がらんどうの瞳

はじめアキラ

第二十四話『間奏曲Ⅷ』(脚本)

がらんどうの瞳

はじめアキラ

今すぐ読む

がらんどうの瞳
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇血しぶき
商人「さてさて、皆様方。ここまで奥田冴子の物語を見て頂き、恐悦至極にございます」
商人「そろそろ皆様も気になっている頃でございましょう?」
商人「いくら息子の復讐とはいえ、ここまでのことをした奥田冴子に本当に罰は下らないものなのかと」
商人「そして、彼女が差し出した代価の徴収はいつなのかと」
商人「こういったことのタイミングは、完全にその人によって異なるものでございますからね」
商人「一概にいつ、ということはわたくしにも申し上げられないのでございます」
商人「ですがほら。どうやらお待ちかねの時は近いようですよ?」
商人「彼女は自分にはもう何もないと思い込んでいるようですが・・・・・・実際は、どうなのでしょうね?」

〇モヤモヤ
  第二十四話
  『間奏曲Ⅷ』

〇住宅街の道
  やっぱり、冴子が何かをやっているんだろうか。
  あえて珠理奈には内緒で冴子の元を訪れた晴翔だったが、
  話を聴いた結果ますます晴れないものを感じてしまうことになったのだった。
北園晴翔(僕がおばさんを疑っていることは、おばさんも薄々気づいたはずだ。でもおばさんは・・・自分はやってない、って言わなかった)
  むしろ聞いたのは。
  殺したい気持ちを消すことができないという、本心のみ。
北園晴翔(おばさんの立場なら当然だ。僕だって本当は・・・・・・小河原達のこと、ぶっ飛ばしてやりたかったんだから。でも)
  それでも、人を殺すことが正しいなんて言えないのだ。
  その理由をうまく説明できないけれど、多分──
  一度復讐を始めてしまったら、その連鎖を止めることができなくなってしまうからではなかろうか。
  数年前に見た、とあるアニメの主人公がこんなことを言っていた。撃っていいのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ――と。
  自分はまだ小学生だから、難しいことが何もかもわかっているなんて言えない。
  それでも、なんとなく分かるような気がすることもあるのだ。
  それは多分。自分にとっては憎い仇でしかない相手が。
  誰かにとっては、命よりも大切な存在かもしれないということなのではないか。
  己が復讐をするということは。同じ復讐を、自分もされる覚悟を持たなければいけないということではないか。
  己が殺したい相手は、己に苦しみを与えた仇に他ならない。
  でもその相手を大切に思う人間に大概罪はない。罪もない人間に、同じ苦痛を耐えることになる。
  それを理解した上で、刃を振り下ろさなければいけないということなのではないか。
北園晴翔(復讐なんて奏音君は望んでない。それよりもきっと、おばさんに笑って生きて欲しいと願っている。でも)
  その冴子が。奏音がいない世界では笑えないと心から思っているなら。一体どうすれば、冴子を救うことができるのだろう。
  自分ではけして、奏音の代わりになってあげることなどできないというのに。
北園晴翔「!」
  その時。道の向こうから、息を切らしてこちらに走ってくる少女の姿を晴翔は見た。
  目を血走らせ、髪をふり乱した片テールの少女。――間違いない、この間話したばかりの、瀬田彩名ではないか。
瀬田彩名「北園君!」
  彼女は晴翔を見つけると、鬼気迫る表情で言ったのだった。
瀬田彩名「貴方、もしかして今、奥田君のお宅に行っていたんでしょう?そうでしょう?」
北園晴翔「え、え?それが・・・・・・」
瀬田彩名「だったら今すぐ奥田君のお母さまに頼んで!やめさせて、こんなこと!」
北園晴翔「何を言ってるの、君は・・・・・・!?」
  やめさせて?何を?困惑する晴翔の肩を、少女歯凄まじい力で掴んだ。
北園晴翔「い、痛い!離してよ!」
瀬田彩名「私の大切なお兄様が、殺されそうになっているの!私には聞こえない声が聞こえたみたいなこと言ってたわ」
瀬田彩名「きっと、超能力みたいなものであの女が操ってたのよ。きっとそうに決まってる!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第二十五話『間奏曲Ⅸ』

コメント

  • お久しぶりの奇妙な商人さん、いいタイミングでの登場ですね!物語を客観的に見られるよう誘導されてしまいます!
    そして晴翔くん……、このヒキは……

成分キーワード

ページTOPへ