者様がお供を選びに来るんですって!」
リタ(勇者様・・・!)
イヌ族「お供選び、かぁ 誰になるんだろう」
イヌ族「前までなら リタだったろうけど・・・」
イヌ族「リタ・・・ 哀れな子、フフッ」
「アハハッ」
リタ(あの頃の私だったら──)

〇花模様2
リタ「ワオーン!」

〇けもの道
リタ(考えても虚しいだけね)
リタ(でも勇者様・・・)
リタ(少し見るくらいなら 許されるかしら?)

〇児童養護施設
「勇者様が到着されたぞぉ!」
リタ(こっそり、こっそり・・・)
リタ(彼が、勇者様・・・)
リタ(声の出ない、私は・・・)
リタ(・・・はあ、分かっていたのに)
リタ(もう帰ろう)
リタ(ここにいても、虚しいだけ)
「キミ・・・」
リタ(私だって、お供になりたかった)
リタ(あの時、あんなことしなければ──)
「ねえってば」
リタ(私が、勇者様のお供だったのに)
「キミだよ、キーミっ!」
リタ(勇者・・・様?)

〇水玉2
勇者様「ねえ、キミ──」
勇者様「──私の仲間に、なってくれ」
リタ(ふぁぁ・・・)

〇児童養護施設
イヌ族「勇者様、その娘は──」
リタ(そう、私は・・・)
リタ(お供には、なれない・・・)
勇者様「キミもイヌ族の一員だろ? だったら選ばれる権利がある」
リタ(ですが──)
勇者様「私に選ばれるのは、嫌か?」
リタ(違う、そうじゃなくて──)
リタ「・・・」
勇者様「ならば、私とともに」
勇者様「なっ!」
リタ(ええ・・・っ!)

〇怪しげな酒場
リタ(勇者様はなぜ私をお供に?)
リタ(声を出せない私には お供になる資格なんてないのに)
勇者様「リタもどうぞ?」
リタ(とにかく 私が役立たずであることを お伝えしなくては・・・)
勇者様「リタ?」
勇者様「リタっ!」
リタ「・・・」
リタ(怒らせてしまった・・・)
リタ(そうよね 私は──)
リタ(『はい』の一言さえ 言えないのだから・・・)
勇者様「リタ 一体どうしたんだい?」
リタ「ぐすん」
リタ(何とかして お伝えしなくては!)
リタ「わ・た・く・し・は」
リタ「こ・え・が・で・ま・せ・ん」
勇者様「そうか 猫舌だから冷めるまで待っているのだな」
勇者様「イヌ族なのに猫舌・・・ククッ」
勇者様「リタはおっちょこちょいだなぁ!」
リタ(全然伝わらないうえに 失敗ばかり・・・)
勇者様「さて もう戻るか」
勇者様「リタももう仲間だ 寝床に戻るからついておいで?」
リタ(勇者様・・・)

〇山の中
勇者様「戻ったぞ」
「ジロリ」
リタ(ひいい・・・)
勇者様「安心して 彼らは私の仲間だ」
リタ(強そうな方々・・・)
仲間「その娘か」
勇者様「ああ」
仲間「もう寝床に戻っていいか?」
勇者様「淡白だなぁ」
仲間「仕方ないだろう お前が不在の間 ずっと気を張っていたんだ」
仲間「疲れた 寝る」
仲間「同じく」
勇者様「リタ、ごめんね 悪い奴らじゃないし 歓迎してないわけじゃないんだけど──」
リタ「・・・」
リタ(いいえ 私は歓迎なんてされないわ)
リタ(だって私は・・・)
勇者様「リタ・・・」
  こえがでないの
勇者様「なんだ そのことをずっと気にしていたのか」
勇者様「知っていたよ」
リタ(え・・・?)
勇者様「あの日 キミを助けたのは私だからね」

〇児童養護施設
リタ「ワオーン」

〇山並み
「ワオーン、ワオーン」

〇西洋の街並み
「ワオーン」

〇児童養護施設
勇者様「てめえ・・・」
魔王「あーら、もう来ちゃったの?」
魔王「つまんなーい。じゃあね♪」
勇者様「チッ・・・」

〇山の中
勇者様「森の奥の小屋にキミを運んだのも私だ 辺鄙なところにごめんよ でも──」
勇者様「隠しておきたかったんだ 他の誰にも取られないように」
勇者様「キミをどうしても 仲間にしたかったからね」
リタ(けれど 勇者様をイヌ族のために危険な目に 遭わせてしまったのは事実・・・)
  おともになる
  しかく ない
リタ(私には 勇者様の隣に居る資格なんて・・・)
勇者様「リタ、いいかい?」
勇者様「リタの遠吠えが私を呼んだ それはとても勇気のいることだ」
勇者様「あの時キミは掟を破り 私に遠吠えを届けた 村を救うためにね」
勇者様「その勇気と優しさを持っていたのは リタだけなんだよ」
勇者様「私はその勇気と優しさを買ったんだ」
勇者様「それに 私はキミをお供ではなく 仲間にした」
勇者様「共に戦うなら仲間が良い キミは唯一、魔王と戦う理由がある」
リタ(え?)
勇者様「キミの美しい声を 取り戻しに行くんだ」
リタ(でも──)
  とおぼえできない
  やくたたず
勇者様「イヌ族の耳は利くだろう? キミはその能力で 私に危険を教えてくれればいい」
勇者様「さっきみたいに 私の手を握ってくれれば それでいいから」
リタ(しかしそれでは・・・)
勇者様「不安かい? それなら──」

〇水玉2
勇者様「キミがすぐに危険を知らせられるように この手はずっと繋いでおこうか」
リタ(ふぁぁ・・・)

〇山の中
リタ(勇者様、 私の中にはもう仲間以上の感情が・・・)
リタ(魔王を倒す前に この心臓が どうにかなってしまいそうだわ)
リタ(でも 繋いだ手を離さないでいてくれるのは とても心強いの・・・)
  だから──
勇者様「そばにいてくれるかい? リタ」
  コクリ
リタ(『はいっ!』)

コメント

  • この勇者、絶対裏がある!と思っていたのに、清らかなイケメン😄リタのキュンにも納得です!
    バディものRPGの設定としても映えますね❗️

  • 色々と衝撃的でした。物語が始まる前の物語があったかーとか、映像のリレーがtapnovelなんですよねーとか、行間が分厚いとか、気づいたら世界観に取り込まれていたとか、おもしろかった。感謝。

  • これは甘々…!栄養価高くて良きです✨
    勇者様にメロメロになったリタが可愛いですね~
    勇者様はマイペースな感じですが包容力高そうで、一緒にいればいるほどメロメロにされるリタが容易に想像できますね 笑
    お供でなく仲間として、というのも勇者様の人徳が感じられました
    自分達のために遠吠えを使うのは恥という、種族独特の価値観も面白かったです
    何気に魔王様のキャラがめちゃめちゃ立ってて好きです👍 笑

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