雲の上の星

鍵谷端哉

エピソード1(脚本)

雲の上の星

鍵谷端哉

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〇おしゃれなリビングダイニング
  母親が料理をしている後ろで、海羽がスマホを見ながら、憤慨している。
海羽「ああ、もう! あいつ、なんで返事してこないのよ!」
母親「忙しいんでしょ、きっと」
海羽「いや、聞いてよ、お母さん。5時間だよ!」
海羽「5時間も返事なしとかありえないでしょ! し、か、も、既読なんだよ! 既読スルー! 信じらんない!」
母親「だから、確認するだけで手いっぱいで、返信まではできなかったんじゃない?」
海羽「いやいやいや。あり得ないでしょ! スタンプの一つくらい押せるでしょ! 逆に返信できないなら既読しないでほしいんだけど!」
母親「それは、あんたの都合でしょ。あんたの感覚を押し付けちゃダメよ」
海羽「あーあ。やっぱ、遠距離は無理だったのかなー」
母親「無理なら、別れる?」
海羽「・・・それはない」
母親「なら、黙って待つしかないわね」
海羽「うううー! このもどかしい思い! 気が狂いそう!」
母親「大げさよ」
海羽「・・・私も、あっち行こうかな」
母親「バカ言うんじゃありません」
海羽「でもぉ・・・」
母親「行ってもいいけど、仕送りはしないからね」
海羽「ええー。そんなの、即詰みじゃん」
母親「だから、黙って待ってなさい」
海羽「・・・ねえ、お母さんも遠距離だったんでしょ? お父さんと」
母親「そうね」
海羽「不安じゃなかったの?」
母親「全然」
海羽「うっそだー!」
母親「・・・まあ、全く不安じゃなかったって言えば、嘘になるかな」
海羽「ほらあ!」
母親「でも、心配するだけ無駄って割り切った感じかしらね」
海羽「そんなの割り切れるもんなの?」
母親「昔は今と違って、スマホとかなかったしね。連絡取るとしたら、手紙か電話くらいよ。そんなの頻繁にはできないでしょ」
海羽「・・・確かに、手紙とか電話とかだとしんどいかも」
母親「でしょ? だから、心配すること自体止めたのよ」
海羽「・・・止めれるの? 不安にならない? 私は、毎日すごい不安なんだけど」
母親「信じてたから」
海羽「信じてた?」
母親「・・・お父さんがね、言ったの。夜空の星だって」
海羽「どういうこと?」
母親「星って、ずっと空で輝いているでしょ?」
海羽「うん」
母親「例え、昼間、太陽が輝いているせいで見えなくても、厚い雲が空にかかっても、雨が降っても、雪が降ってもずっと星は輝き続けてる」
母親「それと同じだって。いつでもどこでも何があっても、僕は君を想って輝いている。だから、見えなくても信じて待っていて欲しいって」
海羽「・・・・・・」
母親「その言葉を聞いて、安心したっていうか・・・好きになったって言うか、信じることができたのよ」
海羽「くっさー! そんなのでおちるなんて、お母さんチョロすぎー」
母親「うるさいわね」
  そのとき、ピロンと受信音が鳴る。
海羽「あっ! 返信来た! ・・・単なる寝落ちだってさ」
母親「ほら、そんなものじゃない」
海羽「・・・考えてみたら、時差であっち深夜だった・・・」
母親「なにやってるのよ」
海羽「ぶぅ・・・」
母親「夜ならよく見えるんじゃない? 星」
海羽「うん。信じて待つことにするよ」

コメント

  • 確かにその通りですね。
    現代は昔より情報技術が発達して、簡単にコンタクトが取れる時代だからこその悩みが多いのかもしれません。
    昔は昔で色々と悩みは多かったのでしょうけど。

  • 読んでいて心温かくなりますね!二世代の遠距離恋愛模様もさることながら、それを本音で話せる母娘関係というのもステキですね。

  • お父さんとお母さんの遠距離中のやりとり、とても素敵です。私の夫はイタリア人なんですが、遠距離恋愛期間、お互いを信頼しあえていたからこそ結婚にいたれたと思います。若い世代の人は、いつでも声やメッセージで満たされないとだめなのですかね、それはそれで愛らしいとは思います。

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