伊集院探偵事務所の日常

セーイチ

これが日常(脚本)

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〇keep out
頼子「ビバ!ミステリーーー!!」
頼子「待っていろ密室!掛かって来いダイイングメッセージ!震えて眠れ時刻表!」
頼子「名探偵、伊集院綾女様が、いずれ貴様等を纏めて暴いてくれようぞ!!」
頼子「世界の謎は全て綾女様の灰色の脳細胞により解き明かされるのだごぶぅはぁあ!!!!」

〇おしゃれな居間
綾女「ちょっと静かにして」
頼子「お、おぉ姫よ、いきなり口内にフランクフルト投入とは」
頼子「ワタクシ、何だかイケない気分になってひはひはふ(もぐもぐ)」
綾女「・・・」
頼子「はっ!?」
頼子「勘違いなさいますな!私の心はとっくの昔に姫に占領されておりますから!」
頼子「私の心は姫の物、私の体も姫の物です」
綾女「誤解を招く発言はヤメテ」
頼子「?(もぐもぐ)」
綾女「・・・はぁ」
  私の名は伊集院綾女
  伊集院探偵事務所の所長だ
  世界的な名探偵だった父の跡を継いで、学生ながら一国一城の主となった
  今日も午前中に依頼をこなしてきたばかり
綾女「今日の報告書が書き終わるまで静かにしてて」
頼子「了解です!」
頼子「いや~今日も姫の推理は冴えてましたな」
頼子「ワタクシ感動しました」
綾女「私の話聞いてた?」
  私の前でクネクネと悶えているのは、父の元秘書
  名を遠田頼子
  見た通り私に好意を持っているが、その濃度がヤバい
  私を姫と呼ぶわ、四六時中つきまとうわ
  私を隠し撮りしてスマホの待ち受けにするわ、私の洗濯物の匂いを嗅ぐわ
  10年来の知人じゃなかったらとっくに通報している
  容姿端麗なだけに非常に残念な人だ
綾女「・・・よし」
綾女「はい、報告書出来たよ」
頼子「お疲れ様です、後はお任せを」

〇おしゃれな居間
  私は緊張感をリセットするため、冷めきったコーヒーカップを口に運ぶ
綾女「私が事務所の所長に就任して半年か」
綾女「少しは所長らしくなったのかなぁ」
頼子「姫、ご休憩中に失礼します」
綾女「何?」
頼子「次の依頼についてなのですが・・・」
綾女「もう次の話?」
頼子「姫の力を借りたいクライアントは後を絶ちませんので」
綾女「・・・それで、どんな依頼なの?」
頼子「はい、いわゆる密室殺人です」
綾女「・・・」
綾女「・・・あのさ、何で現代日本で密室殺人の依頼が探偵事務所に届くの?」
頼子「名探偵とは謎の方から寄って来るモノなのです」
  ツッコんでも無駄らしい
綾女「・・・詳細は?」
頼子「それはクライアントから直接お聞きください」
綾女「来てるの?」
頼子「はい、緊急を要するとの事なので」
  その時、勢い良く扉が開き誰かが飛び込んで来た

〇おしゃれな居間
安奈「助けて探偵さん!」
綾女「ちょ!ちょっと、落ち着いて!」
  私は息の荒い少女をなだめる
綾女「私は伊集院綾女、ココの所長をしてます」
綾女「アナタは?」
安奈「私、倉井安奈です・・・」
安奈「事件を解決してほしくて・・・」
綾女「まず事件の話を聞かせてくれるかな?」
綾女「密室殺人って聞いたけど・・・」
安奈「うん・・・」

〇駅のホーム
安奈「事件は走っている寝台列車で起こったの」
綾女「なるほど、閉鎖空間なわけね」
安奈「それでね、遺体のあった個室には内側から掛け金が掛かってたの」
綾女「それで密室なんだ」
安奈「被害者はね、お風呂に逆立ちした状態で発見されたの」
綾女「死因は溺死なのかな?」
綾女「容疑者は居るの?」
安奈「車内にね、黒マントと黒いアイマスクをしたタキシード姿の男の人が居たの」
綾女「ふむふむ、黒マントに黒いアイマスク・・・」
綾女「・・・ん?」
安奈「それでね、被害者の日記には『まだらのヒモ』って書いてあったの」
綾女「・・・」
綾女「ちょっとゴメンなさい」

〇おしゃれな居間
綾女「頼子さん」
頼子「はい、何でしょう?」
綾女「アノ子の話、どっかで聞いた事あるんだけど・・・」
頼子「奇遇ですね、ワタクシもナゼかデジャヴを感じております」
綾女「・・・」
綾女「あの~、一つ聞いて良い?」
安奈「うん良いよ」
綾女「コレって何の話なのかな?」
安奈「私が書いてる小説の話」
安奈「過去の名作をリスペクトした完全オリジナル推理小説なの」
綾女「・・・」
安奈「でも締め切りが近いのにオチが決まらなくて」
安奈「お願い!助けて!」
綾女「・・・えっと」
綾女「・・・」
綾女「れ、列車の乗客が全員共犯だった・・・とか」
安奈「・・・」
安奈「それだ!」
安奈「ありがとう!お姉ちゃん!」
綾女「あははは・・・」
頼子「では依頼完了ですね、お支払いをお願いします」
安奈「はい、どうぞ!」
頼子「10円ですね、確かに頂きました」
安奈「それじゃ、私帰るね」
安奈「早く続き書かなきゃ!」
頼子「お疲れさまでした、姫」
綾女「・・・はぁ」
頼子「本当にお疲れですね」
綾女「精神的にね・・・」
綾女「因みに今日の売り上げは?」
頼子「今日は『迷いハムスター探し』の報酬が3000円でしたので、3010円ですね」
綾女「そう、昨日よりはマシだね」
綾女「・・・」
頼子「・・・大丈夫ですよ」
頼子「姫なら必ずお父上を超える名探偵に成れますとも」
綾女「・・・頼子さん」
頼子「・・・姫」
綾女「・・・」
綾女「・・・何でついてくるんですか?」
頼子「ワタクシと姫は一心同体ですから」
綾女「私がどこへ行こうとしているかわかってます?」
頼子「はい、おトイレですよn」
綾女「まったく・・・」
綾女「・・・」
綾女「アレは見間違いだったのかなぁ・・・」

〇おしゃれな居間
  私の父は人望が厚かった
  父が亡くなった後、職員が次々に退職したのもそれを物語っている
  その時の私は、たった一人の家族を失った事で毎日泣き明かしていた
  残された事務所の事なんて考えてもいなかった
  そんなある日、なんとなく父の事務所を訪れると・・・
  たった一人で事務所を切り盛りする頼子さんが居た
  一人で事務所を支えようと奮闘する彼女の姿に、不思議と胸が熱くなった事を覚えている
  その後、気が付けば事務所のアルバイトに応募していた

〇おしゃれな居間
綾女「私は上がるので、寝る時はベットで寝て下さいね」
頼子「な、ならば添い寝を・・・」
綾女「お断りしま〜す」
頼子「ひ、姫ぇ・・・」
  こうして伊集院探偵事務所には、何時も通りの一日が過ぎて行く
  私が父の様な名探偵と呼ばれる日は、まだまだ遠そうだ

コメント

  • 頼子が美女で綾女が美少女だからなんとなく微笑ましく見てられるけど、ホームズにウフウフと色仕掛けするワトソンを想像したらウプッとなりました。パクリじゃなくてオマージュだと言い張って強引に完成させた安奈ちゃんの小説も読んでみたい。

  • 事務所内の可愛らしい日常風景に綾女さんの想いがスパイスとして効いていて、読み応え充分でした!頼子さんがいろんな意味で活躍する姿をもっと見たくなりますねw

  • 残念美人な助手…いいですね

    今回は軽い事件(?)でしたが、重めの事件ではその本当の力が発揮されることを想像するとアツいです。

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