色たちの思いとは(脚本)
〇ゆめかわ
色の世界
赤君「うわぁ、おもしろいな! ぼくたちがくっつくとちがう色になるんだね」
元気でわんぱくの赤色君が大きな声で言いました。
青君「そうだね。ぼくたちが離れるとまたぼくだけの色になるんだ」
いつも落ち着いている青色君もどこかうれしそうです。
緑ちゃん「ねえ、私たちみんなでくっつくと、どんな色になるのかやってみようよ」
緑色ちゃんが明るい声で言いました。赤色君はよけいに赤くなって爆発しそうですし、青色君は乗り気いっぱいです。
〇幻想2
みんなはせーのでくっつきました。たくさんの光と色たちが舞い踊り、真っ白な色になりました。
赤君「白色になったよ! 不思議だなぁ!」
赤色君が叫ぶように言いました。 そうなのです。光の世界では、赤と緑と青の色がひとつになると白になるのです。
赤色君たちがわいわい騒いでいると、黒色君が、のっそりと顔をだしました。
緑ちゃん「黒色君もこっちにおいでよ」
いつも優しい緑色ちゃんが、黒色君を手招きしながら言いました。でも黒色君は、身動きせずにじっとしています。
赤君「失礼なやつだな。せっかく緑色ちゃんが声をかけてあげたのにさ」
赤色君がぷんぷんしています。赤君たちは元の色に戻りました。
黒君「赤色君。ぼくが君たちとくっつくと、君たちはぼくのなかに入ってしまうんだよ」
赤君「どうして!」
赤色君たちは驚いて離れ、同時にどうして! と声をあげました。
黒君「まえにも君たちのような色の君たちと出会ってひとつになろうとしたら、その色君たちが」
黒君「ぼくのなかに吸い込まれてしまったんだよ。なんどやってもおなじだったよ。ぼくのなかにはたくさんの色たちがいるんだ」
〇ゆめかわ
黒色君はとてもさびしそうに言いました。黒色君の姿が、より暗くなりました。
赤色君と青色君がたがいの顔をみあわせて、ふと手をつなぐと紫色になりました。紫はおもいやりの色なのです。
青君「黒色君。そんなに暗くならなくても大丈夫だよ。君の色だって大事な色じゃないか」
赤君「人間や犬や猫たちだって、夜が来るからぐっすりと眠れるんだから。神さまは、必要でないものなんておつくりにはならないよ」
赤君と青君はまた元の色に戻りました。
赤色君と青色君は、とてもやさしい声で言いました。それを聞いた黒色君は、ちょっぴり微笑みました。
〇幻想空間
黒君「ありがとう。ぼくはひとりぼっちじゃないんだね」
赤君「そうだとも。君のなかにはたくさんの色君たちがいるんじゃないか」
赤色君がそう答えました。そして、今度は赤色君と緑色ちゃんが手をつないで黄色になりました。黄色は陽気な色なのです。
緑ちゃん「よし、みんなでわいわい踊ろうよ!」
緑色ちゃんが言いました。赤君と緑君は元の色に戻りました。
〇幻想空間
手を振り、足をゆらゆらと揺らせて、ユーモラスな踊りをはじめました。
でも、踊りに夢中になりすぎた色たちは、ついぶつかりあって、赤色君たちは、黒色君のなかに入ってしまいました。
〇ステンドグラス
赤色君たちが、トンネルのようなものを通って抜け出てみると、そこではたくさんの色たちが楽しそうに踊っていました。
〇幻想2
そこは、七色の虹の橋がいくつもかかる、それはとても美しい世界でした。
〇幻想
fin
色を題材にするのはおもしろいですね。
光の三原色とか興味深かったです。
たしかに黒は全てを飲み込んでしまいますので、ちょっと寂しそうなのが気になってましたが、みんな仲良くなれてよかったです。
タップノベルならではの作品で心に響きました。
確かに色って普段見えていて、でも色々な色が混ざりあってできてるんですよね。
小学生の頃色々な絵の具を混ぜるのは誰しも通る道…。
みんなそれぞれ違った色だからこそ、組み合わさってまた違う色が生まれるんですね。また黒くんは黒という皆の色を吸収して黒にしてしまうという宿命をもってうまれながら、どうしたら皆が幸せでいられるかを考えて、人を思いやることができる優しいこころの持ち主ですね。その黒くんにかけられた言葉も含め、優しい世界だなぁと感じました。