ラスト・プリンセスにはまだ早い

龍咲アイカ

第2話(脚本)

ラスト・プリンセスにはまだ早い

龍咲アイカ

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〇朝日
  旧ファジュル王国 ミルファ港
サフィーヤ(もうすぐ夜明けね)
サフィーヤ(こんな時間に海を渡る船なんて・・・)
漁師1「お嬢ちゃん、こんな時間にどうした?」
漁師2「まさか姉弟揃って入水ってことはないだろうな? そういうの止してくれよ〜」
サフィーヤ「ご心配ありがとう。 でもそうではなくて・・・」
漁師1「ん? その瞳・・・!」
漁師2「まさか、姫さんかい!?」
サフィーヤ(見破られてしまったわ。 まぁ好都合かしら)
サフィーヤ「そうよ。 驚かせてしまってごめんなさい」
漁師1「そういや、王都は今アルネヴィアが攻めてきて大変なことになってるらしいな」
漁師2「姫さん、良くぞご無事だったなぁ」
サフィーヤ「ええ。 本当に大変だったけど、何とか逃げてこられたわ」
漁師1「港に来たってことは、 王様のところに逃げるおつもりで?」
サフィーヤ「それって・・・! お父様はここから海を渡ったということね!?」
漁師2「へぇ。 俺たちの漁師仲間が、王家の目の色をした一行をグルーブ王国まで運んだって話ですよ」
サフィーヤ(やっぱり・・・! わたくしの予測は当たっていたわ)
漁師1「どうします? 姫さんもグルーブ王国へ渡りますかい?」
漁師2「俺たちで良ければ力になるぜ!」
サフィーヤ「あなた達・・・」
サフィーヤ「ありがとう。是非お願いしたいわ」
サフィーヤ「でもね、わたくしが逃げるためにグルーブへ渡るのではないことは覚えておいて」
サフィーヤ「お父様と再会した暁には必ずアルネヴィアからファジュル領を取り戻しに帰ってくるわ!」
漁師1「姫さん、よく言った! ここは俺たちに任せとけ!」
漁師2「俺たちが責任を持って姫さんをグルーブの港に送り届けてやるからな!」
サフィーヤ「ありがとう、恩に着るわ」
サフィーヤ(民に助けてもらえてわたくしは幸福だわ)
サフィーヤ(この恩は国を立て直して必ず返す!)

〇貴族の部屋
侍従長「仰せの通り、王女殿下が逃亡しやすきよう取り計らいました」
リカルド「ああ、ご苦労」
侍従長「しかし、よろしいのですか? 王子殿下まで連れて行ってしまわれましたが・・・」
リカルド「問題ない。 いずれ王女は俺の元へ帰ってくるからな」
リカルド(彼女はもう間もなく知ることとなるだろう)
リカルド(ここにしか 帰る場所がないということを──)

〇綺麗な港町
  グルーブ王国 港町
漁師1「じゃ、姫さん、王子! 元気でな!」
漁師2「頑張ってくだせぇ!」
サフィーヤ「ありがとう!」
ザフィール「ありがとうー!またねー!」
サフィーヤ「元気にお礼が言えて偉いわね」
ザフィール「えへへ。でもびっくりしました。 起きたらお船の中だったから」
サフィーヤ「ふふん、お姉様が悪い国のお城から連れ出してあげたのよ!」
サフィーヤ「ここでお父様やお母様を見つけて、また皆で暮らせるといいわね」
ザフィール「はい!」
サフィーヤ(──とは言ったものの、お父様たちはどこにいるのかしら)
サフィーヤ(取り敢えず王都に行けば何かわかるかも・・・)
ザフィール「姉上、父上や母上はどこにいるの?」
サフィーヤ「ええっと、たぶん王都にいると思うの。 どこかで地図を見せてもらうか、道を尋ねなきゃね」
ザフィール「姉上、それならあそこにいる兵隊さんに訊いてみては?」
サフィーヤ「兵隊さん・・・?」
サフィーヤ(あれは・・・グルーブ王家の紋章!? ということは、この者たちは王家直属の兵なのかしら)
サフィーヤ(そんな立場の者たちがなぜこんな港町に・・・?)
サフィーヤ「まぁ、いいわ。 道順くらい教えてもらいましょうか」
サフィーヤ「すみません、道を訪ねてもよろしいかしら?」
グルーブ兵1「ん? 何だ? 今我々は任務中で──」
グルーブ兵1「!」
グルーブ兵1「おい。この娘の瞳、例の──」
グルーブ兵2「ああ。間違いないだろう」
グルーブ兵1「ああ、失礼。 お嬢さん、どうされました?」
サフィーヤ「王都に向かいたいのだけど、土地勘がなくて困っていますの。 簡単で良いので道順を教えていただけないかしら?」
グルーブ兵1「それは良かった。 我々もちょうど王都に戻るところでしたので、よろしければご案内しますよ」
サフィーヤ「まぁ、助かります。 お言葉に甘えさせていただきますわ」
グルーブ兵1「おい、大至急馬車をこちらに回せ」
グルーブ兵3「ハッ!只今!」
グルーブ兵1「ところで、お二人は王都の何処がお目当てですかな? とても物見遊山目当てには見えませんが」
サフィーヤ(随分と親切にしてくれると思ったら・・・。 どうやらわたくし達の正体、気付かれているようね)
サフィーヤ(それならいっそ、賭けてみてもいいかも)
サフィーヤ「ええ、実は折り入ってご相談がありますの」
サフィーヤ「国王陛下にお目通りを願えるかしら?」

〇神殿の広間
  グルーブ王国 王宮
グルーブ国王「──ワズィール(宰相)より話は聞いた」
グルーブ国王「そなた達がファジュルの アミーラ(王女)・サフィーヤと アミール(王子)・ザフィールか」
サフィーヤ「お初にお目に掛かります、陛下。 正式な手順を経ずに謁見を請うた無礼をお許しください」
ザフィール「国王陛下、はじめまして。 お会いできて光栄です」
グルーブ国王「此度の王都襲撃は災難であったな。 よくぞここまで逃げ遂せたな」
サフィーヤ「勿体なき言葉に存じます」
グルーブ国王「──して、そなた達の目的は如何ぞ?」
サフィーヤ「この度はわたくしの家族がこの地に渡っているのではないかと思い、探しに参りました」
サフィーヤ「陛下なら何かご存じなのではないか、と考えお目通りを願った次第でございます」
グルーブ国王「なるほど、良い勘をしているようだな、アミーラ」
グルーブ国王「実はそなた達の父君、我が盟友のバースィルはこの王宮にいる」
サフィーヤ「!」
グルーブ国王「ひと目くらい会ってやったらどうだ、我が盟友よ」
バースィル王「・・・まったく。 悪趣味なことをするな。我が友は」
ザフィール「父上!」
サフィーヤ「お父様・・・!」
バースィル王「サフィーヤ、そしてザフィール。 敵に囚われながらもよくぞここに辿り着いたな」
サフィーヤ「はい・・・! わたくしもザフィールも民に助けられながら懸命に逃げて参りました」
バースィル王「そうか。命懸けの思いでここまでやって来たというわけだな」
サフィーヤ「はい!」
バースィル王「ここまで道程を思うと気の毒ではあるが、サフィーヤよ」
サフィーヤ「はい」
バースィル王「今すぐにここを立ち去れ」
サフィーヤ「え・・・?」
バースィル王「私はこの地で同盟国の力を借り、我が王国を再興する」
バースィル王「その時にサフィーヤ、お前がここにいては邪魔なのだ」
サフィーヤ「何故です? わたくしでは王家復興のお役には立てないと?」
サフィーヤ「それに、ファジュルの地とそこに暮らす民たちはどうするおつもりなの? まさか、見放すおつもり・・・!?」
バースィル王「ファジュルの地は確かに惜しい。 だが、それよりも我が一族が王権を維持できる体制を整える方が重要だ」
バースィル王「それに比べればファジュルを捨てることなど些事に過ぎぬ」
サフィーヤ「そんな・・・!」
バースィル王「ところでサフィーヤ。 お前、この地まで順調に来られたことを不思議には思わなかったかね」
サフィーヤ「どういうことです?」
バースィル王「ふむ。どうやら気付かなかったらしいな」
グルーブ国王「アミーラ、実は我が国へアルネヴィアより至急の密書が届いているのだ」
サフィーヤ「!」
グルーブ国王「アルネヴィア国王がアミーラ、そなたの身を案じていてな。 そなたがこの地に訪れた際には保護の上、送還するよう求めてきたのだ」
バースィル王「引き換えに、グルーブの地にいる限りはこちらに追撃はしないことを提示してきている。 つまり──」
サフィーヤ「つまり、わたくしがこの地にいることはあの方に最初からお見通しだったと?」
バースィル王「ああ。 それどころか、親子の再会が叶うまでは秘密裏に手助けしてほしいとまで書いてある」
サフィーヤ「それで、わたくしをアルネヴィアの盾にすべくグルーブから追い返そうというのですか・・・?」
バースィル王「そうだ」
サフィーヤ「・・・そんな」
アムジャード王妃「サフィーヤ!」
サフィーヤ「お母様・・・」
アムジャード王妃「わたくしは言ったはずよ。 王女としての使命を果たせ、と」
サフィーヤ「お母様、教えてください。 知らない相手に身を預けることがわたくしの使命なの?」
アムジャード王妃「それが国を守るためならば、致し方ないことなのよ」
サフィーヤ「・・・」
グルーブ国王「話は済んだかね? さぁ、王女と王子のお帰りだ。 港まで送り届けてやれ」
ザフィール「父上、母上・・・!」
バースィル王「許せ、ザフィール。 サフィーヤとお前を共に引き渡すことが条件なのだ」
アムジャード王妃「お姉様の言うことを聞いて、異国の地でも元気に暮らすのよ」
ザフィール「・・・」
サフィーヤ「・・・ザフィール、行くわよ」
ザフィール「姉上・・・」
サフィーヤ「わたくし達にはもうアルネヴィアしか行く場所がないの」
ザフィール「・・・はい」

〇沖合
  船上
サフィーヤ(お父様はあくまで、ご自分が国王に復権することにしか興味がないのね)
サフィーヤ(じゃあ民たちは・・・ファジュルの民たちはどうなってしまうの)
サフィーヤ(ファジュルとアルネヴィアでは文化も制度も違う。 きっと民たちは困っているはずよ。 それに──)
ザフィール「ぐすん、ぐすん」
サフィーヤ(何よりわたくしは、思い出の詰まった故郷を諦めたくない)
サフィーヤ(決めたわ。 お父様にその気がないのなら──)
サフィーヤ(わたくしがこの手でファジュルを取り戻してやる!)
  つづく

次のエピソード:第3話

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