がらんどうの瞳

はじめアキラ

第十一話『間奏曲Ⅱ』(脚本)

がらんどうの瞳

はじめアキラ

今すぐ読む

がらんどうの瞳
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校の廊下
  警察の人が来ているのを見た。放課後。北園晴翔は不安になって友人を廊下に呼んでいた。
  小河原海砂のことは自分達だって好きではなかった。でも。
北園晴翔「太田川先生も死んじゃって、その翌朝小河原さんまでもってなると・・・・・・やっぱり何か、おかしいと思うんだ」
  陽翔の言葉に、長谷川珠理奈は頷いた。
長谷川珠理奈「あたしもそう思う。ていうか、警察の人の話をちょろっと聞いちゃったんだけどさ」
長谷川珠理奈「太田川先生も小河原さんも、明らかにヘンな死に方してたみたいなんだよ」
北園晴翔「というと?」
長谷川珠理奈「太田川先生は便器の・・・・・・その、うんちの中に頭突っ込んで窒息してたし、」
長谷川珠理奈「小河原さんは明らかにただの首吊りとは思えないくらい強い力で首を絞められてたって」
北園晴翔「ええ?」
  どういうことなんだろう。お互いに困惑して顔を見合わせるしかない。まるでミステリーだ。
北園晴翔(てっきり、警察は小河原さんと一緒にいた発見者の・・・・・・村井さんを疑ってるのかと思ったけど)
北園晴翔(でも、すごい力で首を絞められてたって、村井さんにそこまで力があるとは思えないし・・・・・・)
  そこで、ようやく晴翔はピンときた。一体珠理奈が、何を疑っているのかということを。
北園晴翔「珠理ちゃんは・・・・・・奏音君が祟りを起こしていて、それで二人を殺したかもって思ってるの?」
長谷川珠理奈「・・・・・・うん」
  躊躇いがちに、珠理奈は頷いた。
長谷川珠理奈「だって普通の事件や事故じゃないじゃんか。明らかに、変だよ。しかも死んだ二人って、奏音に恨まれててもおかしくない二人だよ?」
長谷川珠理奈「先生はいじめを認めなくて助けてくれなかったし、小河原さんはいじめた一人だし」
北園晴翔「言いたいことはわかるけど・・・・・・」
長谷川珠理奈「あたしだったら。自分が死んだあとで、いじめなんかありませんでしたって顔であいつらがのうのうと生きてたら・・・・・・」
長谷川珠理奈「許せなくて祟ってやろうと思うかもしれない」
  言いたいことはわかる。不思議な力で、妙に因縁のある二人が死んだかもしれないともなれば。でも。
北園晴翔「僕は・・・・・・違うと思う」
  晴翔は首を横に振った。
北園晴翔「確かに僕だって、あいつらのことは許せないし。奏音君の苦しみを思い知って欲しいとは、正直思ってたよ」
北園晴翔「でも・・・・・・僕や珠理ちゃんは“祟ってやる”って思うかもだけど、奏音君は違うんじゃないかって」
長谷川珠理奈「どうして?」
北園晴翔「奏音だからだよ。・・・・・・珠理奈も知ってるだろ、あいつがどういう奴だったのか」

〇黒背景
  覚えている。奏音が、ヒーローに憧れる少年だったことを。
  正義感が強くて、みんなが嫌がる掃除も真っ先にやったし、困っている人がいたらまったく見知らぬ他人が相手でも躊躇わなかった。
  自分は何度も見ている。奏音が、下級生たちの荷物を代わりに運んでいるところを。
  落とし物を拾って交番に届けるところを。それから――それから。
奥田奏音「戦隊ヒーローなんて、本当は存在しないって知ってるんだ」
  覚えている。いつか、彼が言った言葉を。
奥田奏音「でも、ヒーローって呼ばれてもいい人達は、この世界にたくさんいるんだぜ」
奥田奏音「警察官とか、消防署の人だけじゃねえんだ。小さなこと、大きなこと」
奥田奏音「いろんなことで誰かを助けてる人は、みんなヒーローなんだ。誰か一人でいい。本気で守れたら、その人はきっとヒーローなんだよ」
  忘れるはずがない。あんなにも、心を揺らされたのだから。
奥田奏音「だから俺もヒーローになりてーんだ!安心しろよ、ちゃんと晴翔のことも守ってやるからな!」

〇学校の廊下
  けして、曲がったことを許さなかった、あんな少年が。
  果たして、自分がいじめられたからといって祟ったり呪ったりということをするだろうか。
北園晴翔「太田川先生や小河原さんにも、死んだら悲しむ家族がいる」
北園晴翔「僕達にとってはどんだけクズだったとしても・・・・・・誰かにとっては大切な家族でさ」
北園晴翔「奏音君なら、きっとそういうこと考えちゃうと思うんだ。だからきっと、奏音君じゃない」
長谷川珠理奈「晴翔・・・」
  珠理奈は黙り込んで――それ以上は何も、言わなかった。

〇モヤモヤ
  第十一話
  『間奏曲Ⅱ』

〇おしゃれなリビングダイニング
  あの手鏡を使うと、やはりかなり疲労するのは間違いないらしい。冴子は外の様子を見て眉を顰めた。
  少しだけ寝るつもりだったのに、いつのまにか夕方である。
  今日は買い物にも行っていないし、そもそも昼ごはんを完全に食いっぱぐれてしまった。
  連続で鏡を使ったのは、ちょっとまずかったのかもしれない。
奥田冴子(流石に、毎日これをやってたら生活が成り立たないわ)
  ポケットに手鏡を仕舞うと、冴子はキッチンへと向かった。

〇おしゃれなキッチン(物無し)
奥田冴子(明日は一日お休みにして、今後の計画を慎重に練りましょう。・・・・・・良かった、卵はあるから、天津飯くらいは作れそう)
  自分一人ならカップめんで済ませてしまえばいいが、今日は夫も帰って来る日だからそういうわけにもいかない。
  少しはまともなご飯を食べさせてあげたかった。最近、かなり心配をかけているという自覚があるから尚更に。
奥田冴子「!」
  唐突に、ぴんぽーんとインターフォンが鳴る。

〇シックな玄関
  ひょっとして、と玄関で覗き穴を見れば、見慣れた少年少女の姿が。
奥田冴子「珠理奈ちゃん、晴翔君。また来てくれたの?」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第十二話『間奏曲Ⅲ』

コメント

  • 奏音くんのステキなエピソードが出るたびに、自殺したという事実が胸に刺さりますね。。。珠理奈ちゃんと晴翔くん、この心優しく聡明な2人の視点の提示によって、より多角的に物事が見えてきますね!

成分キーワード

ページTOPへ