魔剣ビクトリア

ヒストジオいなお

魔剣ビクトリア(脚本)

魔剣ビクトリア

ヒストジオいなお

今すぐ読む

魔剣ビクトリア
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇中東の街
  「魔剣ビクトリア」の噂を聞いて、
  俺はこの街にたどりついた。
  「手にすれば誰でも剣の達人になれる」
  そう言われた『魔剣』。
  その剣の名は、ビクトリア。
俺「・・・俺かい? 俺は」
俺「最強の剣士を目指して 修行の旅を続ける男だ」
  俺は散々と探し回り、ついに、
  魔剣を所有している、という
  
  大貴族の館を突き止めた。

〇古い洋館
  その魔剣が欲しかった。
  全財産の半分を注ぎ込んで、
  
  使用人を買収した。
使用人「・・・良いですか、見るだけですぞ」
  使用人は、
  か細い声で、こう言った。

〇地下室
  新月の夜、俺はその使用人の案内で
  館に忍び込み、宝物庫へ向かう。
  使用人は、宝物庫の壁を探り、
  隠されていたレバーを引いた。
  まるで竜の口のように
  地下への入り口が現れた。
  俺は、危険なものを感じた。
使用人「・・・やめておいても、ようございますよ」
  使用人の言葉が、俺の背を押す。
  俺は、闇へと足を踏み入れた。

〇黒背景
  階段を降りる俺たちの足元を、
  ろうそくの火だけがか細く照らす。
俺「・・・なぜ、ビクトリアという名前なんだ?」
使用人「おや、ご存じない?」
  使用人は、静かに言った。
使用人「剣の持ち主の名前です」
  使用人は、剣の由来を語り始めた。

〇古い洋館
  ビクトリアは、大貴族の娘だった。
  彼女には、双子の兄がいた。
  彼の名前は、ビクトル。
  ビクトルは、幼少の頃から剣の達人。
  彼女は、兄を自慢に思っていた。
ビクトリア「お兄ちゃんなら、次の剣術大会、 絶対に優勝できるよ!」
ビクトリア「お兄ちゃんにかなう者はいないわ!」
  しかし、妹の激励を聞いても
  なぜか彼は、笑うだけだった。

〇闇の闘技場
  ・・・剣術大会が近づいたある日、
  彼は病にかかり、高熱を出した。
双子の父親「これでは、大会に出す訳にはいかんな」
  彼らの父親は、悩んだ。
  武門の大貴族としての面子がある。
  不参加は、だめだ。
双子の父親「よし、替え玉で、参加させよう。 幸いに、そっくりの子がいるではないか」
  ビクトリアは、驚いて言った。
ビクトリア「大勢の人前で剣で戦うなんて、 私にできるわけがございません!」
  だが父は、威厳を持って説得する。
双子の父親「なに、しばらく突っ立っておいて、 頃合いを見て、わざと負ければいい」
双子の父親「参加することに、意義があるのだ」
  父は、宮廷での政治にのみ熱心で、
  子どもたちの剣の腕を全く知らなかった。
双子の父親「ともかく、これは決定だ!」
双子の父親「お前はビクトルという名前で変装し、 兄の代わりに大会に出ろ」

〇地下室への扉
  ビクトリアは、ビクトルに相談した。
  病がうつってはいけないので
  ドア越しに。
ビクトリア「お兄ちゃん、どうしよう?」
  ビクトルは、ドアの向こうで言った。
ビクトル「・・・練習場の一番奥に、 置いてある剣は、わかる?」
ビクトル「あの剣には、魔法がかかっているんだ。 あれを、使うといい」
ビクトリア「魔法・・・?」
ビクトル「そう、魔剣さ。 それを手にすれば、剣の達人だ」
ビクトル「・・・ビクトリア、 代わりに大会に出てくれないか?」

〇闇の闘技場
  ・・・剣術大会の当日。
  ビクトリアはビクトルと名を変え、
  男装して試合に臨んだ。
  彼女の手には、魔剣がある。
  彼女は、ビクトルと一緒に戦っている。
一回戦の相手「なんだ、女みたいなやつだな。 お前なんか十秒で片付けてやる!」
  相手は、最初から
  ビクトリアをみくびっていた。
  試合開始。彼女は猛然と走った。
  あっという間に、彼女の一撃が入った。
  勝った。十秒も、かからなかった。
男装したビクトリア「・・・これが、魔剣の力?!」
  彼女は自分が勝ったのが、信じられない。

〇闘技場
  次の試合も、その次の試合も、
  一分もかからずに、勝利した。
  勝ち進むにつれて、彼女は次第に
  自信がついてきた。
  その彼女を、見ている男がいる。
  ビクトルのライバル、優勝候補だ。
  家同士の仲が悪く、対抗意識も強かった。
優勝候補「・・・ビクトルの奴め、さらに腕を上げたな」
  ついに、ビクトリアは
  その彼と決勝を戦うことになった。
  相手の執事が、彼にささやく。
執事「どうやら奴は、魔剣を 持っているようでございます」
  執事は主人のために、ビクトリアの
  家の使用人から情報を集めていた。
優勝候補「その剣、何とかできないか?」
  執事は、にやりと笑った。
執事「盗んで隠しておきました」
  執事は、不敵に笑った。

〇ゴシック
  一方、ビクトリアは、焦っていた。
男装したビクトリア「魔剣が、ない?!」
男装したビクトリア「あの剣がないと、私は弱い。 弱いんだ・・・。戦えない・・・」
  だが、決勝は、もうすぐ始まる。
  その時、ビクトリアは、
  ビクトルの言葉を不意に思い出した。

〇美しい草原
ビクトル「剣は、道具に過ぎないよ」
ビクトル「戦うのは、自分なのだから」

〇闘技場
  ・・・彼女は、前に向き直り
  試合場へと向かった。
  相手は、
  猛然と向かってきた。
  剣が、交錯した。
  倒れたのは・・・
  相手のほうだった。
  ビクトリアの一撃が
  相手に叩き込まれたのだった。
男装したビクトリア「・・・勝った・・・!」

〇地下室
  ・・・俺は「魔剣ビクトリア」を、見た。
  ぼろぼろの、棒だった。
  剣術の練習用の・・・。
俺「なんだ、これは・・・!」
  使用人は、得たり顔で言う。
使用人「ビクトリア様は、ビクトル様の 剣のお相手を、ずっとされていました」
使用人「そのため、剣の腕前は ビクトル様と同じ、いや、」
使用人「それ以上になっていたのです。 彼女自身はそのことを知らなかった」
  俺は叫んだ。
俺「・・・魔剣ではないじゃないか!」
  使用人は、おごそかに言った。

〇雷
使用人「・・・」
使用人「ビクトリア様は、」
使用人「たとえ棒を使ったとしても、」
使用人「負けん!」
俺「・・・」

コメント

  • 最後がよかったです。(笑)そうなる?!と笑ってしまいました。私も魔剣があったら欲しいなとか色々思い巡らせながら楽しく読ませて頂きました。

  • 最後のオチすごいですね!笑
    話の内容とか全部持って行っちゃいましたよ!
    でもまあ楽して強くなる方法なんてないですよね。
    使用人もきっとそれを伝えたかったんだと…思いますけど、ひょっとしたらオチが言いたかっただけなのかもしれない。

  • ダジャレのオチは良かったです。
    結局、何事も自分で頑張ってできるようにならないといけないということですね。
    お話が綺麗にまとまっててスムーズに読めました。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ