魔法少女に必要なもの①(脚本)
〇ビルの地下通路
善は急げと私と桃子は娘達のいる部屋に向かった。
青海舞桜(おうみまお)「全く・・・こんな所から気にしないといけないなんてね・・・」
赤城桃子「でも、衣装はヒーローの顔・・・第一印象は大切だものね」
赤城桃子「まあ、私は全身スーツだったけれど・・・顔を知られたのは随分後だったのよね・・・」
青海舞桜(おうみまお)「あれは勿体なかったわよね。スーツって身体のラインも出るし・・・中が貴方だってわかってたら・・・」
青海舞桜(おうみまお)「世の中の男達なんて、貴方の虜だったんじゃなくて?」
赤城桃子「冗談じゃないわよ・・・」
赤城桃子「当時だって、良からぬ目で見てくる人は多かったんだから・・・」
赤城桃子「ファンと言う名の女の敵みたいな人も居たりして・・・危なかったのよ?」
赤城桃子「あぁ、そうよ。スーツは反対だわ」
青海舞桜(おうみまお)「まぁ、そんな奴らが居るなら私もスーツは反対ね」
赤城桃子「でしょう?過保護と言われようとも、守らないといけないわ!」
青海舞桜(おうみまお)「そうね。・・・あぁでも・・・」
青海舞桜(おうみまお)「私達なら最高に活かせそうじゃない?スーツ。ふふ、試着室で着ちゃう?」
赤城桃子「やだもう舞桜さん・・・この年であの衣装はキツいわよ・・・」
青海舞桜(おうみまお)「何言ってるのよ、こないだもヒーロー雑誌の巻頭グラビアに乗ってたくせに」
赤城桃子「いやだ、あんなの見たの?」
青海舞桜(おうみまお)「旦那が定期購読契約してるみたいで、毎号送られてくるのよね」
青海舞桜(おうみまお)「あの人、中々帰ってこないから・・・タンスの肥やしで困ってるんだけど」
諜報を主な生業にしている旦那は中々家に居着かない。
一緒にテレビに映る事もある桃子とその旦那を羨ましく思うこともある。
これからはそこに、秋桜ちゃんも入るのだ。幸せな家庭を国民は羨望の目で見るのだろう・・・
私は桃子が眩しくて、少しだけ妬ましくなる気持ちを飲み込んで視線を前へとむけたのだった。
〇殺風景な部屋
部屋につくと、娘達はサンプル衣装で楽しそうに着せかえごっこをしていた。
青海光李(おうみひかり)「これ、ドレスみたいで綺麗!」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「このスーツもかっこいいよ!」
青海光李(おうみひかり)「こっちは?妖精みたいで可愛いよ!」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「これもナイトみたいで強そうだよ!」
青海光李(おうみひかり)「秋桜ちゃん、カッコいいし似合うけど・・・魔法少女って、感じじゃないよ?」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「そうかな?カッコいい魔法少女も新しいと思うんだけど・・・」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「それにここにあるってことは、着ていいって事でしょう?」
青海光李(おうみひかり)「確かに・・・」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「じゃあ間を取ってこれは?可愛くない?」
青海光李(おうみひかり)「かわいい!なら私はこっちにしようかな!」
青海光李(おうみひかり)「騎士と魔法使いって組み合わせ、かっこよくない?」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「うんっ、かっこいい!」
青海舞桜(おうみまお)「ちょっとちょっと、ストップ!魔法少女から外れてどうするのよ、貴方達・・・」
赤城桃子「スーツもナイトも却下よ!全く、秋桜はパパの影響受けすぎなんだから・・・!」
青海舞桜(おうみまお)「パパの影響・・・男の子っぽいのが好きなのね?」
赤城桃子「そうなのよ・・・」
赤城桃子「今の時代そんなこと、って思うでしょうけど・・・」
青海舞桜(おうみまお)「元気なのはいいことだけどねぇ・・・ほら、二人とも、ここら辺はどう?」
「おぉ~・・・」
青海光李(おうみひかり)「リボンとフリルで可愛い!!」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「可愛いのに赤がカッコいい!!」
青海舞桜(おうみまお)「折角だから、髪色も変えてみたら?」
私が言うのに、スタイリストさんが二人の希望を聴きながら髪の毛を整える。
流石スタイリストさん、髪色が変わると魔法少女感がグッと増した。
赤城桃子「二人とも、とっっっても可愛いわっっっ!!」
桃子が興奮気味に二人を連写する。
赤城桃子「これはもう、国民級の可愛さね!流石私の娘!あぁでも、余計に心配だわ・・・!」
赤城桃子「二人とも、ママ達がちゃーんと守るからね!」
青海光李(おうみひかり)「え?私達が守るんじゃなくて?」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「ママ、ヒーローに戻るの・・・?」
赤城桃子「ちっ、違います!」
赤城桃子「ママ達は、貴方達のサポートをするのよ」
赤城桃子「ね、舞桜さん?」
青海舞桜(おうみまお)「そういうこと」
青海舞桜(おうみまお)「貴方達が最高のパフォーマンスを発揮できるように協力するから、安心しなさい」
例えば、一般人の避難とか・・・と説明するれば、娘達は納得した。
不埒な者達の対処もあるけど・・・まあそこは、言わないでおこう。
純粋なファン達は、娘達の力になるだろうから、ね。
青海舞桜(おうみまお)「さてと、後は何を決めるのかしら?」
赤城桃子「そうね・・・武器や技かしら?」
青海舞桜(おうみまお)「魔法少女っていうと、ステッキからなんか出てるイメージあるけど・・・」
赤城桃子「こちらで設定した出力で色々使えるようになる筈よ」
赤城桃子「ただ、扱えるようになるにはそれなりに特訓しないといけないと思うけれど・・・」
青海舞桜(おうみまお)「あぁ、つまらない怪我はしないで欲しいものね・・・」
和気あいあいと衣装の担当者と話をする娘たちを見てため息をつく。
そして、そこでふと一つの事に気付いた。
青海舞桜(おうみまお)「そういえば、貴方達・・・名前?って言うの?魔法少女名はどうするの?」
青海舞桜(おうみまお)「ほら、なにかあるでしょう?魔法少女なんとか~、とか、○○ピンク~みたいなの・・・」
赤城桃子「そう言えばそうね。戦隊の方は、その地域のものがあったけれど・・・魔法少女はどうなのかしら?」
疑問に、担当者が名前は自由に決めていいと教えてくれる。
赤城桃子「自由に決められるなら、皆に愛されるような名前がいいわよね!」
桃子の言葉に子供達の目が光る。
口出しされたくないのか『ママ達はお外に出てて!!』と言われて、私達は笑って部屋を後にした。
〇結婚式場のテラス
娘達を職員に任せて、私達は再びテラスへと戻ってきた。
赤城桃子「さて、舞桜さん。私達が娘達のサポートをするためにも、必要なものがあるわ」
青海舞桜(おうみまお)「必要なもの?」
赤城桃子「ええ。それは・・・」
赤城桃子「公式ファンクラブよっ!!」
青海舞桜(おうみまお)「ファ・・・ファンクラブ?」
赤城桃子「そう!これから娘達を応援してくれる人達の為にも必要なものよ!」
青海舞桜(おうみまお)「そ、そうかしら・・・?気が早くない・・・?」
赤城桃子「早くないわ!公式が有るって大切なことなのよ?」
赤城桃子「公式でルールがあれば牽制にもなる。場合によっては、悪人達を法的に戒めることも出来るのよ」
青海舞桜(おうみまお)「法的に・・・ねぇ・・・」
赤城桃子「そうよ。許可のないブロマイドやグッズの販売、誹謗中傷への対応・・・『公式』だから対応出来ることが世の中にはあるの」
青海舞桜(おうみまお)「それも、現役の芸能人ならではのサポートなのかしらね・・・」
青海舞桜(おうみまお)「頼もしいわ、桃子さん」
赤城桃子「これぐらいは任せてちょうだい、専属の弁護士の先生も探すわ」
青海舞桜(おうみまお)「えぇ。じゃあ、私も自分に出来ることでサポートしようかしら」
青海舞桜(おうみまお)「そうね・・・先ずは公式ファンクラブのスポンサーなんてどうかしら?」
赤城桃子「そう言えば舞桜さんは会社を経営しているのよね?」
青海舞桜(おうみまお)「下着やストッキングのプロデュースをしてるだけだけどね」
赤城桃子「貴方の所のストッキングは私も愛用させて貰ってるわ」
赤城桃子「伝線しにくい素材、豊富な色合い・・・お洒落な模様や飾りは女性ならときめく、素敵な商品ばかりよね・・・!」
青海舞桜(おうみまお)「もう、褒めても何にも出ないわよ?」
青海舞桜(おうみまお)「ああでも、うちは子供向けのタイツや靴下も手掛けているから、グッズを出すなら力になれるかも」
赤城桃子「グッズ・・・そうよね、大切なことだわ・・・」
赤城桃子「衣装やステッキのレプリカは勿論、ステーショナリーセットに靴、アクセサリー、缶バッチにカバン・・・」
赤城桃子「娘達をイメージした商品を皆が買ってくれる・・・こんな嬉しいことはないわね」
青海舞桜(おうみまお)「ふふ、そうね」
青海舞桜(おうみまお)「それに・・・親の贔屓目に見ても、うちの子達可愛いじゃない?」
赤城桃子「完全に同意だわ、舞桜さん・・・!!」
赤城桃子「よーし、任せて!私、池野司令官を納得させる企画書を提出するわっ!」
青海舞桜(おうみまお)「頼りにさせて貰うわ、桃子さん・・・」
元ヒーローと怪人、仲良くなんて無理だと思っていたけれど・・・
娘達をきっかけに協力することができる日が来るなんてね。
少しくすぐったい気持ち。こんなの、怪人の頃には感じたりしなかった。
そんな事を思っていると、色々終わったらしい娘達が駆けてくるのが見えた。
青海光李(おうみひかり)「おかーさーん!!大変だよー!!」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「私達、大切な事を忘れてたのー!!」
赤城桃子「なぁに?・・・あっ、変身コンパクト!?それは無くちゃ駄目よね!」
赤城秋桜(あかぎこすもす)「それも欲しいけど!そーじゃなくて・・・!!」
「私達・・・マスコットが居ないんだけどっ!!?」
娘達の叫びが重なる。
マスコット。
娘達の魔法少女デビューには、ちょっとした課題が山積みのようだった。