復讐させない物語

スヒロン

エピソード2(脚本)

復讐させない物語

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〇中庭
レッダー・クルス「キャット、妹よ! ようやく私のポロポーズを受けてくれたんだね?」
キャット(中身はメイミン)「う、うん・・・ (ホントはイヤよ! 夫の仇!)」
レッダー・クルス「う・・・ふぐっ・・・」
キャット(中身はメイミン)「レッダー・・・お、お兄様?」
レッダー・クルス「いや、嬉しすぎてね・・・ 私も自分のことは知っているよ。 本当は周りから嫌われているってね」
キャット(中身はメイミン)「レッダー・・・ (あの高慢ちきのレッダーが涙を・・・?)」
レッダー・クルス「私は・・・一つだけ不安があったんだ。実は、愛する妹からさえ、嫌われているんじゃないかってね」
キャット(中身はメイミン)「お兄様、考え過ぎよ。 それに、ロハンはいつも「レッダーは誤解されてるけど、いい奴だ」と言っていたわ」
レッダー・クルス「何・・・ロハンが? そうか・・・ 私は奴を殺そうとしていたのに・・・!」
キャット(中身はメイミン)「そうよ! あなたは、赤蛇家の当主なんだから、自信を持って!」
レッダー・クルス「というか、キャット。 なんでロハンのことをそこまで知ってるんだ? ・・・今日も二年ぶりに会ったのに・・・?」
キャット(中身はメイミン)「ええ!? あ・・・そう、文通よ! 文通をしてたのよ! なんせ、元は許嫁なんだから」
レッダー・クルス「そうか・・・」
キャット(中身はメイミン)「さあ、ロハンたちの所にいきましょうよ! メイミンも、待ってるわ」
レッダー・クルス「ああ・・・」
レッダー・クルス「(文通・・・キャットが文通? 赤蛇家の王宮への手紙は、全てまず私の所へ来るはずだが・・・?)」
レッダー・クルス「(それに、キャットの話し方・・・随分と気さくな感じだ。キャットは捨て子だが、貴族らしい話し方を身に着けようとして・・)」
レッダー・クルス「(私の所に『貴族らしい話し方を教えて下さい』と言いに来る程で、その努力家ぶりを好きになったんだ・・・)」
レッダー・クルス「(まるで、平民みたいなしゃべり方・・・まさかな)」
キャット(中身はメイミン)「さあさあ、お兄様! なあにを暗い顔をしてるのよ! ほらほら!」

〇朝日
ロハン「祝言が終わって・・・一週間後にはいよいよ結婚式だな」
メイミン(中身はキャット)「ええ、夢みたいよ! (フフン、ザマアみなさい、メイミン)」
ロハン「ここまで長かったね・・・ 君との結婚を、王宮の貴族に説得するのが大変だったね」
メイミン(中身はキャット)「(メイミンは平民だしなあ)」
ロハン「実力を示すために、危険な洞窟に潜ったり、迷宮をさまよったりと・・・けど、本当に不思議なんだ」
ロハン「君といると、どんな迷宮でも全然道に迷わない・・・まるで予めルートを知ってるみたいだった。魔物の弱点も知っているし・・・」
メイミン(中身はキャット)「ええ・・・そうですね。私も不思議。 (あの後聞いた所、メイミンは予めこの世界の”本”を読んでいたとか・・・)」
ロハン「まあ・・・キャットには少し可哀そうなことをしたけどね」
メイミン(中身はキャット)「ねえ、ロハン・・・どうしてキャットを捨て、私を選んだの?」
メイミン(中身はキャット)「(前から聞きたかったのよねえ。美貌では絶対にメイミンより私なのに)」
ロハン「うん、キャットは美しい。とんでもない美貌だね。けど、君といるとただ単に落ち着くんだ・・・本当にいい子だからね」
メイミン(中身はキャット)「・・・私・・・じゃなくて、キャットはイヤな子だった?」
ロハン「そんなことない! 君が実は捨て子で、けれど赤蛇家にふさわしいようになるため、必死で努力していたと、ロハンから聞いていたよ」
メイミン(中身はキャット)「あの人が・・・そんなことを・・・」
ロハン「ロハンは、よく誤解されてるけど、本当は良い奴だよ」
メイミン(中身はキャット)「・・・」
ロハン「確かに、一見すると高慢で嫌な奴で、すぐに血筋を鼻にかけて、何かと他の家をけなしてくる・・・」
メイミン(中身はキャット)「そーよねえ (私もキライだったなあ)」
ロハン「けれどそれは、実は没落寸前の赤犬家を再興させるために必死でやっていたんだ・・・!」
メイミン(中身はキャット)「ええ? ウチ・・・じゃなくて赤蛇家が没落寸前・・・? 私はずっと裕福だと・・」
ロハン「いや、君が拾われる前は、十二干支家の中で一番貧乏で、僕はかなりお金を貸していたんだ。親友だからね」
メイミン(中身はキャット)「えええ!?」
ロハン「レッダーはなんとか再興させるために、あらゆる事業を初め、銀行から金を借り続けたんだ。当時7,8歳くらいのレッダーがね」
ロハン「銀行員や十二干支家に頭を下げ続け、金を借り・・・そして軍事産業を始めたんだ。常に十二干支では抗争が止まないからね」
メイミン(中身はキャット)「あの人が、他人に頭を下げて・・・?」
ロハン「軍事産業なんて褒められた話じゃないけど、家を復興させて君にいい暮らしをさせたい 「私の家族はキャットだけ」と言っていたよ」
メイミン(中身はキャット)「(お兄様が、そんなことを・・ そういえば、子供の頃はパン一切れだけだったのに、いつの間にかチキンやステーキが出るように)」
ロハン「あいつが、キャットと結ばれて、本当に嬉しいよ・・・! あいつほど家想い、妹想いの奴はいない!」
メイミン(中身はキャット)「そっかあ、お兄様・・・じゃなくて、レッダーがそんなことをね」
メイミン(中身はキャット)「(誤解してた・・・私にいい暮らしをさせるために、そこまで。それも捨て子の私を)」
メイミン(中身はキャット)「(お兄様に謝りたいけど、私は今はメイミンの体・・・)」
メイミン(中身はキャット)「素晴らしい、親友同士ですのね! さあ・・・あの二人の所へ行きましょうよ。メイミンの化粧をもう少しマシにしてあげないと」
ロハン「ああ、そうだな・・・」
ロハン「メイミン・・・なんだか、貴族っぽい話し方を時たまするなあ」
ロハン「それに、「化粧」とかなんの興味もないメイミンが・・・そこを好きになったんだけど」
ロハン「まさか・・・な・・・」

〇綺麗なダイニング
キャット(中身はメイミン)「ふう、我が家は落ち着くわ」
メイミン(中身はキャット)「みんなのんびりしてて、良い家ね碧犬家は」
キャット(中身はメイミン)「ねえ、キャット・・・よくよく話してみると、レッダーさんて物凄く妹想いの人じゃない」
メイミン(中身はキャット)「うん・・・」
キャット(中身はメイミン)「よく知りもせずに嫌ったりして、可哀そうだわ」
メイミン(中身はキャット)「知らないことはないわ! よく知ってるわよ! 私の兄さんなんだから!」
メイミン(中身はキャット)「あんたこそ、この碧犬家は平民のあんたがいきなり来たせいで、貴族連中が騒ぎになって大変だったようね」
メイミン(中身はキャット)「あんたが相手じゃロハンが大変ねえ、やっぱり私でないと・・・!」
キャット(中身はメイミン)「なんですってえ?」
コマチ「お二人とも、実に仲がいいですねえ」
メイミン(中身はキャット)「どこがよ、コマチ!」
コマチ「あら? どうして、私の名前を知っておいででしょうか? メイミンさんとは初対面なのに・・・?」
キャット(中身はメイミン)「あ・・・私が教えたのよ!」
コマチ「まあ、それで良いでしょう。 さて、一週間経つと本当に結婚することになります」
コマチ「お二人とも、本当にそれでいいんですね?」
キャット(中身はメイミン)「う・・・」
メイミン(中身はキャット)「私が、ロハンと結婚して何が悪いのよ!?」
コマチ「フフ・・・はてさて、男女の仲は本当に血筋や戦争よりも難解ですので」
キャット(中身はメイミン)「へえ、スゴイわ。コマチさんってなんでも知ってるのね・・・!」
メイミン(中身はキャット)「(私、コマチは苦手なのよね・・・なんでもお見通しみたいで)」
コマチ「しかし・・・それもまた物語。さあ、キャット様、ロハン様がお話があると」
キャット(中身はメイミン)「え? ロハンが・・・?」
コマチ「さあ、こちらへ」
メイミン(中身はキャット)「ロハン・・・中身が変っても、やっぱりメイミンがいいの・・・?」

〇朝日
キャット(中身はメイミン)「ロハン!」
ロハン「キャット・・・」
キャット(中身はメイミン)「うわあ、この砂場! やっぱり気持ちいいー!」
ロハン「キャット、どうしてこの浜辺を知ってるんだい? ここはメイミンとの二人っきりの場所なのに」
キャット(中身はメイミン)「あ・・・」
ロハン「それに、普段と違ってなんだか凄く気さくな感じになったね・・・キャット・・・まるで昔に戻ったみたいに」
キャット(中身はメイミン)「え・・・?」
ロハン「昔、レッダーが「僕に妹ができたぞ」と言って君を自慢のように見せにきたんだけど・・・」
ロハン「よく笑う優しい子だったね・・・けど、何時の間にが”貴族”らしい冷たさを持つようになった」
ロハン「今の方がキャットらしいよ・・・」
キャット(中身はメイミン)「う・・・・」
キャット(中身はメイミン)「じゃあ、ロハンも実はキャットのことを?メイミンよりも・・・?」
ロハン「どうしたんだい!?」
キャット(中身はメイミン)「答えてちょうだい」
ロハン「いや・・・私の妻はメイミンだけだ」
キャット(中身はメイミン)「良かった・・・」
キャット(中身はメイミン)「(今に戻るからね。あなたの奥さんは、私だけよ)」
レッダー・クルス「ここで、キャットに何をしている・・・?」
ロハン「え・・・?」
レッダー・クルス「やはり私の見てない所で手を出す気か! 許さん!」
ロハン「どわっ!?」
レッダー・クルス「やはり死ねエエエ!!」
キャット(中身はメイミン)「うわー、レッダー!? ちょっと、タンマよ! 落ち着いて!」
レッダー・クルス「どりゃあああ!」

コメント

  • 元鞘に収まりそうで、収まらないジレンマ

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