第1話 最悪のバースデー(脚本)
〇黒
〇血しぶき
いたい・・・
あつい・・・
「女性が刺されたぞ!」
あたし・・・
死ぬの?
「お姉ちゃん!」
今日、誕生日なのに・・・
「救急車を呼べ!」
まだケーキも食べてないのに・・・
「こんなの嫌だよ・・・!」
ごめん、舞花・・・
〇黒背景
・・・・・・
・・・よ
目覚めよ、勇者よ!
〇城の救護室
松本真理「・・・はっ!?」
松本真理「あれ、あたし・・・」
第一王子ミシェル「よかった・・・ お目覚めになりましたか」
松本真理「・・・!」
第一王子ミシェル「っ!?」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル!」
松本真理「伊達! よくも舞花に手を出したな!」
宮廷魔導師ユーグ「勇者殿!?」
松本真理「だいたいなに、そのコスプレ!?」
松本真理「中学のとき、人のことさんざんオタクだってバカにしといて!」
宮廷魔導師リゼット「勇者様、お止めください!」
第一王子ミシェル「ひ、人違いです わたしは・・・」
松本真理「うるさい! おまえのせいであたしは殺され・・・」
松本真理「・・・あれ?」
松本真理(・・・死後の世界がコスプレ会場なんてことある?)
第一王子ミシェル「まだ混乱されているのでしょう リゼット、頼みます」
宮廷魔導師リゼット「は、はい・・・」
松本真理(傷が・・・消えた!?)
宮廷魔導師ユーグ「とにかく陛下のもとへ行きましょう」
松本真理(まさか、ここは・・・)
〇サイバー空間
松本真理(ゲームの世界・・・とか?)
〇城の救護室
宮廷魔導師リゼット「行きましょう殿下 勇者様もご一緒に・・・」
松本真理「ちょっと待った!」
松本真理「その前に説明してください」
松本真理「ここがどこで、あなたたちが何者で、なんであたしがいるのか!」
宮廷魔導師ユーグ「そんな悠長なことをしている場合では・・・」
第一王子ミシェル「いえ 勇者様のお言葉、ごもっともです」
宮廷魔導師リゼット「わたしからご説明します」
〇魔法陣2
宮廷魔導師リゼット「ここはリュテス王国」
〇東京全景
宮廷魔導師リゼット「勇者様が住まう世界とは別の世界にある国です」
松本真理「ああ、異世界転生みたいな?」
〇城の救護室
宮廷魔導師ユーグ「さすがは勇者殿 ご理解が早い」
松本真理「えっと・・・はい」
第一王子ミシェル「・・・転移、です」
松本真理「え?」
第一王子ミシェル「その・・・ 勇者様はまだ亡くなっていませんから」
松本真理「そうなんですか!?」
松本真理「だってあのとき・・・」
〇テーブル席
松本真理「・・・舞花 伊達なんてやめときなよ」
松本舞花「あたしは大人の男がいいの!」
松本真理「自分より8歳も下、それも高校生に手を出す奴は大人じゃないよ」
松本真理「中学のときだって・・・」
〇教室
伊達大智「あいつブスだけど身体は最高だよな」
男子生徒「言えてるわー」
松本真理「・・・・・・」
伊達大智「ん? なんだ松本か」
伊達大智「でさ、次は3組の宮村を・・・」
男子生徒「おい伊達、女子の前で・・・」
伊達大智「ゲームばっかやってるオタクなんて女じゃねーよ」
〇テーブル席
松本真理(あのとき殴っとけばよかった)
松本舞花「大智くんはあたしを大人の女として扱ってくれてるの!」
松本舞花「お姉ちゃんこそ、誕生日を一緒に過ごしてくれる男の人を探したら?」
松本真理「舞花! まだ話は・・・」
女「見つけた・・・」
松本舞花「え?」
女「オマエさえいなければ・・・ 大智はアタシだけを見てくれる・・・」
女「死ね!!」
松本真理「・・・舞花!」
〇城の救護室
宮廷魔導師リゼット「勇者様はひどい怪我を負われていました」
第一王子ミシェル「リゼットの治癒魔法で一命をとりとめたのです」
松本真理「そうだったんだ ありが・・・」
松本真理「・・・ん?」
松本真理(・・・そうだ!)
松本真理(伊達と勘違いしてこの人を殴っちゃったんだった・・・!)
松本真理「あ、あの!」
宮廷魔導師ユーグ「時間がありません 陛下のもとへ行きましょう」
第一王子ミシェル「・・・ええ」
松本真理(謝りそびれた・・・)
松本真理(けどあの人、なんで伊達とそっくりなんだろ)
松本真理「あれ?」
松本真理「綺麗な刺繍・・・」
松本真理「止血してくれたのかな ・・・誰のだろ?」
〇貴族の部屋
国王ジェラール「この者がリゼットの召喚した勇者か?」
宮廷魔導師リゼット「はい、ですが・・・」
宮廷魔導師ユーグ「どう見ても無力な民です」
〇キラキラ
国王ジェラール「異界の門をくぐった者には神から強力な力が付与されるのだろう」
〇闇の要塞
国王ジェラール「ガンディア帝国の台頭も、召喚した勇者の力あってのもの」
〇貴族の部屋
宮廷魔導師ユーグ「すべての者が神の祝福を得られるわけではありません」
宮廷魔導師ユーグ「皇帝トビアスは無力な勇者を処分しているのだとか・・・」
松本真理「えっ!?」
国王ジェラール「勇者よ そなたの名は?」
松本真理(勇者って・・・ あたしのことだよね)
松本真理「松本真理です」
国王ジェラール「我はジェラール リュテスの王である」
国王ジェラール「勇者マリーよ <門>を通る際、神の声を聴いたか?」
松本真理(伸ばされるとアントワネット感出るな・・・)
松本真理「・・・いや、特には?」
国王ジェラール「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「わたしの責任です」
第一王子ミシェル「リゼット・・・」
宮廷魔導師ユーグ「よくわかってらっしゃる」
第一王子ミシェル「ユーグ!」
宮廷魔導師ユーグ「リゼット殿がご自分の力量をわきまえていればこのようなことにはならなかったのです」
〇幻想3
宮廷魔導師ユーグ「貴重な召喚石の代償に得たものとしては小さすぎます」
〇貴族の部屋
松本真理(・・・なんかバカにされてない?)
国王ジェラール「対策を考えねば クレールと相談し・・・」
国王ジェラール「うっ、ゴホッ、ゴホッ!」
第一王子ミシェル「父上!」
松本真理(・・・父?)
宮廷魔導師ユーグ「これ以上の長居は無用です 陛下を休ませてさしあげなければ」
松本真理「・・・・・・」
〇城の廊下
宮廷魔導師ユーグ「リゼット殿の処分は追って報告いたします」
第一王子ミシェル「待ってください リゼットはリュテスのために・・・」
宮廷魔導師ユーグ「結果が伴わなければ意味がありません ・・・そうでしょう、ミシェル様」
第一王子ミシェル「・・・っ」
松本真理「ちょっと! 処分って人をモノみたいに・・・」
宮廷魔導師ユーグ「ならば勇者殿 貴殿が結果を残せばよろしい」
松本真理「え?」
宮廷魔導師ユーグ「貴殿の働きがミシェル様とリゼット殿の評価に繋がるのですから」
宮廷魔導師ユーグ「健闘を祈ります では失礼」
第一王子ミシェル「ユーグ!」
松本真理「なにあいつ やな感じ!」
松本真理「・・・あっ!」
松本真理「これ・・・ あいつのじゃないよね?」
〇豪華な部屋
第一王子ミシェル「申し遅れました わたしはミシェル、リュテス王の息子です」
宮廷魔導師リゼット「魔導師のリゼットです」
松本真理「どうも・・・ ミシェル王子、あの・・・」
第一王子ミシェル「わたしは王子ではありません」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル!」
松本真理「え? だって王の息子って」
第一王子ミシェル「わたしは愛人の子ですから」
松本真理「・・・!」
宮廷魔導師リゼット「だが、陛下はミシェルが王位継承権を持つことを認めただろう?」
第一王子ミシェル「クレール様を差し置いてわたしが王になるなど・・・」
松本真理「えーっと とにかくミシェル様、さっきは殴っちゃってすみません」
松本真理「知り合いっていうか 妹を弄んだクズにそっくりで、つい」
第一王子ミシェル「いえ・・・」
第一王子ミシェル「それより、わたしを殴ったマリー様の手が痛んでいないといいのですが・・・」
松本真理(えっ、そっち!?)
松本真理「と、ところで どうしてあたしを召喚したんですか?」
第一王子ミシェル「ガンディア帝国に対抗するためです」
〇闇の要塞
宮廷魔導師リゼット「帝国は召喚術を用い、周辺国を侵略しています」
〇岩山の中腹
第一王子ミシェル「リュテスは山に囲まれていますから侵攻を許していませんが・・・」
〇豪華な部屋
第一王子ミシェル「わが国の事情に巻き込んでしまい、申し訳ありません」
松本真理「どっちかって言うと、あたしがお礼を言わないといけない気がする」
第一王子ミシェル「え?」
松本真理「召喚されてなかったらたぶん死んでたし」
松本真理「だから、ありがとう!」
「・・・・・・」
松本真理「ところで あたし元の世界に帰れるんですか?」
宮廷魔導師リゼット「・・・すぐには無理です 召喚石を集めなければ」
松本真理「じゃあそれまでこの国で頑張るしかないか」
第一王子ミシェル「よ、よろしいのですか?」
松本真理「だっていつかは帰れるんでしょ?」
松本真理「戻ったら伊達を社会的に抹殺するとして・・・」
松本真理「その前にふたりの力になりたいの」
第一王子ミシェル「・・・わたしたちの?」
〇城の廊下
宮廷魔導師ユーグ「ならば勇者殿 貴殿が結果を残せばよろしい」
宮廷魔導師ユーグ「貴殿の働きがミシェル様とリゼット殿の評価に繋がるのですから」
〇豪華な部屋
松本真理「あたしが結果を残せば、ふたりの評価に繋がるんですよね」
松本真理「元の世界に戻るまで 助けてくれたお礼がしたいんです」
第一王子ミシェル「ですが、わたしは王には・・・」
松本真理「別に王にはならなくてもいいんじゃないですか?」
第一王子ミシェル「・・・!」
松本真理「やりたいことをすればいいし、やりたくないことはしなければいい」
松本真理「けどその前に、あいつらを見返してやらなくちゃ!」
宮廷魔導師リゼット「・・・そうですね」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル、わたしたちも力を尽くそう マリー様のご厚意に報いなければ」
第一王子ミシェル「でも、できるでしょうか・・・」
松本真理「やらないとなにもできないでしょ?」
松本真理「男も女も度胸、男も女も愛嬌! ミシェル様、わかりました!?」
第一王子ミシェル「は、はいっ!」
〇闇の要塞
〇謁見の間
ガンディア兵「申し上げます!」
皇帝トビアス「何事だ、騒々しい」
ガンディア兵「リュテスに動きが・・・」
〇豪華な部屋
松本真理「そうだ 洗濯できる場所があったら教えてください」
松本真理「持ち主はわからないけど 血が付いたままじゃ返せないし」
第一王子ミシェル「いえ、お気になさらず・・・」
松本真理「ミシェル様のハンカチなんですか?」
第一王子ミシェル「あ! い、いえ・・・」
宮廷魔導師リゼット「お預かりしましょうか?」
松本真理「いや、自分の血が付いてますし」
松本真理「すごい綺麗な刺繍ですよね 止血に使ってよかったのかな」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「・・・マリー様」
宮廷魔導師リゼット「そのハンカチのこと 内密に願います」
松本真理「え? は、はい」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
〇空
〇華やかな裏庭
松本真理「・・・よし、血は落ちた」
松本真理「舞花、泣いてないといいけど・・・ ちゃんとご飯食べたかな」
松本真理「伊達、それにあの女 あいつらだけは許さない」
松本真理「自分のしたこと・・・ 絶対に後悔させてやる!」
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル(マリー様・・・ 刺繍を気に入ってくださったのだろうか)
第一王子ミシェル(あの方なら・・・)
第一王子ミシェル「・・・いや、ダメだ」
第一王子ミシェル「僕は・・・もう二度とだまされない」
〇謁見の間
皇帝トビアス「リュテスの魔導師が召喚術を?」
皇帝トビアス「おもしろい さて、どう出るか・・・」
真理さんのキャラクター、魅力的ですね!芯が強くて行動的で。意味ありげな刺繍入りハンカチのことなど、興味をそそられること満載な第一話ですね!
いつの間にか真理がその転生した世界に馴染んでいく様子がとてもよかったです。しかも、伊達への怒りが良いばねになって、マリーとして立派な戦士になりそうですね!!