終末世界の恋愛事情

篠也マシン

人類史上最後の恋の行方は!?(脚本)

終末世界の恋愛事情

篠也マシン

今すぐ読む

終末世界の恋愛事情
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇男の子の一人部屋
ユイ「ほら起きて! 学校に行くよ」
レオ「徹夜でラノベ読んでたから眠いんだよ・・・」
ユイ「そんな暇あるなら勉強しなさい! この前のテストは散々だったじゃない」
  ユイは僕の隣の家に住む幼なじみだ。
  彼女が布団をめくった瞬間、ふいに顔が近づく。
ユイ「あ──」
レオ(これは告白のチャンス到来か!)
  僕は昔からユイのことが好きなのだ。
  だが、
「二人とも、早くしないと遅刻するわよ!」
  リビングにいる母の声に、僕とユイは顔をそらす。
レオ(せっかくいい雰囲気だったのに・・・)

〇学園内のベンチ
レオ「おかしいと思わないか?」
  こいつは親友のトモ。ユイとの恋を応援してくれている。
トモ「何が?」
レオ「ユイといい雰囲気になると、必ず邪魔が入るんだ」
レオ「僕たちが結ばれるのを防ごうと、秘密の組織が暗躍しているのかもしれない」
  ラノベの設定みたいなことを真顔で言った。
  もちろん冗談である。
  しかし、
トモ「ついに気づいてしまったか・・・」
レオ「へ?」
トモ「君とユイは、この星最後の人類なんだ」
トモ「つまり、君たちが結ばれず、子供が生まれなければ人類は滅亡する」
トモ「けど彼ら『解放派』は、そんな重責を担わせないように、君たちが恋人になるのを防いでるんだ」
  ほう。トモにしては気の利いた冗談だ。
  僕は話に乗っかる。
レオ「すると、僕とユイ以外の人間は・・・」
トモ「ああ、人に造られしもの――ロボットだ」
トモ「黙っててすまない」
レオ「気にしてないさ」
レオ「トモは『解放派』ではないんだよな? 僕を応援してくれてるんだし」
トモ「俺は、過酷な運命だからこそ結ばれてほしいと願う『恋愛派』さ」
トモ「もちろん、君たちの気持ちを尊重した上でね」
レオ(設定が無駄に凝ってるな)
トモ「俺が打ち明けたことは秘密だぞ」
トモ「派閥間で決めた協定違反で、スクラップにされちまう」
レオ「ああ。二人だけの秘密だ」
レオ「最後に君がロボットである証拠を見せてくれ」
  冗談に付き合うのも疲れてきた。
  からかうように言うと、
トモ「いいぞ」
  トモは皮膚をめくり、金属の骨格を見せた。
  僕は何度も頬をつねったが、目が覚める気配はなかった。
  トモの話は夢じゃなく現実らしい。

〇学園内のベンチ
トモ「大丈夫か?」
  僕は真実を知ったショックで、意識を失っていたようだ。
レオ「大丈夫だ、問題ない」
  僕は元々ユイが好きなのだ。
  人類が滅亡の危機に瀕していようがやることは変わらない。
  けど、
レオ(失敗は許されないわけか)
  これまで、ユイにフラれても別の誰かを好きになればいいと思っていた。
  だがユイ以外に女の子はいない。
  ユイが僕を好きだと確信を持てるまで、告白するのは危険だ。
レオ「なあ、トモ。これからも応援を頼む」
トモ「もちろん」
  僕はトモの機械の腕とがっちり握手をした。

〇男の子の一人部屋
トモ「調査結果だ」
  僕はトモに頼み、ユイの理想のタイプを調べてもらった。

〇教室
ユイ「うーん、朝寝坊せず、勉強ができる人かな」
ユイ「なんだかレオと真逆のタイプね」
トモ「なるほど」
トモ「ちなみに今好きな人はいる?」
ユイ「いないよ」
ユイ「さっきも言った通り、レオなんかタイプじゃないんだからね!」

〇男の子の一人部屋
レオ(ツンデレキャラのテンプレかよ・・・)
  とはいえ、ユイが僕を好きという確信はもてない。
  ユイの言った理想を目指すのが一番か。
「トモくーん、ちょっとこっちに来てくれない」
  リビングからの母の声がした。
  もちろん母もロボットである。
  トモによると、僕とユイの両親は物心つく前に亡くなったらしい。
  今の母がロボットであることも、少しずつ受け入れられるようになった。
  しかし、一つ問題があった。
トモ「激しい闘いになると思うが気にするな」
レオ「はあ」
  ユイといい雰囲気になるのを度々邪魔してきた母は『解放派』である。
  『解放派』と『恋愛派』は、日夜激しい闘いを繰り広げているそうだ。
レオ(なんか爆発音が聞こえたような・・・)

〇男の子の一人部屋
  その後、
ユイ「ほら、学校に行く──」
ユイ「って起きてる!?」
レオ「さあ、一緒に行こうか」

〇教室
ユイ「レオ、またテストの成績が──」
ユイ「って学年6位!?」
レオ「本気を出せばこんなもんさ」
  努力を続け、僕はユイの理想の男へと進化した。
  そして、

〇学校の屋上
ユイ「話って何?」
  僕の呼び出しに顔を赤らめ、もじもじと動くユイ。
レオ(これはイケる! 告白成功確率は90%はあるぞ)
レオ「最近、朝寝坊しなくなっただろ?」
ユイ「そうね」
レオ「テストはいい成績だっただろ?」
ユイ「そうね」
レオ「それで、話というのは──」
  いや、待て。
  まだ100%ではないんだ。
  念のため聞く。
レオ「ユイの理想のタイプって、朝寝坊せず、勉強ができる人なんだよな?」
ユイ「うん」
ユイ「ただし、それは最低限の話ね」
レオ「へ?」
ユイ「みんなから慕われて、引っ張ってくれる人がいいな」
ユイ「ほら、生徒会長とかって素敵だと思う」
レオ「へ・・・へえ」
  僕は近々生徒会長選挙があるのを思い出した。
ユイ「話ってそれだけ?」
レオ「うん・・・」
  どうやら人類最後の女の子と結ばれるには、もっと努力を続けないとダメらしい。
  僕は温かなため息をつき、空を見上げた。

〇学校の屋上
  私には、誰にも言えない秘密がある。
  私とレオはこの星最後の人類。
  つまり、レオ以外に男の子は存在しないのだ。
  親友(ロボット)から聞かされた時は冗談だと思った。
  レオのことは昔から気になってたけど、真実を知って気持ちが変わった。
ユイ(簡単に好きになってたまるんもんですか!)
  状況に流されて付き合うなんてまっぴらごめんだ。
  私はレオが理想の男の子になるまで、絶対に告白を受け入れるものか、と強く決意したのである。
  ――人類史上最後の恋が実るまで、まだまだ時間がかかりそうだ。

コメント

  • 最後の人類の2人が、その事実を知っても明るくポジティヴに生きているのが清々しいです!真っ直ぐ単純なレオは応援したくなりますね!

  • 残された最後の男女って、ちょっとロマンティックですよね。
    でも、彼女も知っていたのが意外でした。
    流されたくない気持ちもわかる気がします。笑

  • 周りに人、ロボットがいるとこう考えるだな~と、意外とシビアな世界ですねw。でも男の子も理想に近づく努力を始めたので今後の展開そしてドキドキが止まりませんね。お母さんは何処から来たのか、誰の子供なのか色々謎が残って面白かったです。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ