第三十三話『村井芽宇Ⅲ』(脚本)
〇可愛い部屋
村井芽宇「あ、あああ、あ・・・・・・!」
恐怖で、喉からは引き攣った声しか漏れなかった。
ついに自分の番が来てしまった。
わかりきっていたとはいえ、全身ががくがくと震えるのを止められない。
村井芽宇(死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない)
自分達は、間違ったことをしたわけではない。
ずっとそう信じていたかったし、信じてきたはずだった。でも。
人が死ねば、誰かが悲しむ。誰かの心に傷を残す。
海砂に彩名にと、頼りにしていた友達が次々死んで芽宇はようやく理解したのだ。
結果的に自分達が死なせてしまった奏音にも、同じように家族が、友達がいたという事実に。
その責を自分達が正しく負わなかったから、こんなことになったということに。
『さて、村井芽宇』
声は冷徹に、芽宇の耳に響く。
『お前は、奥田奏音をいじめて、追い詰めて最終的には危険極まりない行為を強要して殺害したそうだな。何故そんなことをした?』
きっと、相手は許してくれない。それでも芽宇は、言うべきことを言うしかないともう理解していた。
村井芽宇「ごめん、なさい・・・・・・」
涙をぽろぽろと零しながら、言った。
村井芽宇「芽宇たちは・・・・・・芽宇たちは本当に酷いことをしちゃった」
村井芽宇「確かに、奥田君は彩名さんを振ったかもしれないけど・・・・・・だからって、命まで奪っていいなんてことなかったはずなのに」
〇モヤモヤ
第三十三話
『村井芽宇Ⅲ』
〇モヤモヤ
奥田冴子「!」
ごめんなさい。
その言葉を聴いて、冴子は固まった。初めてだったからだ、自分の行いを正当化せず、素直に謝ってきた人間は。
まあ、村井芽宇は包囲網が狭まってきていることを感じてきただろうし、命乞い目的で謝罪を口にしているだけかもしれないが。
村井芽宇「貴方は、神様なの?それとも、奥田君のお母さんなの?」
村井芽宇「彩名さんや海砂ちゃんが死んだのは・・・・・・芽宇が殺されそうになっているのは、それだけ悪いことをしたから、なんだよね?」
少女は泣きながら言う。
村井芽宇「芽宇、臆病だから、弱虫だから。奥田君みたいに、誰かを積極的に助けたり、嫌われても正しいことを貫き通すなんてできなかった」
村井芽宇「かっこいいと思ったけど、同じだけ嫉妬してた」
村井芽宇「だから・・・・・・だから彩名さんが“奥田君に間違いを認めさせてやろう、そのために追い詰めよう”って言った時」
村井芽宇「彩名さんと海砂ちゃんに嫌われたくなかったから協力したのもあるけど、それだけじゃないの」
村井芽宇「芽宇、本当はずっと、奥田君に嫉妬してて」
村井芽宇「だから・・・・・・」
村井芽宇「だから自分は正しいことをしてるんだって、そう言う理由で悪口とか悪い事とかできて、嬉しかったの・・・・・・!」
多分。それは誰にも話したことのない彼女の本心だったのだろう。
実際、村井芽宇は三人の中では一番立場が弱いように見えていた。間違いなく、下っ端扱いだったはずだ。
でも、彼女が協力したのはそれだけではなかったと。
彼女はここにきて、己がやったことの責任を後の二人になすりつけるということをしなかった。
村井芽宇「彩名さんと海砂ちゃんが平気な顔をしてるの見たら、芽宇も・・・・・・」
村井芽宇「もっともっと、やばいことをしてもいいんじゃないかって気がしてきて」
村井芽宇「屋上のフェンスに登らせるって聞いた時も、危ないんじゃないかって思ったけど・・・・・・思っただけで、強く止めなかったの」
村井芽宇「だから奥田君、落ちて死んじゃった」
村井芽宇「芽宇、びっくりしたし怖かったけど、最初は“自分達の正しさを認めなかったから奥田君は罰を受けたんだ”って思ったの」
村井芽宇「思おうとしたの・・・・・・」
奥田冴子「随分勝手な物言いだな」
村井芽宇「わかってる。自分を守るために、人が死んじゃったことを・・・・・・正しいことだって思おうとした」
村井芽宇「おばさんが泣いてるのも見たのに」
村井芽宇「北園君たちが悲しんでることも知ってたのに芽宇は、芽宇は・・・・・・」
村井芽宇「ごめんなさい、芽宇は、いじめをしました。言い訳して、逃げて、自分が悪いことをしたことも認めてませんでした」
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芽宇ちゃんの、自身のしでかしたことを受け止めての反省と謝罪の弁、これこそが冴子さんが欲しかったものなのでしょね。そこでの冴子さんの「もう遅い」の言葉は、奏音くんが戻らないという意味と、冴子さん自身がもう取返しのつかない復讐心に身を焦がしていることの両方に対しての言葉に感じられました。
そして、芽宇ちゃんCVの熱演、素晴らしいですね!聞き入ってしまいながらも喉の負担を心配してしまいましたw