あなたはわたしが連れていきます。

saburou.g

エピソード2(脚本)

あなたはわたしが連れていきます。

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〇黒

〇城の廊下
カルム「ねえ。 キミは本当にアイシャなの?」
シュリ「えっ・・・・・・」
カルム「・・・・・・」
カルム「・・・・・・ごめん。冗談だよ」
カルム「キミが変な事を言うから、俺も言ってみただけ」
カルム「ただ、冗談抜きで、今日は無理をしないでくれよ?」
カルム「少し散歩するくらいなら構わないけれど、 くれぐれも大事にするように」
シュリ「う、うん・・・・・・。 ありがとう」
カルム「・・・・・・。それと」
カルム「これからも、名前で呼んでくれたら── うれしい」
シュリ「・・・・・・」
シュリ(怖かった・・・・・・)
シュリ(でも、あれが1年前のカルムだなんて、 やっぱり信じられない)
シュリ(――この先彼に、何が起きるんだろう)
シュリ(いったい何が、彼をあそこまで変えてしまうのかな・・・・・・)

〇可愛らしいホテルの一室
シュリ(・・・・・・)

〇黒
シュリ(ただ、今のやりとりで、ふたつ分かった事がある)
シュリ(まずひとつは、かつてアイシャとカルムが、 多分そこそこ仲良しだったって事)
(ただの使用人のアイシャに対して、一国の王があそこまで心配するなんて普通じゃないし・・・・・・)

〇可愛らしいホテルの一室
シュリ(そして、もうひとつ)
シュリ(あれだけ簡単に近づけるのなら、いずれ必ずカルムを殺せるチャンスが来るって事)
シュリ(・・・・・・でも、だからと言って、 もたもたはしていられない)
シュリ(わたし自身、いつまでアイシャの身体の中にいられるのか分からないしね)

〇城の廊下
シュリ(・・・・・・慌てずに。 それでも出来るだけ早く、あの男を殺さないと)
シュリ(そしてそれまで、絶対に怪しまれないようにしないとね)
兵士「お、アイシャ。 おはよう」
シュリ「・・・・・・」
シュリ「あら、ごきげんようございませ」
兵士「・・・・・・ど、どうした? そのしゃべり方」
兵士「なんか、いつもと雰囲気が・・・・・・」
シュリ「あら、そういうあなたは、いつもよりお素敵ですわよ?」
シュリ「おほ、おほほほほー・・・・・・」
兵士「・・・・・・???」
シュリ「・・・・・・」
シュリ(・・・・・・敬語って苦手)
シュリ(思えば、カルムにも普通にタメ口で話しちゃってたし)
シュリ(変な疑いをかけられないように、気をつけないと・・・・・・)

〇黒

〇華やかな裏庭
シュリ「わあ・・・・・・」
シュリ(きれいな庭・・・・・・。 アイシャも、ここを散歩したりしたのかな)
シュリ(花もきれいで、あたたかくて。 とても、いい気持ち・・・・・・)
シュリ「・・・・・・・・・・・・」
シュリ「・・・・・・」
シュリ(アイシャ・・・・・・)

〇黒

〇黒
カルム「・・・・・・ねえ、アイシャ」
カルム「ヒトって、変わる事が出来ると思う?」

〇城壁
アイシャ「どうしたんですか、急に」
アイシャ「これからこの国を先導しなければいけない立場のあなたが、そんな顔をしていていいんですか?」
カルム「・・・・・・」
アイシャ「・・・・・・」
アイシャ「大丈夫・・・・・・?」
カルム「・・・・・・。 不安なんだ」
カルム「たまらなく、こわいんだ」
カルム「俺には、父のような器量はない」
カルム「民の期待に応えるだけの力はないし、 今後それが身につくかどうかも分からない」
カルム「俺の力不足のせいで、この国が壊れてしまうかもしれない」
カルム「そう考えると――この身が、押しつぶされそうになるんだ」
アイシャ「・・・・・・」
アイシャ「ヒトは、とても小さい生き物。 背負えるものには、限界があるわ」
アイシャ「だからヒトは繋がって、互いに支え合うの」
アイシャ「あなたは国の王だけれど、国そのものではない」
アイシャ「あなたが民を支えて、民があなたを支えて。 そうして、この国は出来てる」
アイシャ「あなたはひとりじゃない。 まわりに、たくさんのヒトがいる」
アイシャ「わたしだっている。 それを、忘れないで」
カルム「アイシャ・・・・・・」
カルム「ぐ・・・・・・」
アイシャ「そんな顔しないで・・・・・・」
アイシャ「あんな事があって・・・・・・あなたが誰よりつらい思いをした事は、分かってる」
アイシャ「でも、自分を責めないで。 そして、あなたはあなたのままでいて・・・・・・」
カルム「アイシャ・・・・・・」
アイシャ「ん・・・・・・」

〇黒
シュリ「びゃーーーーっっっ!!」

〇華やかな裏庭
シュリ「・・・・・・はあ・・・・・・ はあ・・・・・・。 びっくりした・・・・・・」
シュリ「いつの間にか、うたた寝しちゃってたんだ、わたし」
シュリ(・・・・・・。 それにしても、なんて夢・・・・・・)
シュリ(突然、アイシャとカルムが抱き合っ・・・・・・)
シュリ「・・・・・・」
シュリ(いや。 ただの夢にしては、やけにリアルだった気がする)
シュリ(もしかしたら、アイシャの中に残っていた記憶を見てしまったのかな?)
シュリ(だとしたら、なんか申し訳ない事した気分・・・・・・)
シュリ(・・・・・・でも。 もしそれが事実なら、わたしの予想以上にアイシャとカルムは親密な関係だったって事だよね)
シュリ(ならどうして、アイシャの事を・・・・・・)
シュリ(・・・・・・やっぱり、絶対に許せないよ・・・・・・)
???「──あ! アイシャ!!」
リラ「やっと見つけた!」
リラ「こんなところにいたの? 心配したんだからね」
リラ「あんた、昼食の時間になっても食堂に顔出さないんだもん」
シュリ「ご、ごめん・・・・・・。 ごはんの事なんて、全然頭になかったよ」
リラ「もう・・・・・・。 はい、これ」
シュリ「わ、おいしそう・・・・・・」
シュリ「わざわざ持ってきてくれたの?」
リラ「ん。 食欲ないかもしれないけれど、少しは食べなきゃだめよ」
シュリ「ありがとう・・・・・・。 いただきます」
シュリ「・・・・・・」
シュリ「おいしい・・・・・・」
シュリ「すごく、おいしいよ! ありがとう、リラちゃん」
リラ「・・・・・・」
リラ「ねえ、アイシャ。 正直に答えてくれる?」
リラ「あんた、どうしちゃったの? いつもと口調が全然違うし、わけ分かんない」
リラ「ふざけてるの? そんな調子で、明日から本当に仕事が出来るの?」
リラ「何か隠している事があるなら言いなさい」
シュリ(仕事・・・・・・そっか)
シュリ(あんまり深く考えてなかったけど、わたしは明日からアイシャとして生活をしなくちゃいけないんだ)
シュリ(勝手が分からない状態で、すべての仕事をこなすのは、さすがに厳しいよね・・・・・・)
シュリ(でも、本当の事を言ったって信じてもらえないだろうし)
シュリ(ましてや、暗殺を計画しているなんて事、絶対に言えないし)
シュリ(・・・・・・。 なら・・・・・・)
シュリ「・・・・・・リラちゃん。 信じてもらえないかもしれないけれど」
シュリ「実はわたし、今朝から記憶喪失みたいなの」
リラ「はあ? 本気で言ってんの?」
シュリ「うん。 特にここ最近の事は曖昧で、このお城での出来事に関しては、全然思い出せないの」
シュリ「申しわけないけれど、リラちゃんの事も」
リラ「そんな事、急に言われても・・・・・・」
シュリ「本当の事なの。 でもわたし、お仕事をクビになりたくはないから、誰にも言い出せなくて」
シュリ「だからリラちゃん、お願い。 このお城の事とか、仕事の事とか、いろいろ教えて欲しいの」
シュリ「みんなには、内緒で・・・・・・。 でもわたし、一生懸命がんばるから」
シュリ(ごめんね、リラちゃん。ウソついて)
シュリ(でも半分は事実みたいなものだし、許してね)
リラ「・・・・・・」
リラ「もう1度訊くけど。 それは本当の事なのね?」
シュリ「うん」
リラ「・・・・・・」
リラ「──分かったわ。 協力してあげる」
リラ「アイシャには、いつもいろいろ助けてもらってるしね」
シュリ「リラちゃん・・・・・・。 ありがとう」
リラ「ただし、サポートすると言っても限界はあるわ」
リラ「常に一緒にいられるとは限らないし、 もしあたしの知らないところで何か問題が起きたとしても、助けられないからね」
シュリ「それでも、充分だよ 本当にありがとう」
シュリ「この恩は、いつか必ず返すからね」
リラ「ん。じゃあ、さっそく行くわよ」
リラ「夕食まではまだ時間があるから、それまでに1日の流れとかを教えてあげる。 着いてきて」
シュリ「うん!」
シュリ(リラちゃん・・・・・・やさしそうなコで良かった)
シュリ(・・・・・・でも、気のせいかな?)
シュリ(わたしが記憶喪失だ、って言った時、なんだかうれしそうな顔をしていたような・・・・・・)
シュリ(ただの、見間違いかな・・・・・・)

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