燃えるゴミの恋

中河原虎太郎

燃えるゴミの日の前日(脚本)

燃えるゴミの恋

中河原虎太郎

今すぐ読む

燃えるゴミの恋
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇CDの散乱した部屋
  燃えるゴミの日
  前日
太一「だりい・・・あちい・・・ねみい・・・」
  夏真っ盛りなこの時期に、先程エアコンが故障した。
  1ミリでも動いたら汗が吹き出す暑さだ。
  ところが俺は、今から10メートルぐらい動かなければならない。
  何故なら
  明日は燃えるゴミの回収日だからだ
  ゴミ箱は生ゴミで溢れかえっており、既に異臭を放っている。
太一「捨てなきゃ・・・こんな真夏に放置してたら大変なことに・・・」
  動け・・・俺の体・・・頼むから・・・
太一「動いてくれよおぉぉぉ!!!」
  ロボットアニメの主人公みたいな大声を出してみたが、体はピクリともしない。
  ていうか今、全身の毛穴から汗が滲み出るのを感じた・・・
  大声出したからだ・・・
  閉じろ・・・毛穴よ・・・
太一「閉じてくれよおぉぉぉ!!!」
モエ「うるさいんだけど」
  ・・・
  かわいっ。いや、その前に誰だ?
モエ「太一、暑すぎて頭おかしくなった?」
  なぜ俺の名前を知っているんだ美少女。
モエ「しょうがないわね。察しの悪い太一に教えてあげる」
モエ「私は」
モエ「太一が捨てた燃えるゴミよ」
太一「・・・なんて?」
モエ「太一が捨てた燃えるゴミだって言ってるでしょビチクソ童貞」
  口悪っ・・・ビチクソ童貞なんて初めて聞い・・・ん、てか燃えるゴミって言った?
モエ「詳しく言うと太一が捨てたアジの開きの残りカスね」
  ゴミ箱の中には
  2日前の夕飯だった
モエ「ねえ太一・・・」
太一「え、あ、はい」
モエ「私の事、捨てないよね?」
  なんかいきなり彼女面してきた。
モエ「ちがっ・・・そういう意味じゃないっ! 物理的に捨てるなってことだから! 勘違いしないでよねバカっ!」
  なんか一昔前のツンデレキャラみたいな口調だな。
  残念だが俺は、
  そういうのめっちゃ好きだ
モエ「は、はあ!?なに急に告白してんのよ!? 嬉しくもなんともないんだからっ!」
  あれ、口に出ちゃってた。
モエ「で・・・でも、いい心がけじゃない。 ご褒美に・・・ちょっとだけ、ぎゅってしてあげてもいいわよ」
  やっぱりツンデレでした!
モエ「・・・っ」
  ぷるぷる震えながら近づいてくる美少女。
  俺の顎あたりに位置した彼女の髪。
  そこから香ってくるシャンプーの香りが鼻腔をくすぐ・・・
太一「くっさあー!!!」
太一「生ゴミみたいな匂いなんですけど!!!」
モエ「みたいな、じゃなくて生ゴミだって言ってるでしょ!?」
モエ「てか女の子に臭いとかデリカシーなさすぎ!!!」
太一「いや、デリカシーとかそんなレベルの臭いじゃないから! お風呂入ってきてよ!」
モエ「おふ・・・ってなに考えてんのよこのエロ雄!!!」
太一「エロ雄!?」
  ちょっと待ったあああ!!!
太一「今度はどなた!?」
カネン「お兄ちゃん! そんな女と一緒にお風呂とか絶対にダメ!」
太一「お、お兄ちゃん!? じゃああなたはまさか・・・妹!?」
カネン「お兄ちゃんは私とお風呂に入るの!」
  そう言って妹(仮)は俺に駆け寄り、甘えたように抱きつい・・・
太一「くっさあああー!」
カネン「え!?お兄ちゃんごめんやっぱ臭い!?」
太一「も、もしかして妹も・・・」
  妹はモジモジと照れたように俯き、
カネン「うん・・・お兄ちゃんが捨てた・・・賞味期限切れのチーズだよ」
  チーズはやばい!
  虫が湧くレベル!
カネン「私の事・・・捨てないよね?」
太一「・・・ぐっ チーズはさすがに・・・」
モエ「捨てるに決まってんでしょ!? 臭すぎるのよあんた!」
太一「そ、そんな言い方可哀想だろ! お前だって臭いんだから!」
モエ「は、はあ!? なによ怒っちゃって! 太一は私を捨てたいってこと!?」
太一「そんな事、一言も言ってな・・・」
モエ「もういい知らない」
モエ「一生、妹と風呂でエロい事してろエロ雄!」
  そう言って彼女は飛び出していった
太一「まっ・・・まてよ!」
カネン「追いかけなくていいよお兄ちゃん」
太一「え」
カネン「あの人はああやって気を引きたいだけ。 ただのワガママだよ」
  確かにあいつはワガママで口が悪い女だ・・・
  でも・・・でも・・・
太一「泣いてる女の子は放っておけない・・・」
カネン「優しいんだね・・・お兄ちゃんは」
カネン「そうだよね・・・私みたいな妹嫌だよね・・・ 私の事はいいから、あの人を追いかけて・・・」
太一「何言ってんだ。お前も来るんだよ」
カネン「え?」
  俺は妹の手を掴み、外へ飛び出した。

〇住宅地の坂道
太一「待てよ!!!」
モエ「・・・え」
  振り向いた彼女はやっぱり泣いていた。
  そんな彼女が愛おしく・・・だからだろうか。
  俺は恥ずかしげもなく、こう叫んだ。
太一「今から3人でお風呂入ろうー!!!」
モエ「・・・」
カネン「・・・」
  棒立ちでドン引きの美少女ふたり。
  変態過ぎたか・・・

〇白いバスルーム
  そんなことはなかったようだ
カネン「ちょっとお兄ちゃんあっち向いてて・・・ 恥ずかしくて脱げない・・・」
モエ「見たら殺す見たら殺す見たら・・・」
  みんな変態だった。
太一「俺は決してお前らを燃えるゴミに出したりなんてしない」
カネン「お兄ちゃん・・・」
モエ「太一・・・」
太一「異臭を放とうが、腐ろうが、虫が湧こうが・・・俺たちはずっと一緒だ」
  嬉し涙を流しながら2人は俺にくっついてくる。
  幸せだ・・・臭いけど。

〇CDの散乱した部屋
  夢から醒める。
  異臭が充満したこの部屋で。
  きっと、俺はずっと捨てられないんだろう。
  だって捨てなければ永遠に俺のものなのだから。
太一「・・・でもまあ、虫が湧くのはちょっとな」
  俺は2人の死体に虫が湧いていないかをチェックするために、押し入れを開いた。
  2人は、俺が殺したままの姿で並んで横たわっていた。
  今回も燃えるゴミに出すのは見送りだな。

コメント

  • 発想が新しくてとても楽しく読ませて頂きました。考えたこともなかったけど、そういうのがあったら楽しいですよね。違ったバージョンもあれば読んでみたいです。

  • 出たしからテンポ感が良くてどんどん読んでいくうちにあれ?最後、、、サイコパスなお話?ってゾッとしました笑でもすごく面白かったです!

  • 不思議な小説で、最後はゾクゾクしました。とてもおもしろかったです。ゴミをなかなか捨てられないときに限って、生ゴミが腐ったようなにおいに敏感になります。でも死体のにおいとなると、きっと我慢できなきくらい強烈なニオイのはずです。そういうニオイの物体とともに共存しているほうがむしろ、変態ではないかと思いながら読んでいました。不思議と鼻のまわりがくさい気がします。どっぷりとストーリーに浸かってしまったよう

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ