エピソード1(脚本)
〇モヤモヤ
これは私が実際に体験した話です
あれは中学3年生の時
私は都内の塾に通っていました
塾は夕方の6時に始まり
終わるのが夜の9時過ぎ
〇開けた交差点
塾は大通りに面した場所にあったので
街のネオンや車のライトのおかげで
夜道でも真っ暗ではありませんでした
その日は帰り道が同じ友達と一緒に
自転車で帰っていました
私「寒いなあ・・・」
友達「そうだな。雪降りそう」
私「手がかじかんでるよ。早く帰ろう」
友達「だな。スピードアップだ!」
自転車を並んでこぎながら、そんな会話をしていました
僕たちは寒いのを我慢して、スピードを上げていきました
寒さに凍えながらペダルを強く踏みつけていると
前方のガードレールの前に
白い服を来た女性が立っていました
僕はこの時、違和感を覚えました
私「・・・!?」
この寒さの中、薄手の白いワンピース
半袖から伸びた真っ白な肌
風になびかれた長い黒髪が、横顔を覆っていました
そして女性は
ガードレール越しから車道の方に顔をむけて
何かを話している様子に見えたのです
私「・・・」
私「あの人、寒そうじゃない?」
友達「だな。こっちが寒くなるわ」
私「な。誰としゃべってんだろ?」
友達「さあ?車道に誰かいるんじゃねえ?」
そんな会話をしながら
女性の横を通り過ぎようとした
〇血しぶき
その時です
女性がくるりと振り返り
僕らに向かって言ったのです
白い服の女「気をつけてね」
私「ええ!?」
僕たちは急ブレーキをかけ、今しがた通り過ぎた女性の方に振り返りました
時間にして1秒か2秒です
いないのです
先ほどまで、そこにいた女性が
いなかったのです
私「いたよな・・・?」
友達「いた・・・。聞いたか?」
私「「気をつけてね」って・・・」
友達「・・・だよな」
〇街中の道路
僕たちは顔を見合わせました
脇道に入ったのではないか?
ビルに駆け込んだのではないか?
車に乗ったのではないか?
僕たちは自転車を降りて女性を探しましたが、どこにもいなかったのです
私「脇道なし、入れるビルもない」
友達「車も止まってないよな・・・」
「・・・」
私「と、とりあえず、自転車引きずって帰らねえ?」
友達「だな・・・気をつけることに越したことは無い」
僕たちは、女性の言葉が気になってしまい
自転車をひいて、車通りの少ない道から帰ることにしました
〇大きな箪笥のある和室
そして、次の日の夜
僕は家で何気なく夜のニュースを見ていると
テレビ画面から見慣れた光景が目に飛び込んで来ました
それは塾からの帰り道
昨日の大通りが映っていたのです
トラックが歩道に突っ込み、死傷者が出たというニュースでした
その場所は、僕たちが女性を見た場所の数100メートル先でした
私「あの道は・・・」
私「いつも通る道」
私「もし・・・」
私「もし、あのまま走っていたら・・・」
そう考えるとゾッとしました
〇壁
一体あの女性は誰だったのでしょうか?
なぜ私たちに警告してくれたのでしょうか
現在でもあの場所を通ることがありますが
あれ以来、あの女性の姿を見ていません
ですが
いつもあの言葉が頭をよぎり
車道側を歩かないようにしています
白い服の女「気をつけてね」
完
経緯はともかく、結果だけを見れば命拾いをしたので何よりでした。作者さんが「見てしまう体質」とのこと。実録はフィクションともまた違ったリアルな味わいがありますから、別の体験談もぜひ読んでみたいです。
女が正体不明という恐怖感や、事故に遭っていたかもという恐怖感の中に、助けてもらったことによる安堵感がリアリティを増しますね。恐ろしい体験談ですね。
確かに怖い話ですね。
でも助けられたと考えると、そうも言ってられないかもしれませんね…。
私も怖いと言うか、こういう体験したことありますが、話すと長くなるのでまたの機会に…。