火の玉ふわり、起業します

坂井とーが

火の玉ふわり、起業します(脚本)

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〇日本庭園
???「なんじゃとー!!?」

〇屋敷の大広間
ふわり「私が、妖怪祓いをクビ!? どういうことじゃ!?」
当主「すまない。色々と事情があってな」
ふわり「いやいや、納得できるものか!」

〇体育館の舞台
ふわり「夜の学校に出た土蜘蛛を退治したときも」

〇荒廃したショッピングモールの中
ふわり「廃墟にわいた悪霊を祓ったときも」

〇屋敷の大広間
ふわり「私、大活躍だったじゃん!」
当主「しかし、何かと世論がうるさくてな」

〇屋敷の門
人間「妖怪の低賃金労働、はんたーい!」
人間「妖怪に自由と自立を!」

〇屋敷の大広間
ふわり「なぜ部外者が声高に叫ぶ?」
ふわり「私は毎日たらふくスイーツを食べて、野良よりよほどいい生活をしているのだが!?」
当主「時代が変わったんだ。わかってくれ・・・」

〇寂れたドライブイン
ふわり「野良になってしまった・・・」
ふわり「おのれ、人間どもめ。 妖怪祓いは好きでやっていたというのに」
ふわり「・・・野宿は嫌じゃ」
ふわり「こうなったら、新しい仕事を探さねば!」

〇銀閣寺
ふわり「ふっふっふ。私は火の玉」
ふわり「火を扱えれば、就職先には困らないと聞く」
ふわり「頼もう!!」
僧侶「どうかなさいましたか?」
ふわり「火の番の仕事を探しているのじゃ」
ふわり「私は火の玉のふわり」
ふわり「石灯籠の明かりから妖怪祓いまで、なんでもできるぞ!」
僧侶「申し訳ありませんが、今は妖怪の方を雇えないのです」
ふわり「なんじゃと!?」
僧侶「妖怪雇用の法律はまだ不十分ですし」
僧侶「それに、妖怪が怖いというクレームもありますから」
僧侶「火の玉の妖怪でしたら、沼地などで静かに暮らされてはいかがでしょう」
ふわり「嫌じゃ嫌じゃ! 屋根のある生活を今さら手放せるものか!」
僧侶「でしたら起業なさるのがよろしいかと。 妖怪の起業には補助金が出るそうです」
ふわり「おお、その手があったか!」

〇たこ焼き屋

〇たこ焼き屋の厨房
ふわり「ふっふっふ。私は火の玉」
ふわり「妖術を使えば、『こーねつひ』とやらをタダにできるのじゃ!」
ふわり「ん?」
ふわり「けほっ、けほっ」
ふわり「もしや、火力が強すぎるとよくないのか」
ふわり「ダメじゃこりゃ・・・」
ふわり「起業とは難しいものじゃな。 店は畳むか。補助金も返して──」
ふわり「ん・・・?」
ふわり「これ、赤字出したら借金残るやつじゃん!」

〇墓石
ふわり「はぁ。今日から野宿か。 あたたかい布団が恋しいのぅ・・・」
ふわり「ん?」
ふわり「誰じゃ?」
ふわり「お主は・・・」
ふわり「もしや、すずではないか!?」
すず「お久しぶりです、ふわりちゃん」
ふわり「こんな時間に珍しいな。 飼い主が心配しないのか?」
すず「それが、彼女は先日亡くなってしまって・・・」

〇寂れた村
ふわり「なんと、あの子が──」

〇墓石
すず「子や孫やひ孫に囲まれた、幸せな最期でした」
すず「でも、すずは追い出されてしまって・・・」
ふわり「そうじゃったか。 お互い、宿なしになってしまったな」
すず「ということは、ふわりちゃんも!?」
ふわり「時代の流れでクビになった。 起業しようにも難儀しているのじゃ」
すず「起業って、会社を作ることですよね?」
ふわり「よくわからないが、そうらしいぞ」
すず「だったら、すず、ふわりちゃんの会社で働きたいです!」
ふわり「なんと! 私ひとりでも大変なのに、社員を抱えるなど・・・」
ふわり「いや、待てよ。頭数が増えたら、新しいことができるかもしれん」
すず「すず、がんばります!」
ふわり「わかった、お主を雇ってやろう! 私に付いてくるのじゃ!」
すず「やった! 嬉しいです!」
ふわり「では、いろんな特技を持つ者を集めよう」
ふわり「私が社長じゃ!」

〇学校のプール

〇埋立地

〇空

〇お化け屋敷
ふわり「よし、メンバーはそろったな」
すず「それで、いったい何をするのですか?」
ふわり「聞いて驚け。補助金を使って、立派な施設を買ったのじゃ!」

〇荒廃した遊園地
すず「立派というか、ボロボロです・・・!」
ふわり「ボロイのは仕方がない。 そこはまぁ、夜になれば──」

〇黒

〇遊園地の広場
ふわり「妖術でどうにでも誤魔化せるのじゃ!」
すず「わぁ・・・」
すず「ふわりちゃん、すごいです!」
ふわり「そうと決まれば」
ふわり「河童は水車の要領で観覧車を」
ふわり「鎌鼬は風で押してジェットコースターを」
ふわり「馬男は走ってメリーゴーランドを」
ふわり「すずは氷でコーヒーカップを滑らせてくれ」
ふわり「さっそく営業開始じゃ!」
「おおーっ!」

〇荒廃した遊園地
すず「お客さん、来ませんね・・・」
ふわり「なぜじゃ? 何が悪かったのじゃ?」
ふわり「ん? これは──」

〇SNSの画面
「最近オープンした妖怪の遊園地ってどう?」
「子どもは行きたがってるけど、夜じゃねぇ」
「近くにある大きい遊園地の方が楽しい」

〇荒廃した遊園地
ふわり「競合他社じゃと!?」
ふわり「このままでは、借金を抱えて経営破綻・・・」
ふわり「商売とは、なんと難しいものか」
ふわり「こうなったらもう、夜逃げするしか・・・」
すず「無責任なこと言わないでください!!」
すず「すずたち、ふわりちゃんを信じて付いてきたんですよ!」
すず「ふわりちゃんが逃げ出したら、みんな帰るところがなくなってしまいます・・・」
ふわり「そうじゃ。私はもう、ひとりではない」
ふわり「責任・・・」
ふわり「──責任か」
ふわり「よし、作戦を立て直そう!」
ふわり「馬男、ネットの書き込みをよく見せてくれ」
ふわり「妖術で姿を誤魔化せるのは夜だけじゃ。 となると、大人を呼び込むしかない」
ふわり「大手に勝てる、ここだけの魅力は──」
すず「・・・」
ふわり「そうじゃ!」
ふわり「私たちにできることをやればいい!」
すず「ふわりちゃん、何を思いついたんですか?」
ふわり「楽しいことじゃ」
ふわり「お主たち、もう一度手伝ってくれるか?」
すず「もちろんです!」

〇お化け屋敷
ふわり「こうして、ああして──」
ふわり「完成じゃ!」

〇黒
  とくと見よ──
  ナイトパレード、開幕じゃ!

〇遊園地の広場

〇宇宙空間
すず「にゃ」

〇遊園地の広場
当主「ふわり、大盛況じゃないか」
ふわり「おお、来てくれたのか」
ふわり「我ら自慢の、妖怪ナイトパレードじゃ!」
当主「さっそく仕事の話で悪いんだが・・・」
当主「厄介な依頼を受けてな。 少し手伝ってくれんか?」
当主「報酬のスイーツははずもう」
ふわり「・・・」
ふわり「私個人ならそれでもかまわんが──」
ふわり「今の私は一企業の責任者。 みなの生活を背負う立場じゃ」
ふわり「契約するなら、安くはないぞ?」
当主「はは・・・」
当主「お前、やるようになったな」

〇お化け屋敷
すず「ふわりちゃん」
すず「すずたちずっと、ここにいていいんですよね?」
ふわり「もちろん。ここが私たちの家なのじゃ!」
すず「わーい!」

コメント

  • 妖怪もの面白かったです。たこ焼き屋を大成させるかと思ったら仲間がどんどん増えてきて、大所帯で楽しいことをやってハッピーエンド。トリコンと妖怪の立ち絵を不自然なくストーリーで使ってて物語に入りやすかったです。

  • これは凄い。。エフェクト、音は勿論、背景、画面効果、キャラまでフル活用して妖怪達の合体技を表現しきったパレード。今まで見た文字(ほぼ)無し演出の中でもダントツです!想像を具現化する力の凄さを見せつけられました
    物語も素晴らしく、部外者が権利を叫んで当事者が逆に困ったり起業のハードルが高かったりの世知辛さ、経営者としての責任感が出てきた成長、会社が家族になるラスト…楽しくキャラも活きた作品でした✨

  • 食べものに釣られる妖怪たちが可愛らしかったです(^^)
    河童がキュウリではなく、チョコバナナで釣れたことに、確かに形は似ているなあと妙に納得してしまいました。
    最初は店をすぐ畳んでいたふわりでしたが、社長としての責任感が芽生えて成長できたのがよかったです!

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