眠りの森の王子

カズー

エピソード1(脚本)

眠りの森の王子

カズー

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眠りの森の王子
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〇赤いバラ
  私の初体験は完璧だった
  夕暮れ時のキス
  私の手を引く彼の手
  完璧に美しい彼の顔
  そして・・・
  吐息が・・・

〇一人部屋
  ジリリリリリ!!
小野内 静「はあ・・・」
小野内 静(また あの夢だ)
小野内 静(あの時の・・・)
小野内 静(私はあの時に囚われ続けている)
小野内 静(そうだ あれから)
小野内 静(十年たった今でも・・・)
  後 3日だ・・・
小野内 静「後3日経てば・・・私は・・・」

〇休憩スペース
社員1「ありがとうございます!」
社員2「本当にたすかります・・・」
三島陽大「さすが先輩!」
小野内 静「・・・じゃあ、これは明日まで?」
小野内 静「わかった・・・うん大丈夫だと思う」
小野内 静「明日までにはやっておくから」
社員1「ありがとうございます・・・」
社員2「もうこの事務所で頼りになるのは 静さんだけです」
社員2「でも大丈夫ですか?」
社員2「明日なんて無理してません?」
小野内 静「大丈夫・・・ これくらいはよくあることだから」
小野内 静「ただ・・・」
小野内 静「明後日から休みをとるから その後の仕上げは立ち会えないからね」
  えー 有給ですか?
小野内 静「うん」
  聞きましたよ!旅行だって
  えーいいなー!誰とですか?
  友達ですか?
小野内 静「え・・・友達?」
  あ! 彼? 彼ですか?
小野内 静「ははは・・・違うよ」
小野内 静「知り合い」
小野内 静「昔からの 長い知り合い」
小野内 静「ほら仕事に戻って・・・」
  はーい
社員2「うーん」
社員2「あれは男ですな!!」
社員1「間違いないですなあ!!」
三島陽大「・・・」
社員2「難攻不落の小野内静をおとしたのは いったい誰なのか?」
社員2「気になりますな!!」
社員1「ふふふ」
社員1「あれは かなりのワケアリとみましたぞ!!」
社員2「社内? まさかの社内恋愛ですか!」
社員1「あります! それ!」
社員2「──いいですなあ・・・」
社員2「ところでさ・・・ あの仕事のことだけど・・・」
三島陽大「・・・」
三島陽大(うーん あの感じは・・・)
三島陽大(男ではないな)
三島陽大(しかし・・・なんだろう?)
三島陽大(聞いてみるか・・・)

〇開けた交差点
  小野内さん!
小野内 静「ああ驚いた」
小野内 静「三島くん どうしたの?」
三島陽大「あの ちょっといいですか?」
三島陽大「小野内さん 本当に旅行ですか?」
小野内 静「え?」
三島陽大「本当ですか?」
小野内 静「え? ・・・そうだよ」
三島陽大「旅行とか 楽しみにしている人は そんな切羽詰まった顔してないですよ」
三島陽大「最近の小野内さんが つらそうで・・・」
三島陽大「俺は・・・」
小野内 静「・・・」
三島陽大「俺が力になりますから」
三島陽大「何でも俺に言ってくれませんか?」
  九月の雨上がりの
  空気のせいだろうか・・・
  うっかりと私は本当の事を
  言いそうになった
  私の過去も・・・
  これからの計画も・・・
  すべて・・・
  そのほうが良かったのかもしれない
  今後に 必ずやってくる悲劇を思えば・・・
  そして、私は嘘をついた・・・
小野内 静「・・・」
小野内 静「大丈夫!」
小野内 静「私は大丈夫だから!」
小野内 静「全部うまくいくから!」
小野内 静「帰ってきたら」
小野内 静「何もかもすべてを新しく始めよう・・・」

〇広い玄関
  ── 十年前 ──
  ピンポーン
小野内静(10年前)「・・・はい」
小野内静(10年前)「どちら様ですか?」
  ああ 夜分にすいません 警察です
小野内静(10年前)「え?」
  ちょっと お話よろしいですか?
小野内静(10年前)「あ はい・・・」
  ありがとうございます
水上 刑事「いやあ すごい雨ですね」
水上 刑事「ご両親は 今 どこに?」
小野内静(10年前)「えっと・・・今は留守で」
水上 刑事「ああ そうですか・・・」
水上 刑事「まあ ちょうどいいか・・・」
小野内静(10年前)「あの 何ですか?」
水上 刑事「あなたが お付きあいしている 花江 景さん」
水上 刑事「おおきな怪我されましてね」
小野内静(10年前)「え?・・・」
下田 警察官「今 病院に入院中です」
水上 刑事「あんまり具合も良くないみたいでねえ」
小野内静(10年前)「ええ・・・そんな・・・!?」
小野内静(10年前)「どこの病院ですか?  私・・・行かなきゃ・・・」
水上 刑事「まあまあ 落ち着いて」
水上 刑事「今は行かないほうがいい」
小野内静(10年前)「は?」
小野内静(10年前)「どういうこと?」
水上 刑事「ふふふ」
水上 刑事「いやいや病院も大変な事になってまして」
水上 刑事「ふふふ・・・クックックッ・・・」
小野内静(10年前)「・・・」
水上 刑事「ああ・・・失礼しました」
水上 刑事「ふふ・・・まあ、事件性もあるし」
水上 刑事「それで、花江さんとお付き合いされていた方々にお話を伺っているわけでして・・・」
小野内静(10年前)「・・・」
水上 刑事「・・・」
水上 刑事「ああ 気付きました?」
水上 刑事「そうなんですよ」
水上 刑事「花江さんとお付き合いされていた 『方々』なんです」
水上 刑事「まあ、これがいっぱい・・・ いること、いること・・・ふふふ・・・」
水上 刑事「そう・・・全部で18人・・・ですね」

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コメント

  • これは本格的なサスペンスですね。静が事件とどう関わっているのか、わかりそうで分からない微妙な雰囲気の描写がすごい。最後に登場した女性は花江の18人のうちの一人なのか・・。とにかく次が早く読みたいです。

  • 10年前の事件についてとても気になる第一話ですね。数多の男女(!)との関係を持った花江さんとは何者なのか、10年後の静さんは何を思うのか、気になることばかりです。

  • 私にはこの二人の警官の言動がなんとも気に障りました。被害者の確認もせずにどうして関係者にアリバイなど聞けるのでしょう。彼女の10年秘めていた想いが、よい形で昇華されるといいですね。

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