第二十七話『瀬田彩名Ⅰ』(脚本)
〇部屋のベッド
自分は何をやっているのだろう、と思う。
大好きな夫の食事も作らず、疲れて帰ってきた彼に縋りついて泣いた挙句家事の何もかもさせて。
しかも、同じく傷ついているはずの珠理奈からは“おばさん大丈夫?”とメールを貰ってしまう始末。
大人としても、妻としても、あまりにも情けないとしか言いようがない。
〇おしゃれなリビングダイニング
奥田颯斗「明日は僕も休みだし、お風呂に入ったら早めに寝なよ。疲れてるだろ」
颯斗も、ショックを受けていないはずがない。それなのに完全に気を使われて、寝室に送り込まれてしまった。
奏音が死んだ時と同じだ。彼は、冴子が泣いているといつも自分が我慢してしまう。
悲しみを堪えて、冴子の涙が枯れるまでよりそってくれる、慰めてくれる。
こんな風に依存してばかりではいけないと、冴子自身もわかっているのに。
〇部屋のベッド
奥田冴子(そうよ。・・・・・・もう、復讐は、始まっている。それどころか、残り二人まで来ている)
ベッドに横になり。暗闇の中、冴子は鏡を取り出した。
果たして本当に、晴翔の事故が自分の“幸せの代価”によるものなのかはわからない。
正直、釣り合いが取れないし、認めたくないとは思っている。
でも、仮にそうだとしても。
自分は、もう既に四人もの人間を殺したのだ。今更、後戻りなどできるはずがないではないか。
奥田冴子(ここで終わらせたら。奏音の死が本当に無駄になってしまう。それだけは、それだけは絶対に嫌・・・・・・!)
あの刑事に、捕まえられるよりも前に。
とにかく残る二人を、急ぎ始末しなければ。
〇モヤモヤ
第二十七話
『瀬田彩名Ⅰ』
〇可愛らしい部屋
瀬田彩名(サイアク。なんでこんな時に限って、パパとママはいないのよ。お仕事が何よ)
部屋で一人。彩名はベッドに転がって、ぶつぶつと呟いていた。
瀬田彩名「サイアク。本当にサイアク。娘が一人で悲しがってるんだから、仕事なんか放り出して助けにきてくれればいいのに・・・・・・!」
それともまだ、兄が死んだことを二人は知らないのだろうか。
いや、知っているけれど、破門も同然で出ていった兄のことなんてどうでもいいと思っているのか。
瀬田彩名「いくらなんでも、そんなことないよね?そりゃ、お兄ちゃんは不良だったけど、でも・・・・・・」
瀬田彩名「パパとママにとっては、可愛い息子のままだよね?そうだよね?」
虚空に問いかけても、返事などない。ただ空しく声が響くばかりである。
瀬田彩名「お兄ちゃん・・・・・・」
兄のおぞましい最期を思い出し、再び涙があふれた。今日は、電気を消して寝る勇気もない。
怖いのもあるが、暗闇の中だと悪いことばかり考えてしまいそうだからというのもある。
あの事故でうやむやになってしまい、結局奥田冴子の家に突撃することは叶わなかった。
明日は。明日こそは、どうにか彼女を問い詰めなければ。
説得させようとしていた北園晴翔は入院してしまったが、たしか長谷川珠理奈も奏音とは仲良くしていたはず。
最悪、彼女を人質にして脅すことができないだろうか。
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彩名ちゃんの性格の歪みっぷりといったら……💦
そして奏音くんの死の状況が、、、どんなシチュエーションで、彼女たちの関与はあったのか気になっていました!