第三十話『瀬田彩名Ⅳ』(脚本)
〇可愛らしい部屋
『ぎゃあああああああああああああああああああ!!』
〇部屋のベッド
血と悲鳴。右目の眼球を自らの目で潰して、瀬田彩名は倒れた。なんて醜い死にざまだろう!と冴子は暗い笑みを浮かべる。
奥田冴子「何よ、だらしないわね」
もう相手には聞こえていないだろう。だからこれは、ただの独り言。
奥田冴子「色鉛筆、十二本しか刺さってないじゃない。まだまだこれからだったっていうのに」
右の眼窩を剣山にし、左手から血をだらだら流しながら床に倒れた彼女は。
びくびくと全身を痙攣させながら、涎と排泄物を垂れ流している。
冴子の“コントロール”も効かないということは、色鉛筆を少々深く刺しすぎてしまったのか、
あるいはショック症状が出ているということだろう。
この状態になったらもう、放置していても大して時間も待たずに死ぬ。冴子は経験で既にそれを知っていた。
奥田冴子「つっ・・・・・・!」
ぐらり、と視界が歪む。多少時間を置いたとはいえ、瀬田兄妹を立て続けに殺したのはさすがに負担が大きかったようだ。
奥田冴子(疲れた。目が、回る。でも・・・・・・でもこれで、残りは一人!)
今日はこのまま寝てしまおう。冴子はベッドに崩れ落ちた。
奥田冴子(明日よ。明日、最後の一人・・・・・・村井芽宇を始末する。それで、私の復讐は完結する・・・・・・!)
〇モヤモヤ
第三十話
『瀬田彩名Ⅳ』
〇黒背景
ばちばちばち、という何かが爆ぜるような音。
それから鼻腔をつく、焦げ臭さ。
〇部屋のベッド
奥田冴子「え!?」
冴子は慌てて飛び起きた。そして、何や取り返しのつかないことが怒っていることに気づくのである。
部屋の中に、煙が充満している。窓の向こうに、もくもくと黒煙が上がっている。
火事。その二文字が頭を過り、冴子は慌てて部屋を飛び出した。
〇家の階段
奥田冴子「うそ・・・・・・!」
冴子の部屋は二階にある。階段はもう煙が充満するどころか、あちこちに火が回り始めていた。
その階段を、ふらつきながら上がってくる人影が。
奥田颯斗「冴子!」
奥田冴子「は、颯人さん!?これは一体・・・・・・!」
奥田颯斗「わ、わからない!昨日ちゃんと、火の元は確認してから寝たはずなんだけど・・・・・・!」
颯人は青ざめた顔で、ハンカチを口に当てながら言った。
奥田颯斗「とにかく、急いで逃げよう。今ならまだ玄関から逃げられる!財布と携帯だけ持って逃げるんだ!」
奥田冴子「わ、わかったわ」
服を着替えている余裕はない。そもそも、明らかにこのままだと焼け死ぬ前に一酸化炭素中毒でやられるだろう。
冴子は手元のポーチに財布と携帯――それからポケットに例の鏡だけをつっこむと、颯人と一緒に階段を駆け下りた。
火事なんて、あり得ない。
確かに昨日は颯人に料理も片づけも任せてしまったが、彼が料理してくれることは時々あることだ。
それに、言ってはなんだか冴子よりずっと几帳面な性格をしている。そうそう、火の元チェックを忘れるとは思えなかった。
奥田冴子(まさか、放火?それとも漏電?)
〇シックな玄関
いや、今はそれを考えている余裕はないだろう。二人で靴だけ履いて玄関から出ようとした、まさにその時だった。
轟音。天井が音を立てて崩れてきた。どこかで爆発があったらしい。
嘘、と思った瞬間、冴子は突き飛ばされていた。玄関のドアに、強かに背中をぶつけることになる。
〇炎
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
これは魔法の鏡の副作用でしょうか……
全てを終えたとき、多くのものを失っていそうな冴子さん、彼女の行き着く先はどうなっているのか気になりますね!