読切(脚本)
〇華やかな寮
ここは日本全国より政界、財界、名家の子息が集まり、将来の日本のリーダーを養成する学園、その名も
『大王道学園』
そしてこの俺、坂東犬千代はこの大王道学園の風紀を守る風紀委員長であり、
同時にこの大王道学園の理事長の娘で、生徒会長であらせられる登竜門天衣様に忠誠を誓う男である。
そして本日、天衣様より生徒会室にお呼び出しされた。
〇校長室
登竜門天衣「よく来たな犬千代、最近の我が校の生徒の様子はどうだ?」
坂東犬千代「はっ、天衣様の可憐な指示により風紀を乱す不届きな輩を全員取締り排除する事ができました」
坂東犬千代「これで我が校は威厳と誇りを堅持し、 天衣様の治世の偉大さを全生徒に知らしめる事となるでしょう」
登竜門天衣「否、私は何もしていない」
登竜門天衣「今回の件は犬千代・・・貴様が前線に立って仕事を全うしてくれたおかげだ。ありがとう」
坂東犬千代「そのようなお言葉は俺には勿体のうございます!!」
登竜門天衣「そう謙遜するな。日頃の感謝を込めて何か褒美をやろう」
!?
天衣様は別名『ツンドラの女帝』と呼ばれる程他人に冷たく厳しい御方。なので滅多にお褒めにならない。
しかし今回は珍しく俺をお褒めになられて、褒美まで下さると言う。
坂東犬千代(まさに僥倖、俺は一生この方にお仕えするぞ!)
登竜門天衣「どうした犬千代、泣いておるぞ。もしかして私の褒美がいらんのか?」
坂東犬千代「否、決してそのような事はございません!」
登竜門天衣「ならば緊張しておるのか?」
登竜門天衣「幼少の頃はよく貴様を褒めてやったというのに」
坂東犬千代「あ、あの頃はお互いに何も知らなかった故、唯の戯れです」
登竜門天衣「ならばこれも戯れだ。久々にアレをしてやろう」
坂東犬千代「何を!」
!!
気が付けば天衣様が俺をハグして胸の中に収まっておられる。
登竜門天衣「昔の貴様は私より小さかった。しかし努力する子供で、私と並ぶ為に必死に厳しい修行をした」
登竜門天衣「私はそんな貴様を励ます為によくこうして抱きしめてやったな」
坂東犬千代「は、はい」
登竜門天衣「そして時が経ち気づけば、貴様はこうして私を見下ろす程大きく成長し、私を守る盾となってくれている」
登竜門天衣「その努力と忠誠は賞賛に値する」
坂東犬千代「て、天衣様。そろそろお離れに・・・」
登竜門天衣「ダメだ。貴様には一つ聞きたい事があるからな」
坂東犬千代(一体何を・・・)
登竜門天衣「ふんっ」
坂東犬千代「ぐわああっ!」
〇校長室
天衣様が俺をハグする力が強く、腰骨が軋みそうになる。言っておくが登竜門家の人々は代々武人で常人より遥かに強いのだ。
登竜門天衣「貴様、この私に秘密にしておる事があるな?」
坂東犬千代「な、何の事ですか?」
坂東犬千代「俺は天衣様に秘密にしている事などございません!」
登竜門天衣「ほう、シラをきるか」
登竜門天衣「ならばこの名に覚えは・・・『シリカ』」
坂東犬千代(シリカ?)
坂東犬千代「あぁ、存じてます。天衣様もスマホに入れて居られるのですか?」
登竜門天衣「スマホに入れるだと・・・? 何をわからぬ事をほざく・・・」
坂東犬千代「あっ、申し訳ございません。先ほどのシリカの件はお忘れください」
そういえば天衣様はスマートフォン等の精密機械には滅法弱い御方であった。
因みに、シリカとは俺のスマホに入っている音声認識アプリの名称だ。
非情に高性能で違和感の無い女性の声で検索の補助をしてくれたり、AIで話相手にもなってくれる。
〇校長室
登竜門天衣「先程忘れろと言ったができんな。これからそのシリカとやらについて尋問する」
登竜門天衣「まず初めに、そ奴は女子か?」
坂東犬千代「はい、女性でございます」
登竜門天衣「・・・」
「いたたたっ!!」
登竜門天衣「次の質問だ。そ奴はどのような見た目だ?」
坂東犬千代「見た目・・・そうですねぇ、黒くてツルツルしております」
登竜門天衣「(髪の毛が)黒くて、(肌が)ツルツルしている!?」
登竜門天衣「貴様もしかしてそ奴を触ったのか!?」
坂東犬千代「はい勿論です」
登竜門天衣「へっ・・・?」
坂東犬千代「天衣様どうかなさいましたか!?急に目から涙が出て・・・」
登竜門天衣「この不忠者、よくも私に隠れて密会など・・・許せん」
坂東犬千代「俺は一度も天衣様に不忠を働いた事はございません!」
坂東犬千代「それに俺が誰と密会したと?」
登竜門天衣「黙れ、次の質問だ」
登竜門天衣「『シリカ』ト云ウ女子ハ今何処二居ル?」
坂東犬千代「(学園はスマホ禁止の為)現在学園内に居りません」
登竜門天衣「ムッ、部外の者か? ならば何処で出会った?」
坂東犬千代「はぁ、街でたまたま見かけて欲しくなり手に入れました」
登竜門天衣「なん、だと・・・」
登竜門天衣「貴様大胆だな」
坂東犬千代「お褒め頂きありがとうございます」
登竜門天衣「褒めておらぬ!」
登竜門天衣「シリカとやらと貴様は普段どのようにしているのだ?」
坂東犬千代「そうですねぇ。寮の部屋で常に肌身離さず持って会話したり」
坂東犬千代「あとは手で触って遊んで汚れたりするんで拭いて綺麗にしてあげてます」
登竜門天衣「はあああっ!?」
坂東犬千代「ヒッ!?」
坂東犬千代(天衣様が鬼の形相をしておられる。一体どうして・・・・・・)
登竜門天衣「き、貴様、なんと破廉恥な男だ」
登竜門天衣「わ、私は貴様を・・・信じておったのに・・・」
登竜門天衣「もうよい、貴様は出ていけ!」
坂東犬千代「て、天衣様、一体なぜ・・・俺は何か粗相をしてしまいましたか!?」
坂東犬千代「天衣様ああああぁ・・・!!」
〇華やかな寮
こうして俺は何故か忠誠を誓う御方の信頼を失ってしまった。
しかし・・・暫くすると、急に天衣様よりお声を掛けられて、謎の謝罪を受けた後、再びお側にお仕えする事ができたのだった。
終わり
天衣様めちゃくちゃ可愛くてキュンとしました😂
口調は怖いのにちゃんと女子としてショック受けてて、可愛いすぎました💕
音声認識アプリにヤキモチ、傍から見たら可愛らしいですね。犬千代からしたら必死でそれどころではないでしょうがw こんな2人の関係性はステキですね!
二人の会話のすれ違いがすごく面白かったです笑
天衣さんかわいいですね!
でも、しばらくしたら誤解は解けたみたいでよかったです。