エピソード1(脚本)
〇広い公園
健斗「・・・・・・」
大樹「おい、健斗! なに、女の子をジーっと見てるんだよ」
健斗「大ちゃん、違うよ! 僕は・・・」
桔平「はいはい。いいからいいから。で、大樹、いいこと思いついたってなに?」
大樹「ふふふ。よくぞ聞いてくれた、桔平よ。タイムカプセルを埋めようと思ってな」
健斗「・・・タイムカプセル?」
〇神社の本殿
――20年後
神社は物凄く込み合っている。
健斗がお賽銭を投げて、手を叩いてお参りをする。
健斗(今年こそ、彼女ができますように)
大樹「おい、健斗。後ろがつっかえてるんだから、早くしろよ」
桔平「まあまあ。今年こそ、彼女欲しいって、必死で願ってるんだ。その執念に免じて多めにみてやろうよ」
健斗「ち、ちげーって、桔平! そんな願いなんかしてねーよ!」
大樹「なあ、帰りにおみくじ、引いてこうぜ」
桔平「ホント、大樹はおみくじ好きだね。どうせ、今年も微妙に、小吉とかなんだから、やめときなって」
大樹「うっせー」
〇簡素な一人部屋
大樹「じゃあ、改めて・・・明けまして、おめでとう!」
桔平「かんぱーい!」
健斗「かんぱーい!」
缶ビールで乾杯する3人。
大樹「ぷはー! やっぱ、ビールうめー」
健斗「ホントは、こういうときは、日本酒なんだろうけどな」
桔平「にしても、今年も、相変わらず、このむさ苦しいメンバーかー」
大樹「何言ってやがる。桔平は今年、結婚するんだろ? 来年はこうやって集まれるかわかんねーだろ」
桔平「そういう大樹だって、アメリカに栄転でしょ? そもそも、日本にいるかわからないじゃん」
大樹「・・・いや、正月くらいは帰ってくるさ」
桔平「俺だって、正月は2人に会うからって、約束はしてるから、集まれるよ」
大樹「健斗の方は・・・心配することでもねーか」
健斗「うっさいな!」
桔平「健斗はそろそろ就職した方がいいんじゃない? さすがに」
健斗「だから、うっさいって! するよ! 今年中に絶対!」
大樹「じゃあ、さっきの初詣で熱心だったのは就職が決まるようにって、お願いだったのか?」
健斗「も、もちろんだよ」
桔平「にしても、あの頃は、大人になってもこのメンバーで集まるだなんて思わなかったのにね」
大樹「あの頃って?」
桔平「小学生の頃さ。1年のときから一緒のクラスでつるみ始めて、20年だよ。長いよね」
大樹「うーん。小学のときは、逆にバラバラになるっていうのが想像できなかったけどな」
健斗「確かに」
桔平「・・・うん。そうだね。3人の関係がずーっと続いてくもんだと思ってた。まあ、実際、そうなってるんだけど」
大樹「そういえば、健斗って、小学の頃、宇宙飛行士になりたいって言ってたよな?」
健斗「へ? そうだっけ?」
桔平「あー、言ってたね。なんか、あの頃、凄い調べてなかったっけ? 宇宙飛行士のこと」
健斗「・・・覚えてないな―」
大樹「それが、今や、立派なニートだもんな」
健斗「ニートって言うな! 今は充電期間なんだよ!」
大樹「あっ!」
健斗「・・・どうしたの、大ちゃん?」
大樹「思い出した」
桔平「なにを?」
大樹「タイムカプセル」
〇森の中
健斗「うわっ! さむっ!」
桔平「早く掘り返して帰ろう」
大樹「えーっと、確か、この辺に埋めたんだったよな?」
ざくざくと穴を掘る音。
健斗「犬とかに掘り返されてないかな?」
桔平「別に臭いのするもの埋めたわけじゃないから、大丈夫じゃない?」
大樹「なあ。健斗と桔平は、何埋めたか覚えてるか?」
健斗「全然」
桔平「俺も」
大樹「俺も全然覚えてねーんだよな。大体、タイムカプセルを埋めたことを思い出せただけでも奇跡だぜ」
そのとき、スコップが何かに当たる音がする。
大樹「お! あったあった!」
桔平「あー、確かに見覚えがある」
大樹「じゃあ、開けるぞ」
カパッと箱を開ける音。
健斗「・・・手紙?」
大樹「あ、封筒になんか書いてある」
桔平「20年後の君へ、だって」
大樹「小学生のくせに妙にポエミーだな」
桔平「じゃあ、それぞれ、自分の分を見ようか」
大樹「おう」
健斗「ああ」
3人が封筒を開けて、中の手紙を開く。
大樹「ぷっ!」
桔平「ははは」
健斗「・・・・・・」
大樹「いやー、ハッキリ思い出したわ。あの時は、理想の大人になってるはずの、自分に向けて手紙を書いたんだよな」
桔平「俺のは、手紙っていうか、年表だ。未来の自分がこうなってるはずのって」
桔平「・・・ちなみに、今の年齢だと、プロサッカー選手で、イングランドチームに所属してることになってる」
大樹「あはははは。中学にはもう、サッカー辞めてたのにな」
桔平「膝を壊したんだから仕方ないでしょ。それより、大樹は?」
大樹「医者だって。世界中を飛び回って、色々な病気の人を治してるはずだってさ」
桔平「まあ、世界中を飛び回ってるっていうのは合ってるんじゃない?」
大樹「まあな。・・・けど、変わるもんだよな。考えることなんて」
桔平「そりゃそうだよ。20年だよ、20年。逆に変わらない方がおかしいって」
大樹「そりゃそうか。小学生の頃と同じ考えって方が、変わってるよな」
桔平「そうそう」
大樹「で、健斗はなんて書いてあったんだ?」
健斗「へ? あー、うん、えっと、ちゃんと宇宙飛行士になってるかって」
桔平「ぷっ! まあ、まずは就職だね」
大樹「そうそう。頑張れよ」
健斗「ははは・・・」
健斗(・・・ちなみに、過去の俺が、今の俺に宛てた手紙には、本当はこう書いてあった)
健斗(『可愛い女の子と結婚してるよね?』)
健斗(・・・うっせーよ! 結婚どころか、彼女さえいねーよ!)
健斗(・・・それにしても、俺、小学生の頃から考えてること、変わってねーな)
終わり。
タイムカプセルのようなものは私は経験がありませんが、子供の頃に描いていた未来とはだいぶ違っています。
もっとしっかりしていると思ったのですが…、中々人生甘くないですね。
男同士の肩肘張らない楽し気な空気感で溢れていますね。成長して変わるもの、変わらないもの、そして変わらない友情、、胸を打つストーリーですね。
未来の自分や過去の自分に問いかけることって、とても素敵ですね。この3人をみていると、夢をかなえることもそうだけど、こうして20年来の友達がいるということはもっと幸せなことだなあと感じました。