誰かの所業は怪異に勝る

銀次郎

きっとあなたが一番怖い(脚本)

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銀次郎

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〇レトロ喫茶
田之上樹里「ええ、交通事故でね‥でも、自殺に近いんじゃないかって」
林多恵「自殺?」
田之上樹里「だって、叫びながら歩道橋から飛び降りて、そこに来たトラックにはねられたんだから」
中島さゆ「‥‥」
田之上樹里「それで、三度目だけど‥この相手は今も行方が分からないみたい」
林多恵「うわー‥」
田之上樹里「二度目の相手と同じように、家から出て行って、それっきり‥警察に捜索願は出したらしいけど、ほぼ死亡扱いになってるみたい」
中島さゆ「その人も、DVですか?」
田之上樹里「この人はどちらかと言うと、嫉妬がすごかったらしい」
林多恵「嫉妬?」
田之上樹里「ええ、学校にも副校長に‥まあ、当時は教師だけど、頻繁に電話があったらしくて大変だったって言ってた」
中島さゆ「副校長が?」
田之上樹里「ううん、校長が」
中島さゆ「校長?」
田之上樹里「校長と副校長って以前も反町第三で同僚だったの‥当時の副校長は教師、校長は副校長だったけどね」
林多恵「そんな前からの知り合いなんだ、あの二人」
中島さゆ「あの‥さっき悪い部分が出るって言ってたじゃないですか?あれってどういう意味ですか?」
田之上樹里「‥うまく言えないんだけど、自分の嫌な部分‥人によっては暴力だったり、嫉妬だったり、そう言うところ‥」
田之上樹里「あの人といるとね、刺激や充足が味わえるのと一緒に、異常なぐらい彼に執着したくなるの」
田之上樹里「そして自分の嫌な部分がものすごく大きくなっていくのがわかるの」
中島さゆ「‥それで、別れると?」
田之上樹里「でも、あの人から別れ話はしないのよ」
林多恵「えっ?でも今回の田之上先生の‥あっ?」
田之上樹里「いいのよ別に‥私の件も、彼は校長に愚痴を言っただけで、別れたいとは言ってないの‥ただ、校長が察してね‥」
中島さゆ「校長が?」
田之上樹里「それがあなたのためでもあるからって‥色々と手を回して、話をまとめてくれたの」
林多恵「じゃあ、副校長はまだ関係を続ける気はあったんだ‥」
田之上樹里「どうかしらね?どちらにしても、あのまま彼と続いてたら、私も今までの人達みたいに‥」
中島さゆ「‥あれ?そういえば、肝心な事を聞いてないや」
田之上樹里「肝心な事?」
中島さゆ「あの、赤いコートの女 あれって、田之上先生だったんですか?」
田之上樹里「ああ、あれ」
中島さゆ「見た目は外国の人で、全然別人じゃないですか?」
田之上樹里「あれはね、『呪いの金髪人形 赤いコートのメリーさん』よ」
林多恵「は?」
田之上樹里「前にね、海外に行ったとき、お土産で買ってきたの‥まさかあんなに効果があると思わなかったけど‥あははは」
中島さゆ「(あの怪奇を『あははは』で終わらせたな‥)」
林多恵「うーん‥なんか、わかんないんですけど、何で三井くんを脅かしたんですか? 近づくなって言って」
田之上樹里「さっき言ったじゃない、異常に執着するって‥自分以外の女性や、その子供と関わっている事がどうしても許せないの」
林多恵「女性?子供‥?」
田之上樹里「それに、だから彼女も副校長の離婚歴を気にしてたんじゃないの?」
中島さゆ「どういう意味です?」
田之上樹里「一度目の離婚相手、三井くんの母親なの」
中島さゆ「えっ!」
林多恵「な!」
田之上樹里「だからたぶん、三井くんの本当の父親は副校長よ」
中島さゆ「‥‥」
林多恵「‥‥」
田村井さん「いやー、駐車場探しに苦労しましたよ おっ、皆さん飲んでますな!」
喫茶店 店員「ホッピーお待たせしました」
田村井さん「じゃあ、私も、焼酎の梅割りを‥」
田之上樹里「田村井さん、車でしょ?」
田村井さん「あー‥メロンソーダを‥」
喫茶店 店員「はーい、お待ちくださーい」
林多恵「あのー‥あれ? えーっと、でもなぁ‥」
中島さゆ「どうかしたの?」
林多恵「三井くんのお母さんが副校長の事を気にするのわかるんですけど、校長の事を気にするのは何でですかね?」
田之上樹里「校長の事を気にする‥」
林多恵「ほら、昨日三井くんを送った後にも聞かれたし、今日も‥」
中島さゆ「今日?連絡があったの?」
林多恵「はい、田村井さんとの話が終わった後に連絡があって、校長はいつ頃復職するかって昨日と同じ話を‥」
中島さゆ「それで?」
林多恵「で、校長はもう来てますよって だって、もう来てるから‥そう伝えました」
田之上樹里「‥‥」
中島さゆ「田之上先生‥これってどういうことでしょうか?」
田之上樹里「‥校長、まだ学校かな?」
中島さゆ「この時間ならたぶん‥」
田之上樹里「三井くんのお母さんと連絡とれる?」
林多恵「えっ?あっ、ちょっと電話してみます」
林多恵「📞‥‥あっ、もしもし、三井さんの‥ 三井くん?あのお母さんは? えっ?でかけた?」

〇シックなリビング
三井輝「📞うん、ちょっと学校に行って来るって、あの赤い人の話でって言ってた」

〇レトロ喫茶
林多恵「📞そうなんだ‥何か、変わった様子はなかった?」

〇シックなリビング
三井輝「📞うーん、ちょっと怖い顔してた‥赤い人が出るかもしれないから包丁持っていくねって言ってた」

〇レトロ喫茶
林多恵「📞包丁‥それって、どのくらい前のこと?」

〇シックなリビング
三井輝「📞うーんとね、15分ぐらい前だと思うよ」

〇レトロ喫茶
林多恵「📞わかった、ありがとう また後で電話するからお家にいてね」

〇シックなリビング
三井輝「📞うん、わかったーバイバーイ」

〇レトロ喫茶
林多恵「ちょっとやばいかも‥」
田之上樹里「田村井さん!すぐ車だして!」
田村井さん「えっ?メロンソーダは?」
田之上樹里「いいから!(グビグビグビ) ぷはー!」
田村井さん「ホッピー一気飲み‥」
田之上樹里「みんなで学校にいくわよ!」
中島さゆ「はい!」
林多恵「はい!」

〇まっすぐの廊下
三井楓「あいつだけは‥あいつだけは‥あいつだけは‥」

〇校長室
  ガチャ
副校長 外ノ岡修二「うん? 君は‥」
三井楓「なんで?なんで、あんたがいるの‥」
副校長 外ノ岡修二「どうして‥なっ、包丁!」
三井楓「あいつは‥あいつは、どこなの!」
副校長 外ノ岡修二「落ち着きなさい、落ち着いて!」
三井楓「そもそも、あんたが‥あんたがー!」
中島さゆ「止めて下さい!三井さん!」
三井楓「あなたたち‥」
田之上樹里「三井さん、もうやめよう‥離れたほうがいい」
三井楓「あんたに何が‥」
田之上樹里「同じだから私も‥だから、もう離れよう」
三井楓「でも‥あいつだけは‥ 子供は‥私だけなのにー!」
副校長 外ノ岡修二「包丁を放しなさい!」
三井楓「うわー、うるさい! そもそもあんたがー!」
中島さゆ「危ない!」
林多恵「副校長!」
田村井さん「うりゃー!たあぁぁ!!」
三井楓「なんで‥体が‥動かない‥」
田村井さん「さあ、今です!体を押さえて!!」
中島さゆ「あっ、はい!」
林多恵「わかりましたー!」
田之上樹里「どういうこと?」
三井楓「何でよ!何なのよ! 動かない‥」
中島さゆ「田村井さん、これ何したの?」
田村井さん「実はこの間YouTubeで「誰でも出来る気功術」ってのを見たもんでね いやー、役に立って良かったですよ、あははは」
田之上樹里「‥‥」
林多恵「‥‥」
中島さゆ「(何者なんだよ、田村井‥)」
三井楓「あいつは‥あいつは‥どこなのよ‥」
田之上樹里「三井さん‥」
三井楓「子供は‥私だけなのに‥」

〇散らかった職員室
  一か月後‥
中島さゆ「今日はちょっとのんびりねー」
林多恵「そうですね、先月を思い出すと考えられないですよ」
中島さゆ「先月か‥そう言えば副校長、結局異動になったね‥」
林多恵「そうですね、教育委員会への移動ですから、現場から離すって判断なんでしょうね」
中島さゆ「‥校長かね?」
林多恵「でしょうね‥三井くんも転向しちゃったしなー」
中島さゆ「そうね‥校長が色々と手を回して、警察沙汰にはならなかったけど‥何か、かわいそうだったね」
林多恵「そうですか?気にしてないみたいでしたけど?」
中島さゆ「そう?」
林多恵「ええ 先生、またねー、だって」
中島さゆ「そっかー‥それは良かったなぁ」
林多恵「あっ、そう言えば田之上先生の見送り行ったんですか?」
中島さゆ「うん、地元の札幌に帰るっていうから、羽田空港まで‥‥」

〇空港のエントランス
中島さゆ「なんかいろいろと、お疲れ様でした」
田之上樹里「そうね‥お世話になりました、かしらね?」
中島さゆ「でも‥教師を辞めなくても‥副校長は学校からいなくなったんだし‥」
田之上樹里「‥中島先生、ピカソって知ってる?」
中島さゆ「ピカソ?あの、画家の?」
田之上樹里「そう‥ピカソってね、7人の女性と付き合あって、そのうち3人が自殺、1人が病死、1人が心を病んで入院したの」
中島さゆ「えっ‥」
田之上樹里「なんかね、世の中には本人に悪意が無くても、相手の心を壊して歪めてしまう人がいるんだと思うのよね‥」
中島さゆ「それが‥副校長だと?」
田之上樹里「かもしれない‥けど、もう私には関係ない」
中島さゆ「‥‥」
田之上樹里「もう、終わったから」
中島さゆ「‥そうですね」
田之上樹里「じゃあ、元気でね」
中島さゆ「はい」

〇散らかった職員室
中島さゆ「‥ねえ、ピカソって知ってる?」
林多恵「ピカソ? 駅前のパチンコ屋ですか?」
中島さゆ「違うわ!」

〇散らかった職員室
校長 玉ノ井優美恵「みなさん、お疲れ様です 今日も遅くまで大変ね」
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様です」
「校長、そういえば、お子さんもう1歳ですか?」
校長 玉ノ井優美恵「うふふ、そうなの、見る? スマホの待ち受けにしてるのよ」
「見たーい!」
校長 玉ノ井優美恵「ほら、これ」
「わー、可愛い!」
「ほんとー! かわいー!」
校長 玉ノ井優美恵「ねぇ、目元なんて、彼にそっくり」
「ご主人似なんですか?」
校長 玉ノ井優美恵「主人?あー‥そうね、うふふふ」

〇散らかった職員室
中島さゆ「そっくりか‥」
林多恵「そっくりって‥」
中島さゆ「なんか、やっぱり輝くんが気の毒に思える」
林多恵「いや、一番気の毒なのは音痴を責められたさとりの妖怪じゃないかと」
中島さゆ「あー、いたね‥すっかり忘れてたわ」
中島さゆ「ねえ、じゃあさ‥」
林多恵「はい?」
中島さゆ「誰がさ、一番怖いと思う?」
林多恵「怖い?」
中島さゆ「今回の出来事で‥誰が一番怖いと思う」
林多恵「そりゃ、きっと‥‥ね?」
  終わり

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