第十七話『間奏曲Ⅴ』(脚本)
〇おしゃれなキッチン(物無し)
血まみれの、肉塊も同然の姿になって小池校長の体はびくびくと痙攣している。
鏡越しにその光景を見ながら、キッチンに座り込む冴子。
奥田冴子(やっぱりそうだ。相手を監視するだけならさほど疲れない。でも、相手を念力で殺害すると一気に疲労する・・・・・・!)
敵の全容がわかってきた。
あと、殺すべき相手は恐らく四人だ。
村井芽宇。瀬戸彩名。
瀬戸彩名の兄と、その母親。
兄が本当に彩名と結託して奏音を追い詰めたという確証はないので、これに関してはもう少し調べる必要があるが。
奥田冴子(あと四人!四人殺せばきっと私の復讐は完遂する・・・・・・!)
奥田冴子(この鏡で殺してるなんて警察も思ってはいないでしょうけど、そろそろ怪しまれてもおかしくない頃だわ)
全員殺したら、自分はもうどうなってもいい。たが、その前に捕まることだけは避けなければ。
とにかくなるべく早く、全員を片付ける。今はそれを最優先にすることにしよう。
奥田冴子(駄目。今夜中にもう一人片付けたかったけど、目眩が酷い・・・・・・!連続して二人以上は、無理みたいね)
仕方ない、今夜はもう休もう。明日、明日最低でももう一人片付けるためには、何が何でも疲れを取らなければ。
〇モヤモヤ
第十七話
『間奏曲Ⅴ』
〇部屋のベッド
奥田冴子「!?」
外から差し込む光が眩しい。
ぎょっとしてベッドから飛び起きて、冴子は朝になっていることを知る。
時計を見た。起きる予定の時間より、三十分も遅い。
奥田冴子「い、いけない!」
〇家の階段
慌てて布団から飛び出し、服を着替えると部屋を飛び出した。
〇おしゃれなリビングダイニング
一階のリビングに降りれば、とっくに起きてきている夫がキッチンに立って朝ごはんの準備をしているではないか。
奥田冴子「ご、ごめんなさい颯斗さん!私、寝坊しちゃったみたいで・・・・・・!」
奥田颯斗「ああ、おはよう冴子。疲れてるみたいだから、仕方ないよ。朝ごはん、おにぎりだけどいいかな?」
奥田冴子「全然いいというか、ごめんなさいお仕事あるのに私の分まで・・・・・・!」
奥田颯斗「大丈夫大丈夫。具合悪そうだし、座ってて。洗濯機ももう回してるから」
そうは言うが、実際疲れが溜まっているのは颯斗も同じだろう。彼もお世辞にも顔色が良いとは言えない。
奥田冴子(申し訳ないわ、颯斗さんは私のためにお仕事頑張ってくれてるのに・・・・・・)
仕方なく、テレビのスイッチを入れる。するとまた、ニュースがやっていた。見覚えのある路地に、鑑識らしき人達が集まっている。
アナウンサーが、神妙な面持ちでニュースを読み上げていた。
〇ビルの裏通り
アナウンサー「速報が入ってきました。今朝、●●県●●市の路上で、男性の遺体が発見されました」
アナウンサー「持っていた免許証から、木槌丘小学校校長の小池正春さんと見られています」
アナウンサー「小池さんはビルの上から転落死したものと見られていますが、」
アナウンサー「遺体に不自然な損傷が多く、警察は事故と他殺の両方から捜査を進めていくようです・・・・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
奥田冴子(小池の死体、さすがに朝になったら発見されてるわね。まあ、血まみれの肉の塊が見つからないはずもないか)
あの死体を見て、自殺と考えるのは無理があるだろう。警察は優秀だ。
遺体が“一度高所から落下した”だけではないことはすぐに見抜くはずだ。
なんせ、実際に三階の高さから繰り返し突き落として、苦しめて苦しめて殺してやったのだから。
とはいえ、繰り返し落とされたとわかったところで、冴子の仕業と断定することはできないはずである。
なんせ証拠もないし、近くで冴子の姿が目撃されているわけでもないのだから。
奥田颯斗「・・・・・・あれ、奏音の学校の校長先生だよね」
奥田冴子「そうね」
ニュースに気付いて近づいてきた夫に、冴子は頷く。
奥田冴子「いい気味だわ。奏音がいじめられていることにも気付かず、死んだあとも保身のためにその事実を認めなかった男よ」
奥田冴子「私がこの手で殺してやりたかったくらい。天罰が下ったのよ、きっと」
奥田颯斗「冴子・・・・・・まさか本当に君じゃないよね?」
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夫さん、素敵すぎます…!
そして夫婦の会話、見入ってしまいました。世間一般でも重大犯罪人に対して「厳罰」「生きて償い」の両論が出るように、本作でも異なる価値観を出してくれていて、多角的な視野で物語を楽しめます。魅力的なストーリー提供ですね!