2匹のおもち

ちょこまる

読切(脚本)

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〇家の廊下
  付き合って約2年。私達は同棲を始めた。
  ある日、彼から犬を飼おうと提案された。

〇ペットショップの店内
彼「見て!この白いポメラニアンの子ずっとこっち見てるよ。 飼ってほしいのかも!?」
私「可愛いー!ねえ、このチワワのワンちゃんもすごい可愛いよ!!」
  彼はいつも絶対に私の意見を尊重してくれる。
  そしてそれは、私が彼の事を好きな理由の
  一つだった。
私「白の子も可愛いけど、 私はこのチワワの子飼いたいなあ!」
彼「・・・ダメ。絶対にこの子じゃないと」
私「え?」
  私は思わず驚いてしまった。
  彼にダメと言われたのはこれが初めてだったからだ。
私「そっか・・・そしたらひとまず今日は帰ろっか。そんな焦らなくてもいいし、また今度違うお店も見に行こう!」
彼「いや、絶対にこの子がいい」
私「え?」
  彼は頑なに譲らなかった。
  私はポメラニアンのワンコを見つめた。
  愛おしい顔で私を見つめている。
彼「一目惚れしちゃったんだ。 ・・・ダメかな?俺が責任持ってちゃんと お世話するから」
私「うん。確かにこの子も可愛いね。 ・・・わかった!この子にしよう。 ちゃんと私にもお世話させてよ」
  私たちは白色のポメラニアンを
  迎え入れることにした。

〇明るいリビング
私「可愛いー!ほら、おいで。 家に来たばっかりで怖いのかな?」
彼「かもね。ほら、こっちおいで! おもちー、おいで!」
私「おもち?何それ? ちゃんと名前決めてあげないとね。 白色だしマシュマロとかどう?」
彼「え?もう名前決めてるよ? おもちだから」
私「え・・・そんな勝手に決めないでよ。 二人で飼うんだしちゃんと話し合って 決めようよ」
彼「おもちー!! ・・・ほら、おもちって呼んだら嬉しそうに こっち振り向くよ!!」
私「声に反応してるだけでしょ?」
彼「よく見てよ、マシュマロというよりは 餅っぽいじゃん! ねー、おもち!」
  何だかいつもと様子が違う・・・
  普段は私任せな事が多い彼なのに
  犬に関してはやけに意志が固い・・・
  まあ家族だもんね
私「おもちか・・・。 おもちー」
彼「ほら、しっぽ振ってるよ!! おもちー!!」
私「・・・まあおもちも喜んでるし良いか。 おもちも可愛い名前だしね」
  彼はおもちの写真を沢山撮った。
  正直彼がここまで犬を好きになるのは
  予想外だった。
  それから数週間経った頃──

〇明るいリビング
  私は、彼がやたらスマホをいじってる事に
  気付いた。
  トイレや風呂場にまでスマホを持っていくようになった。
私「おもちの写真でも見返してるのかな・・・?」

〇本棚のある部屋
彼「ぐー。すぴー。ぐー・・・」
私((やっぱり何か怪しい・・・ちょっとくらい良いよね))
  申し訳ない気持ちを抱きつつも・・・私は
  彼のスマホを盗み見てしまった。
私((何もないとは思うけど・・・ ・・・ん?え?このアプリって・・・))
  私の目に『カップルトーク』というアプリが飛び込んできた。
  これは恋人達専用のアプリだ。そこには
  『恵美』という女性が。
私((『恵美』って・・・元カノ!?))
  そう。彼はカップル専用アプリで元カノと
  連絡を取り合っていたのだ。
  こみ上げる怒りを何とか抑えトーク履歴を
  遡っていく。
私((何なの?おもちの写真こんなに送って。))
  しばらく遡ると、驚愕の事実が判明した。
  彼は元カノと付き合っている頃、二人で犬を飼っていたのだ。
  名前は・・・『おもち』
  姿、形は私達の飼ったおもちと瓜二つだ。
私((・・・信じられない。犬を飼ってたなんて 聞いた事ないし、よりによって同じ犬種で 同じ名前!?))
  私は彼を叩き起こした。

〇本棚のある部屋
私「ねえ、これどういう事!?」
彼「なっ。勝手に他人のスマホ見るなよ!!」
私「ちゃんと説明して!おもちっていう うちの子そっくりのワンちゃん飼ってたの!?」
彼「そ、そうだよ。 けど。この前死んじゃったらしいんだ、 事故で・・・」
私「そう・・・。 で、その代わりに似た子を飼って同じ名前をつけた訳?」
彼「・・・いや。そういう訳じゃ」
私「そうでしょ?元カノに連絡してたじゃん。 今度おもちに会わせるねって。 何?うちのおもちを元カノに会わせるつもりだったの?」
彼「・・・」
私「最低!うちのおもちは誰かの代わりじゃないし。それにそれって死んだおもちの事も 傷つける軽薄な行為だと思うよ!」
  私は彼が許せなかった。
  私に隠れてコソコソ連絡を取っていた事だけじゃない。二匹のおもちに対してだ。
  一体生き物を何だと思っているのか・・・
  彼の神経を疑った。
私「もう別れよう。おもちは私が育てるから。 さようなら」
彼「ちょっと待ってくれよ。そんな自分勝手な」
私「自分勝手なのはどっち!? 自分と元カノの悲しさ寂しさを埋めるために似た犬を飼う人なんて絶対に嫌だ!! さようなら──」

〇女の子の一人部屋
私「マシュマロ!! おいで!!お散歩行くよ!!」
マシュマロ「ワン!」
  私は今、マシュマロと名付けた白色の可愛いポメラニアンと二人仲良く暮らしている。
  マシュマロはこの世にたった一匹しかいない
  大切な家族だ。

コメント

  • いつになく彼氏の言動が怪しいと気づいてよかった。元カノと連絡を取り合っていたなんて最低です。こんな男とは別れて正解です。

  • マシュマロちゃんがきちんと自分を見てくれる飼い主さんと暮らせるようになってよかったです。元カノさんもおもちちゃんはこの世に一匹しかいないって気づいてそうですが…彼氏さんは張り切りすぎたかもですね。次はきっと主人公さんにふさわしい恋人が現れると信じてます。

  • とってもかわいいお話しだなと思いました。その上、ストーリの展開も楽しくて最後まで一気に読ませて頂きました。心が温まるお話でもう少し読んでみたい気がします。

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