女騎士と修道士

ミーコ・ショーリーフ

エピソード1(脚本)

女騎士と修道士

ミーコ・ショーリーフ

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〇けもの道
女騎士「チッ・・・しくったな・・・・・・」
  薄暗い森の中一人の女騎士が木の幹にもたれかかっていた・・・
  髪は茶髪で、血のように赤い瞳を持つ彼女は傷だらけであり、
  中でも脇腹は大きく切り裂かれ一度止血したにも関わらず今も尚多くの血が流れ出していた・・・
  痛みは一向に引くことがなく血を流しすぎたためか視界を霞めていった・・・・・・
  (父さん・・・ごめん・・・家・・・帰れない・・・かも・・・・・・父さん・・・一人に・・・・・・なっちゃ・・・・・・)
  だい   ぶ  か!
  かり!き   ますか?!
  声が・・・聞こえる気がする・・・・・・
  そんなことを考えながらも彼女は意識を手放した・・・・・・

〇可愛らしいホテルの一室
女騎士「・・・っ!?」
  目を覚ますと見知らぬ天井が目に入った
修道士「あ!良かった!目が覚めたんですね・・・?!」
女騎士「アンタは・・・???・・・ここは・・・?!」
  一度は身体を起こすものの痛みに顔を顰めてベッドに逆戻りした・・・
修道士「ダメですよ!安静にしてください!」
修道士「傷口は塞ぎましたが完全な治療はまだできてませんので・・・」
  目の前の男が自分を手当てしたのかと思いと女騎士は顔を顰めた・・・
  彼女は鎧を着ていない状態である・・・
修道士「あっ・・・・・・み、見てませんよ!?!?!?」
修道士「そ、そんな!女性の裸体を見るだなんてことは決して!!!」
修道士「て、『手当に少し邪魔だな〜』と思ったくらいで!そ、そんな!いかがわしいことなんて考えていませんよっ!!!」
  神父の装いをした男は後ろで束ねるほど長い黒髪、そして、草原のような緑色の目をしていた。
  性格は温和で優しい雰囲気を漂わせるが、どことなく頼りない気がすると彼女は感じていた。
修道士「あ・・・ボクはコペルと申します・・・」
女騎士「アタシは・・・・・・ジャンヌ・・・」
コペル「ジャンヌさんですか・・・素敵なお名前ですね?たしか・・・どこかの世界の英雄さんも同じお名前だったような気がします・・・」
ジャンヌ「そう・・・・・・アタシは異界に興味がないから特に知らない・・・・・・」
  会話を終わりにするつもりだったが、フと思い立ったジャンヌはコペルに質問をした。
ジャンヌ「ここはどこ?」
コペル「ルシューヴェ帝国内の西側に位置する小さな教会ですよ」
ジャンヌ「ここまで来てたのか・・・・・・」
  ジャンヌは大きくため息をつく。
ジャンヌ「・・・・・・助けてもらってなんだけど・・・なにか、紙・・・・手紙を書けるもの・・・ない?」
コペル「お父様ですか・・・?」
  何故わかったのかジャンヌは驚きをあらわにする。
コペル「時折魘されておられましたから・・・?その度に・・・『父さん』と・・・・・・」
ジャンヌ「・・・アタシには父さんしか家族がいない。とは言っても本当の親じゃないけどね?アタシの本当の親は戦争で死んだらしい・・・」
コペル「そう・・・なんですか・・・・・・」
ジャンヌ「・・・ごめん・・・もう少し、休ませて?」
コペル「はい・・・おやすみなさい。ジャンヌさん」
  コペルはそう言って部屋を後にした。
  これが二人の出会いである。

〇養護施設の庭
  あれから数週間の月日が経った。
  ジャンヌの傷はそれなりに回復しつつあった。
  今は教会の庭のベンチに腰掛け、遊んでいる孤児の子ども達を眺めている。
  ジャンヌの視界の先にはコペルがいた。
  コペルは子ども達に手を引かれ、振り回されている。
子ども「ジャンヌお姉ちゃんにこのお花あげる!」
ジャンヌ「ん?ありがとう」
  一人の少女がジャンヌに花を差し出してきた。
  ここに来てからはジャンヌには無縁だった平穏な日々が続いている・・・
シスター「皆さん!もうすぐお昼ご飯ですよ?」
「は〜〜いっ!!!」
  シスターの呼びかけに子ども達は一斉に食堂へと駆けていった・・・
コペル「はぁ・・・・・・疲れました・・・・・・」
ジャンヌ「お疲れ」
  ジャンヌとコペルはお互いに良く言葉を交わすようになった。
コペル「でも、ボク子どもが大好きなので、さほど苦ではないですよ」
  コペルはそう言ってジャンヌの隣に腰掛けた。
ジャンヌ「・・・・・・あんたは食堂行かないの?」
コペル「あ・・・いえ、シスターさんも神父様もいらっしゃいますので」
  心なしか、そう答えるコペルの顔は赤く照っていた。
ジャンヌ「・・・・・・あんたはなんでここに?」
コペル「え・・・?」
ジャンヌ「正直、悪いけど、神なんてもの・・・アタシは信じてないし・・・・・・わざわざこんな田舎で・・・・・・何してるの・・・?」
コペル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  コペルは空を仰ぎ見て語り始めた。
コペル「ボクは・・・ここで育ったからです・・・」
ジャンヌ「え・・・?」
コペル「僕も戦争で両親を亡くしてるんです・・・二歳の時でしたから・・・記憶もほとんどありません・・・」
コペル「ボクはここで育ったので、神を崇拝するのにそれ以外の理由なんてありません」
  コペルの表情はどことなく寂しげに見えた。
コペル「『ひどい戦火の中で生き残った貴方は神に守られた存在です』と神父様がおっしゃってくれました・・・」
コペル「だからボクは・・・・・・同じ境遇である身寄りのない子ども達を・・・放っては置けないのかもしれませんね・・・・・・」
  重い話をしながら笑みを浮かべるコペルにジャンヌは少し呆れていた。
ジャンヌ「・・・反吐が出るほどお人好しなんだな?」
コペル「そんな下品な言葉女性が使うものじゃ無いですよ?」
ジャンヌ「あ〜そーゆ男女差別嫌いなんだけど?」
コペル「す、すみません・・・・・・」
  こうして二人は徐々に距離を縮めていった。

〇教会の中

〇可愛らしいホテルの一室

〇養護施設の庭

〇養護施設の庭

〇可愛らしいホテルの一室

〇おしゃれな食堂
ジャンヌ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

〇養護施設の庭

〇田舎の教会
  ジャンヌの傷は完治し、別れの日が来た。
ジャンヌ「随分と世話になったな・・・ありがとう」
コペル「いえ、お元気になられてよかったです」
子ども「ジャンヌお姉ちゃん元気でね〜♪」
ジャンヌ「うん」
  ジャンヌは全員の顔を見回した。
ジャンヌ「距離もあるし・・・もう・・・会うこともないかもしれない・・・」
ジャンヌ「特にコペル・・・本当にありがとう」
コペル「・・・・・・初めてですね・・・名前を呼んでくれたのは・・・」
ジャンヌ「?・・・そういえば・・・そうかも・・・」
  コペルの寂しげな顔にどこか寂しげな顔に少し心が揺らいだ・・・
ジャンヌ「それじゃあ・・・・・・さよなら・・・」
  ジャンヌは教会を後にした・・・
  後ろ髪を引かれる思いを振り払いながら

〇けもの道
  教会からだいぶ離れても、何故か脳裏に何度もコペルの顔が過っていた・・・
  この気持ちはなんなのか・・・
  
  わからなかった。
???「ジャンヌさん!」
ジャンヌ「っ!?」
コペル「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」
  振り向くとそこには息を切らしたコペルがいた・・・
ジャンヌ「え・・・?何しに・・・?!」
コペル「あの・・・一つ・・・ッだけ・・・ハァッ・・・聞いてッいただき、たいッことが・・・」
ジャンヌ「・・・・・・」
  ジャンヌは何も答えられなかった・・・
コペル「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ボクは・・・一人の女性として・・・ジャンヌさんのこと・・・お慕いしております・・・」
コペル「初めてなんです・・・貴女といると・・・心が踊りました・・・・・・楽しくて・・・」
コペル「これから先も・・・ご一緒にいたいと・・・思ってしまったのです・・・どうか・・・許してください・・・」
ジャンヌ「・・・・・・アタシは・・・・・・」
  ジャンヌは一度言葉を切り、自分の思いを告げた。
ジャンヌ「アタシ・・・前にも言ったみたいに・・・戦いしか知らない脳筋男に育てられたからさ?そーゆーの・・・全っ然わかんない・・・」
ジャンヌ「アンタには世話んなったし・・・礼って言っちゃあ、なんだけど・・・悲しませるようなことはしたくない・・・」
ジャンヌ「なによりアタシは神なんか信じない・・・けど・・・コペルの信じるものを・・・少しは信じたくなった・・・」
  黙って話を聞き届けるコペルの表情は少し和らいだ。
ジャンヌ「一ヶ月・・・いや、一週間待ってくれるなら・・・その・・・真剣に考える・・・でも、あんま期待しな・・・」
コペル「待ちます!」
  普段は大人しいコペルがジャンヌの言葉を遮り、食い気味に迫ってきた。
コペル「それに・・・もし、断られても・・・ボクが苦悩をしいることは決してありません・・・」
コペル「その時は・・・貴女と過ごしたこの日々がボクにとっての、大切な思い出となるだけなのですから・・・」
  その言葉にジャンヌは顔を赤らめ目を逸らした・・・

〇黒
  ほんっと、変な奴・・・・・・
  言われ慣れております・・・・・・
  後にこの二人は結ばれて新たな命を授かることになるのはまた別のお話・・・・・・
「お父さ〜〜ん!お母さ〜〜ん!早く〜!」
  END

コメント

  • はじめてのコメント失礼いたします。
    とても素敵で読後感のいいお話でした(((o(*゚▽゚*)o)))

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