第3話:周『秘めたる哀情と劣情』(脚本)
〇ホテルの駐車場
2022年12月
〇車内
桂 桃華(ももか)「ん、もぉ! この前の婚約パーティーの写真、 できたって言いたかったのに」
桂 桃華(ももか)「昼間、慌てて電話切ったでしょ」
藤原 周(あまね)「悪い。 仕事中は、るりが隣にいるから」
桂 桃華(ももか)「え~。 だから電話したんだけどなぁ」
藤原 周(あまね)「・・・」
桂 桃華(ももか)「あれ? 何かいい匂い。 おフロにでも入った?」
藤原 周(あまね)「・・・るりを手伝ってたから」
桂 桃華(ももか)「ふーん、そう。 また洗ってあげたの? で、私が呼び出されたわけね」
藤原 周(あまね)「・・・」
桂 桃華(ももか)「きゃっ」
藤原 周(あまね)「分かってるんなら、 ・・・さっさとヤラせろ」
桂 桃華(ももか)「・・・」
桂 桃華(ももか)「あはっ。溜まってるなぁ。 一応こっちは妊婦なんだけど」
桂 桃華(ももか)「いいよ。このままホテル行こっ♥️」
藤原 周(あまね)「・・・」
〇黒
なあ、るり──
お前があの時、俺なんか見つけなければ
こんな道を選ぶことはなかったのに。
〇葬儀場
高3の春
母、藤原加奈が死んだ。
朝から晩まで働いて俺を育ててくれた、
若い未婚の母だった。
〇村の眺望
周の母「パパがいつか迎えに来てくれるから、 それまで2人で頑張ろうね」
周(幼少)「うん!」
〇アパートのダイニング
周の母「すごい! また賞をとったの? 周の才能は、間違いなくパパ譲りね!」
周の母「早速、あの人に報告しなきゃ」
周の母「・・・あら、おかしいわ。 アドレス変えたのかしら」
周(幼少)「・・・」
〇田園風景
「あはは!」
周の母「・・・」
周の母「あの時・・・ あの女に子供さえできなければ 今ごろ私と・・・」
周の母「・・・うぅ・・・っく・・・」
藤原 周(あまね)「母さん、またその話・・・」
藤原 周(あまね)(いい加減、もう諦めろよ)
〇火葬場
18年間、姿を見せることのなかった男を
毎日、惨めに想いながら
たった1人の家族だった母は、この世を去った
〇アパートのダイニング
藤原 周(あまね)(『父さん』ね。あんま興味ねーけど)
九条 ハジメ
何度も聞かされた、顔も知らない父の名
藤原 周(あまね)(母さんが亡くなったことくらい、伝えておくか)
藤原 周(あまね)「えっと、何か連絡先が分かるものは──」
藤原 周(あまね)「ん?」
藤原 周(あまね)「一、十、百、千、万・・・1億!? 何じゃこりゃ!?」
藤原 周(あまね)(振込人は、クジョウ。 日付は、俺が生まれる3ヶ月前)
藤原 周(あまね)「父さん!?」
藤原 周(あまね)(げっ、何だよ。 完全に『手切れ金』じゃねーか)
藤原 周(あまね)「バカだな、母さん。手も付けず・・・」
藤原 周(あまね)(捨てられたって認めちまえば、もっとマシな生活が送れたんじゃねーの?)
藤原 周(あまね)「・・・」
〇SNSの画面
藤原 周(あまね)(こんな額をポンっと振り込める男── 九条 ハジメ・・・)
藤原 周(あまね)「出た!」
藤原 周(あまね)「旧財閥系『九条グループ』の代表取締役? マジか? 大物じゃねーか」
藤原 周(あまね)(同姓同名の可能性もあるけど・・・)
藤原 周(あまね)「ん?」
藤原 周(あまね)「1人娘は、九条るり──」
藤原 周(あまね)(・・・腹違いの、俺の妹?)
それからネットで見つけた会社に電話し、
母の名前を出したが
九条ハジメから、折り返しの連絡がくることはなかった。
〇ラブホテルの部屋
女子「え~、周って卒業したら 東京の大学に行っちゃうの!?」
藤原 周(あまね)「ああ。 母さんと・・・父親の母校にな」
藤原 周(あまね)(もしかしたら──なんて期待、 俺らしくねーけど)
女子「そっかぁ~、残念。 じゃあ今日でお別れ?」
藤原 周(あまね)「だな。カレシと仲良くしろよ」
〇大学の広場
上京して2年。
大学生活は思いのほか楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった。
父親探しなんか、もうどうでもいい。
『九条』の名も忘れかけていた頃──
〇美術室
九条 るり「・・・」
九条 るり「この酒器、作ったのあなた?」
九条 るりと出会う────
九条 るり「藤原 あまね、私と一緒にジュエリーを製作してみない?」
第一印象は、凛とした姿が美しい女。
そして──
九条 るり「やってくれるわよね。 あなたの才能と時間を、私にちょうだい」
自分にかしずくのが当然と考えてる、
傲慢でムカつく女。
藤原 周(あまね)(これだから金持ちは・・・)
藤原 周(あまね)「いいよ、手伝う。面白そうだ」
藤原 周(あまね)(この女を使えば、九条ハジメに会えるかもしれない)
真実を知りたい。
そして1度くらい母の墓前に────
『父親』に対する期待が、再び脳裏に沸き上がった。
〇桜並木
るりは俺の顔と指先と、造形の才能に
だいぶ惚れこんでいるようだった。
藤原 周(あまね)「ちゃんとキスしたい。るりが好きだ」
外に連れ出して、愛の言葉を囁けば──
九条 るり「私も大好きよ、あまね♥️」
るりは簡単に、俺の腕の中に降りてきた。
藤原 周(あまね)(チョロい。 九条の1人娘は、とりあえず手に入れた)
藤原 周(あまね)(さて、こっからどうしてやろうか)
宝石のように大切に育てられた、美しく汚れなき令嬢。
普通なら関わり合えないレベルの女を、手の平で転がしている。
実の兄かもしれない、この俺が。
藤原 周(あまね)(ヤベっ。興奮してきた)
その優越感と背徳感は十分、起爆剤になり得た。
頬を撫でて、唇を食み、
舌をからめて咥内をゆっくり味わえば──
目の前にいる『るり』は、ただの女だ。
躰が熱くなるのを止められない。
藤原 周(あまね)(・・・妹に欲情するなんて。 俺も大概だな)
藤原 周(あまね)(もし、ただの勘違いなら。 俺はこのままるりを・・・)
藤原 周(あまね)(いや、それじゃ意味がない。 何のために、時間をかけてこの女を取り込んだ)
九条 ハジメに会って、真実を語らせる。
るりはその為の『持ち駒』にすぎない。
〇漫画家の仕事部屋(物無し)
だが強い意思とは裏腹に、
俺は少しずつ・・・でも確実に、
るりに恋愛感情を抱いていった。
九条 るり「ねえ、あまね。 次はコレでどうかな?」
藤原 周(あまね)(おぉ! 相変わらずセンスいい!)
九条 るり「地金は10Kで価格をおさえて。 小さめのブラックダイヤを、交互に並べようと思うの」
九条 るり「パパの方──Jewelry九条から、 石は安く入手済みよ」
藤原 周(あまね)「準備万端だな。 じゃあ早速、原型を作る。 このアトリエでなら仕事も捗りそうだ」
九条 るり「ふふ、ありがとう。 あまねがいてくれて本当に嬉しい」
藤原 周(あまね)「・・・」
普段はクールなるりが
俺の前でだけ無邪気な笑顔を見せるたび、
惹かれずにはいられなかった。
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(灬º﹃º灬)♡
いいですね、ムフフ( *´艸`)
じれったさと、禁断さと、すれ違いのイチャイチャ大好きです❤ 素直になっちまえよと思う反面、これが良いのだと意地悪なことを思ってしまいます( ˙▿˙ )
言葉に出来ないのに手を伸ばさずにはいられない。
これ、最強ですね(*ˊ˘ˋ*)
気長に続きを待ってます笑
なるほど~😲そういう事情でしたか!
いいところで…気になります!
更新楽しみにしてます✨
そうだったのか!と驚いたと同時に、まだまだ現在の状況と乖離が…。父親との対面、嫌な予感しかしないですね。
ストーリー上すごく楽しみな展開になってきましたが、もし自分が周だったら、そのまま幸せになって秘密は墓場まで持っていきますね!笑