憎しみの末に待ち受けているもの

ゆーた

第4話「羽村りん」(脚本)

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  第4話「羽村りん」

  ○月○日
  明日は大学初日。
  今まではずっとすずと一緒だったから、ひとりで友達ができるか不安・・・

〇黒
  7年前──

〇大教室
マリコ「・・・隣の席、空いてますか?」
羽村りん「はい、どうぞ──」
マリコ「ありがとう──あなたも一年生?」
羽村りん「はい・・・! 文学部の羽村りんです」
マリコ「わたし、経済学一年の綿矢マリコ」
マリコ「よろしくね」
羽村りん「よろしく──」

〇大学の広場
マリコ「りんはもうサークル決めた?」
羽村りん「まだだよ。マリコちゃんは?」
マリコ「マリコでいいよ。わたしは旅行サークルに入ろうかと思ってるんだ」
マリコ「よかったら一緒に見学行かない?」
羽村りん「うん、行く!」
  ○月○日
  大学でマリコという友達ができた。
  マリコは可愛くて優しい。
  これからも仲良くやっていけそう。

〇テーブル席
シュン「・・・りん、誕生日おめでとう!!」
羽村りん「わたしが欲しかったネックレスだ!!」
羽村りん「嬉しい、ありがとう──!!」
シュン「喜んでくれてよかった」
羽村りん「でもこれ、高かったでしょ・・・」
シュン「おれたち付き合って3年だろ?」
シュン「これまでの感謝の気持ちを込めて奮発した」
羽村りん「・・・シュン」
シュン「今までありがとう、これからもよろしくな」
羽村りん「こちらこそ。ネックレス大事にするね!!」
  ○月○日
  シュンから欲しかったネックレスを貰った。
  一生大切にするね。
  ありがとう、シュン。
  最近は恋人、友人、勉強、すべてが怖いくらい順調だ。
  これからも周りに感謝を忘れないようにしなければ。

〇大学の広場
  ○月○日
  急にマリコが話してくれなくなった。
  わたしが何かしたのだろうか・・・。
  また前みたいにマリコと仲良くしたい。
女子学生1「これからみんなでクレープ食べに行くんだけど、マリコも行く?」
マリコ「クレープ食べたい! 行く!」
羽村りん「・・・マリコ」
マリコ「・・・行こう」
羽村りん「待ってよ、マリコ」
羽村りん「なんで無視するの?」
マリコ「・・・」
羽村りん「わたしマリコに何かした?」
羽村りん「したなら謝る。だから前みたいに──」
マリコ「じゃあ謝って。『生きててごめんなさい』って」
羽村りん「・・・え」
マリコ「わたし、最初からあんたのこと嫌いなのよ」
マリコ「あんたみたいな人間が生きてるだけでイライラする」
羽村りん「・・・だったらなんで、あのときわたしに講義室で声かけたの?」
マリコ「・・・」
マリコ「可愛いネックレスね。それちょうだい」
羽村りん「・・・ダメ、これはシュンに貰った大切なものなの」
マリコ「だったら尚更欲しくなった」
  マリコはりんからネックレスを奪い取った。
羽村りん「お願い、返して──!!」
マリコ「わたしがあのとき声をかけたのはね」
マリコ「あんたの絶望する顔を間近で見たかったからよ」
羽村りん「・・・」

〇川沿いの公園
羽村りん「シュン、お待たせ。遅れてごめん・・・」
シュン「全然大丈夫、俺も今来たとこだから」
シュン「あれ・・・今日ネックレスしてないね」
羽村りん「・・・シュン、ごめん」
羽村りん「シュンに貰ったネックレス、失くしちゃったの」
シュン「・・・そっか」
羽村りん「せっかくプレゼントしてくれたのに、本当にごめんなさい・・・」
シュン「そんなに落ち込むことないよ」
羽村りん「・・・でも、宝物だったから」
シュン「またプレゼントするから、元気だして」
シュン「ほら、美味しいものでも食べに行こ!」
羽村りん「シュン・・・いつもありがとう」
シュン「どうしたの、急に改まって」
羽村りん「友達だと思ってた子にずっと嫌われてたって最近知って・・・」
羽村りん「それで落ち込んでたんだ・・・」
羽村りん「でも、わたしにはシュンがいる 元気出た、ありがとう」
シュン「そうだよ、りんにはおれがいる」
羽村りん「・・・うん!」
  ○月○日
  改めてシュンの存在の大きさに気づいた。
  友達に傷つけられても、大事なものをとられても、シュンさえいればいい。
  ありがとう。
  大好きだよ、シュン。
マリコ「・・・」

〇大学の広場
羽村りん「話って何・・・?」
シュン「・・・別れたいんだ」
羽村りん「どうして急に? 冗談だよね・・・?」
羽村りん「そのネックレス・・・どうしてシュンが持ってるの──」
シュン「どうして失くしたって嘘ついたの?」
羽村りん「それは・・・」
羽村りん「・・・マリコ?」
マリコ「そのネックレス、要らないからわたしにくれたんだよね?」
羽村りん「違う!・・・マリコがわたしのネックレスを」
シュン「マリコから色々聞いたよ」
シュン「おれの他にも男がいるんだろ? 彼氏が居ても誰とだって平気で寝るんだ」
羽村りん「そんなの嘘に決まってるでしょ!」
羽村りん「どうしてマリコの言葉を信じるの? わたしを信じてよ──!!」
シュン「・・・」
羽村りん「そのネックレスはマリコに無理矢理奪われたの!」
シュン「じゃあ、どうして最初にそう言わなかったの?」
羽村りん「・・・それは──」
シュン「おれ、りんのこと信じられなくなっちゃった」
羽村りん「・・・ごめんね、シュン。嘘ついたことは謝る」
羽村りん「けど、わたし別れたくないよ──!!」
羽村りん「マリコを信じないで、わたしを信じてほしい──」
マリコ「シュンくんはわたしと付き合うことになったから」
羽村りん「・・・え────!?」
マリコ「シュンくんはあなたより私のほうがふさわしいと思う」
シュン「さよなら、りん──」
羽村りん「待ってよ、行かないでシュン──!!」
羽村りん「・・・・・・」
マリコ「あはは────」
マリコ「その顔よ、わたしはその顔が見たかったの────」
マリコ「もっと見せてよ、ほら、もっと見せて──」
羽村りん「・・・」

〇ビルの屋上
  ○月○日
  もうわたしには何も残っていない。
  わたしは生きる価値のない人間なのかもしれない。
  生きててごめんなさい。
  お父さん、お母さん、すず・・・先に逝くことを許してください。

〇黒

  現在

〇玄関内
白木サチ「あなたはわたしの一番大切なものを奪った──」
白木サチ「だからわたしもあなたの一番大切なものを奪ったの────」
白木サチ「ねえ、どんな気分?」
高山マリコ「わからない・・・どうして死んだはずのあんたが生きてるの──?」
白木サチ「あなたに復讐しなきゃあの世に行けないから」
高山マリコ「そんなの説明になってない──!!」
白木サチ「あなたの絶望する顔がもっと見たいの」
白木サチ「もっと見せてよ、ほら、もっと──」
高山マリコ「・・・ちょっと、何するつもり?」
白木サチ「決まってるじゃない」
白木サチ「殺されたわたしの気持ちも味わって欲しいのよ」
白木サチ「自殺はできないだろうから、わたしが殺してあげるね」
高山マリコ「わたしは殺してない! あんたが勝手に死んだんでしょ!」
白木サチ「・・・」
高山マリコ「まさか自殺するなんて思ってなかった・・・」
白木サチ「言いたいことはそれで全部? じゃあ──」
高山マリコ「お願い殺さないで──!! なんでもするから、許して、許してください、お願いします、お願いします許してください」
白木サチ「あはは──いい表情ね」
白木サチ「またあの世で仲良くしようね、マリコ」
高山マリコ「やめて────!!」
???「待ちなさい!!」
五味警部「ナイフを捨てなさい」
白木サチ「邪魔しないで」
五味警部「こんなことしても何も解決しませんよ」
五味警部「”羽村すず”さん」
白木サチ「・・・」
高山マリコ「どういうこと? あなたはりんじゃ──」
五味警部「彼女は羽村すず──りんさんの双子のお姉さんです」
白木サチ「・・・」

  つづく

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