RUMOR…あなたの街の怪異譚

伊藤無銘

分身(脚本)

RUMOR…あなたの街の怪異譚

伊藤無銘

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〇レトロ喫茶
  無藤芽衣(むとう めい)さんと喫茶店で待ち合わせた。
  彼女とはとある趣味の関係で、
  定期的に情報交換する間柄だ。
めい「お待たせしました」
  無藤さんは約束通りの時間にやって来た。

〇教室
  第肆話
  『分身』

〇レトロ喫茶
  無藤さんは私と同様に、
  いわゆる怪談奇談の類を蒐集している人であった。
めい「こっくりさんってやったことありますか?」
  お互い最近聞いた怪談などを報告しあっていると、
  ふいにめいさんがそんなことを言ってきた。

〇教室
  こっくりさん。
  日本では70年代に流行った降霊術の一種だ。
  その起源は古く、
  15世紀まで遡ると言われている。

〇黒背景
  無藤さんの友人のともこさん。
  同じくサキさん。
  この二人は同種の怪異に遭遇している。
  いや、
  正確には遭遇はしていない。
  遭遇したのは無藤さんだ。
  無藤さんがこの二人のドッペルゲンガー(もう一人の自分)を目撃したという話を、
  私は今しがた聞かされたばかりであった。

〇レトロ喫茶
めい「あれっていろいろ派生がありましたよね」
めい「キューピットさんとか」
めい「エンジェル様とか」
  聞いたことはある気がする。
  だが名称ややり方が多少変わっても、
  本質的には同じものだ。
めい「たぶんそういうのの一つなんですけどね」
めい「・・・」
めい「分身様って聞いたことあります?」
  私は聞いたことはなかった。
めい「私も名前を知ってただけで」
めい「詳しいやり方とかは知らなかったんですけど」
めい「さっき話したともことサキさん」
めい「やったことあるみたいなんですよ」

〇レトロ喫茶
  二人が分身様をやっていた。
  それが二人のドッペルゲンガーが現れた原因だと言うのだろうか。
めい「まあそれが関係してるのかどうかはわからないんですけどね」
めい「今のところ他に共通点がないもので」
めい「それで私もやってみたんですよ」
めい「二人からやり方を聞いて」
  分身様を?
めい「ええ」
めい「でも何も起こらなかったですね」
  それはそうだろう。
  あの手の降霊術は一種の自己暗示に寄るものだ。
めい「あ、すいません」
めい「ちょっと失礼します」
  誰かから電話がかかってきたらしく、
  無藤さんはスマホを片手に店の外へと出て行った。
  無藤さんが店を出て行ってから30分近くが過ぎた。
  だが無藤さんはまだ戻ってこない。
  何かあったのだろうか。
  私が何気なく自分のスマホを見ると、
  いつの間にか無藤さんからのメッセージが届いていた。
  だがこれは・・・
  確か無藤さんがこの喫茶店にやって来た時間ではないか。
  メッセージの内容はこうだ。
  『すいません。電車が遅延してるので遅れそうです』
  これは何かの冗談だろうか。
  いや、彼女はこういうことをする人間ではない。
  そのとき、
めい「すいません」
めい「お待たせしました」
  無藤さんが私の対面の席に置かれたカップを見て言う。
めい「あれ、他に誰かいらしてたんですか?」

コメント

  • 3話とも読ませていただきました❤️ありがとうございました❤️
    😊

  • ドッペルゲンガーの目撃談を語るめいさんが、そもそもドッペルゲンガーの存在だった!? 心がざわざわするような恐怖感がありますね!

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