PTAイノベーション!

望月 風花

第一話「カオス」(脚本)

PTAイノベーション!

望月 風花

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  PTAの役員決めはカオスだった

〇教室
保護者「ですからうちは共働きで・・・」
保護者「みんな働いているわよ!」
保護者「「働く」にも正社員、パート、自営など 色々ありますよね?」
保護者「パートだからってしょっちゅう 休めるわけないでしょ!」

  押し付け合い 罵りあい 飛び交う怒号

〇教室
PTA役員「みんな忙しいのは同じです」
保護者「いっそ役員をなくすのはいかがですか?」
保護者「信じられない!」
保護者「PTAの活動を楽しみに待っている 子どもたちを犠牲にする気ですか!」

  同調圧力 自己犠牲の精神 
  まるで──
  日本社会の縮図だ


〇ホール
  さかのぼること1日前
  某会場
伊藤 美咲「Hello everyone (皆様、初めまして)」
伊藤 美咲「My name is Misaki Ito, and I work as a management consultant」
伊藤 美咲「(経営コンサルトをしております 伊藤美咲と申します)」


〇ホール
伊藤 美咲「As for... (つきましては・・・)」

〇教会の控室
  某会場の控室
記者「伊藤社長!  いや~先ほどのプレゼン、お見事でした」
記者「外資系コンサル会社に勤めながら MBA(経営学修士)を取得後に フリーとして独立・・・」
記者「次々と日本の赤字企業を改善し 今やビジネス界の立役者! そのうえ美しいなんて完璧ですね!」
伊藤 美咲「も~褒めすぎですよ」
伊藤 美咲「私だって失敗もたくさんしてきましたし、 落ち込みもする普通の人間なんですから」
記者「いやいや~。  それでも伊藤社長は素晴らしい」
記者「ぜひ活動の根源となる モチベーションを教えてください」
記者「どうしてそんなに頑張れるのですか?」
伊藤 美咲「一言でいうと息子のためです」
伊藤 美咲「私には小学校に入学したばかりの 息子がいるのですが──」
  今の日本を息子に渡したくないんです
記者「ほお~ と、言いますと?」
伊藤 美咲「失われた30年・・・」

〇寂れた雑居ビル
  日本は1990年代のバブル経済崩壊後、
  景気の低迷が続いています
  問題は日本企業の生産性の低さ
  みんなが問題だとわかっているのに
  未だに古い体質がはびこっています

〇オフィスのフロア
  オンラインで済むのに
  わざわざ出社させたり

〇役所のオフィス
  電子化すればいいのに
  紙の資料を保管したり
  メールよりも電話の方が丁寧という
  価値観があったり

〇教会の控室
伊藤 美咲「このコロナ禍で 改善はされつつありますがまだまだ・・・」
伊藤 美咲「今のままでは日本のGDPは 低下する一方です」

〇ビジネス街
  私は1つでも多くの企業の生産性を上げ、
  未来に希望がもてる社会を
  息子にプレゼントしたいんです

〇個別オフィス
  美咲の会社、オフィス
秘書 (島田 律子)「社長、週刊誌の取材、お疲れさまでした」
秘書 (島田 律子)「明日のスケジュールですが 午前は経営会議、〇〇社長との ミーティング、午後は半休となっています」
秘書 (島田 律子)「社長が半休なんて珍しいですね。 急用ですか?」
伊藤 美咲「それが、息子の懇談会に 出席しなくちゃならなくて・・・」
秘書 (島田 律子)「ああ、優太君!  たしかもう6歳ですよね。 大きくなりましたね!」
伊藤 美咲「ふぅ~(溜息)」
秘書 (島田 律子)「・・・」
秘書 (島田 律子)「社長ほど多忙ならお仕事を理由に 欠席されてもよろしいのでは?」
伊藤 美咲「そうしたかったんだけど、これ見て・・・」
秘書 (島田 律子)「なになに・・・懇談会のお知らせ」


〇個別オフィス
秘書 (島田 律子)「これは・・・ なんというか、ひどいですね」
秘書 (島田 律子)「PTAってたしか任意なのに ほぼ強制じゃないですか」
伊藤 美咲「でしょ!」
伊藤 美咲「役員なんてやっている暇はないわよ」
伊藤 美咲「でも聞いた話だと」
伊藤 美咲「万が一くじで役員になっても、 その場で役員をできない理由を話したら 免除してもらえるって」
秘書 (島田 律子)「それで仕方なく・・・」
伊藤 美咲「まあ、息子の担任の先生も チェックしておきたいしね」
秘書 (島田 律子)「社長、間違っても懇談会で 余計なことを言っちゃだめですよ?」
伊藤 美咲「失礼ね! わかってるわよ。それくらい!」
秘書 (島田 律子)(どうかな~)
秘書 (島田 律子)(社長、非効率なことは 徹底的に変えたがるからな~)

〇学校の校舎
  翌日、某小学校

〇教室
担任 田中 一「本日はお集まりいただき ありがとうございます」
担任 田中 一「PTAからお話がありますので そのままお待ちください」
運営委員 橋本 ゆい「皆様、初めまして PTA運営委員会の橋本です」
運営委員 橋本 ゆい「それではさっそく、 PTAの委員決めを行います」
運営委員 橋本 ゆい「本日は広報委員、運営委員、学級委員を それぞれ1名ずつ決めたいと思います」
運営委員 橋本 ゆい「やってくださる方、挙手をお願いします」
運営委員 橋本 ゆい「どなたかいませんか?」
伊藤 美咲(いるわけないでしょ)
伊藤 美咲(何をやらされるのか、 どれほどの業務量なのかもわからないのに)
伊藤 美咲(こんなことビジネスの現場では ありえないわよ)
運営委員 橋本 ゆい「そこのあなた、広報委員はいかがですか?」
西沢 祥子「わ、私ですか?」
運営委員 橋本 ゆい「広報委員はPTAの活動などを記事にして ホームページにアップするだけの 簡単なお仕事です」
西沢 祥子「あ、あの、私・・・  パソコンとかできなくて・・・」
運営委員 橋本 ゆい「パソコンは上級生の親御さんで 得意な方がいらっしゃいますので 大丈夫です」
西沢 祥子「そ、それならやってみようかな・・・ なんて」
伊藤 美咲(あなたそれで本当にいいの?  自分の意志というものはないの!?)
伊藤 美咲(ていうかパソコンができない人に 広報なんて人事の適正もなにも ないじゃない)

〇教室
「あの~。 私たち二人でもいいなら運営委員やります」
運営委員 橋本 ゆい「申し訳ございません。 各委員1人というのがルールでして」
「あ、それなら辞退します」

〇教室
伊藤 美咲(せっかくやってくれる人がいたのに・・・)
伊藤 美咲(意味のないルールなんて 変えればいいじゃない)
運営委員 橋本 ゆい「決まらないと終わらないので ご協力をお願いします」
井上 美紀「あ、じゃあ私が・・・」
運営委員 橋本 ゆい「ありがとうございます。 残るは学級委員ですね」

〇教室
保護者「私、この学校の学級委員だけは 絶対なっちゃダメって聞いた」
保護者「昔はPTA総会とかに出るだけだったのに、 今はイベント事もしなきゃなんだって・・・」
保護者「なにそれ~。イベントはイベントの 委員がいるんじゃないの?」
保護者「コロナ禍で行事が減ったとき、 一緒に行事委員もなくなったのに」
保護者「一部の熱狂的なお母さんが 復活させたらしいよ」
保護者「で、今さら行事委員を募れないから 学級委員が負担することになったらしい」
保護者「うわ、最悪。絶対になりたくない」

〇教室
伊藤 美咲(何なのこれ  完全に時間の無駄じゃない・・・)
運営委員 橋本 ゆい「いないようなのでくじ引きを行います」
運営委員 橋本 ゆい「くじの中には出席番号が書かれた 紙が入っています」
運営委員 橋本 ゆい「公平を期して私が選ばせていただきます」
運営委員 橋本 ゆい「はい出席番号28番、 堀口寧音さんの保護者の方!」
堀口 綾香「そ、そんな私、無理です!」
運営委員 橋本 ゆい「では代理の方をご自身で見つけてください」
堀口 綾香「引っ越してきたばかりで 知り合いなんて・・・」
堀口 綾香「それにうちは共働きで 時間にも余裕が・・・」
運営委員 橋本 ゆい「共働きでも役員を引き受けてくださる お母さんもいます」
運営委員 橋本 ゆい「仕事は理由になりません」
堀口 綾香「そ、そんな・・・」

〇教室
堀口 綾香「本当に無理なんです。 専業主婦の方にお願いできないですか?」
保護者「何ですかそれ!  専業主婦が暇だって言いたいんですか!」
堀口 綾香「は、働いている人よりは 時間はあると思います」
保護者「うちは両親を介護しているので 働きたくても働けないんです!」
保護者「介護より楽なパートにでも頼みなさいよ!」
保護者「パートだってしょっちゅう 休めるわけないじゃない!」
保護者「あ、あなたのところ、 専業でパートもしてないわよね!」
保護者「うちだって小さい子供がいて無理よ」
運営委員 橋本 ゆい「み、皆さん落ち着いてください!」

〇教室
伊藤 美咲(いい大人がそろいもそろって・・・ こんなところ優太に見せられない!)
保護者「ちょっと!」
保護者「あなたのせいでこうなったんだから 言い訳しないで学級委員をやりなさいよ!」
堀口 綾香「そ、そんな・・・」
堀口 綾香「お願い・・・ 助けて!」
伊藤 美咲「言い訳じゃないです・・・」
保護者「え? 何?」

  仕事が忙しいのも、
  パートが休めないのも、
  親の介護があるのも・・・
  「言い訳」なんかじゃない──



〇教室
伊藤 美咲「いいわ! 学級委員は私がやる!」
伊藤 美咲「そしてこんな何の生産性もない組織は 私が変えて見せる!」

〇学校の校舎

〇学校の廊下
伊藤 美咲「はぁ~  何であんなことを言っちゃったんだろう」
堀口 綾香「あ、あの」
伊藤 美咲「はい?」
堀口 綾香「先ほどはありがとうございました!」
伊藤 美咲「ああ、どうも・・・」
堀口 綾香「それで感謝の気持ちを込めて微力ですが、 お手伝いしたいな~なんて」
伊藤 美咲「でも、委員を2人でやるのは ダメなんじゃ・・・」
堀口 綾香「くじを引いた役員さんに聞いてみたら 個人的に手伝う分にはいいって」
堀口 綾香「で、よかったら連絡先交換しませんか?」
伊藤 美咲「え💦」

〇学校の廊下
  こうして私に初めての
  ママ友ができました
  いや、欲しくなかったけど・・・

次のエピソード:第二話 初会議

コメント

  • 主人公がかっこいい😆PTAの実情、リアリティがあって面白かったです!これから美咲が組織にどんなイノベーションをもたらしていくのか期待ですね!

  • ストーリー展開が熱くワクワクしました🤗
    思いの丈を叩きつけてこちらもスカッとしたのですが、結局は貧乏くじ...。これからどんな仲間が増えてどう改革していくのか、楽しみです🙌

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