第二十二話『瀬田彩人Ⅲ』(脚本)
〇黒背景
人気がない公園。冴子からすれば、絶好の場所といっても過言ではない。
まあ、そういうタイミングを待っていたのは否定しないが。
〇シックな玄関
奥田冴子「ちょっと奏音!その怪我どうしたの!?」
奥田奏音「大したことないよ、少し転んだだけ」
奥田冴子「でも、顔色悪いし・・・・・・」
奥田奏音「少し休めば治るよ。どうしても具合悪くなったら病院行くからさ」
奥田冴子「・・・・・・うん」
あの時、もしも自分が無理にでも奏音を病院に連れていっていたら。
息子がどのような目に遭ったのか、早々に知ることができたのだろうか。
いっそ早い段階で警察沙汰にしてしまえば、こんなことには――。
〇おしゃれなリビングダイニング
奥田冴子(苦しかったでしょう。痛かったでしょう。こんなクズどものために)
ぎゅっと鏡を握りしめて、冴子は呟く。
奥田冴子「思い知れ、クズめ」
〇モヤモヤ
第二十二話
『瀬田彩人Ⅲ』
〇公園の砂場
瀬田彩名「お兄ちゃん!お兄ちゃん何処行くの!?」
瀬田彩人「うぐぐぐぐ、ぐ」
駄目だ。彩人は全身に力を入れて逆らおうとするものの、まったく体が自分の思い通りにならない。
本当に、見えない力で操られてでもいるかのようだった。
瀬田彩人(まさか、本当に念力?こんなことがあるってのか?)
腕力にも体力にも自信があったのに、まったく逆らうことができずに勝手に体が動いてしまう。辿りついたのは、公園の砂場だった。
瀬田彩人「何を、させる、気だっ!」
辛うじて出る声で尋ねると、向こうから不気味な笑い声が木霊した。
『お前のようなゴミに相応しい死に方はなんだろうなと考えていた』
瀬田彩人「て、めぇ」
『ゴミはゴミ袋に入れなければいけないだろう?ゴミ袋になれば、汚らしいお前も世間の役に立つはずだ』
『というわけで、掃除を始めようじゃないか・・・・・・ゴミ袋として』
なんだ、と思った瞬間。彩人の腕が、勝手に動き出していた。砂場の砂を掴み、自分の口に持っていく。
瀬田彩人「や、やめっ」
そして。ざらざらざら、と自分の口の中に流し込んでいったのだ。
瀬田彩人「うぶぶぶぶぶぶ!?」
瀬田彩名「な、何やってるのお兄ちゃん!?だ、駄目よそんなの食べたら・・・・・・!」
口の中に入った砂を、強引に飲み込まされる。がり、と何かを噛むような音がして舌に激痛が走った。
砂場の中に、何やらガラス片のようなものが入っていたと知る。
しかも、それが喉を伝って腹の中まで落ちていくのだ。激痛が、喉へ、胸へと落ちていく。
瀬田彩人「ぐううううううううう!!」
体がまったく言うことを聴かない。
吐き出さなければと思うのに、両手はがっしりと口を抑えこんで砂と破片を完全に飲み込んでしまう。
『そら、ゴミならまだあるぞ。そこの植え込みのあたりなんかどうだ。雑草と一緒に、ビニール袋なんかもきちんと拾わないとな?』
瀬田彩人「や、やべ、ろ」
『やめろ?奥田奏音も、やめてほしいとは頼まなかったか?助けて欲しいと泣かなかったか?それを聴いてお前達はどうした?』
『やめてやったのか?やめなかっただろう?だから私もやめない。それ以上の苦しみを受けて、のた打ち回るといい』
瀬田彩人「ざ、ざけん、な」
激マズの口の中のものが完全になくなってしまうと、辛うじて喋ることができるようになる。
瀬田彩人「お、俺は、ちょっと殴っただけだ。一番やべえことをしたのは、俺じゃ、ねえのに・・・・・・何で俺だけ、こんな目にっ」
確かに、奏音を仲間達に“紹介”したのは自分だし、一緒にサンドバックにしたのは事実だ。
でも、性的な暴力には自分は加わっていないし、途中で帰った。
それなのに、自分が代表のようにこんな目に遭わされるなんてまったく理不尽だとしか言いようがない。
『お前達はいつもそれだな』
女の声は冷たい。
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これまで以上に恐ろしい復讐方法に圧倒されました。思い付いてしまう作者様に感服です!
そして冴子さん、狂気が一層増してしまってますね。おぞましい行為への復讐とはいえ。もう戻れないところまで来てしまった感じですね