留守は信頼(脚本)
〇湖畔
サリフ(日が暮れてきてしまった)
サリフ「パラディシア殿。出来れば長期的に交流を続けていきたいのだが、このオアシスにまた招いていただけるだろうか」
サリフ「友好関係を築いていけば、信頼を得てオアシスを人々の為に解放していけるかもしれない」
パラディシア「それはつまり婚約を前提にお付き合いという・・・!!」
サリフ「いえ、友人として」
パラディシア「上げて落として、このテクニシャンが!!」
サリフ「あー、また誤解を招いたようですが、パラディシア殿はもう少し慎重に人間と会話された方がいい。邪推な者も多くおります」
サリフ(まさにオレも貴方を利用しようとしている・・・。 だが、双方にとってよりよい未来を築きたい)
パラディシア「確かに我は人間とあまり交流したことがない。同じ種族とも数十年会えず終いだ。久しぶりの交流に舞い上がり過ぎたようだな・・・」
サリフ(孤独ということか・・・。 オレもそんな時期があった)
サリフ「これからは友として私がおります。互いの話を沢山してまいりましょう」
サリフ「貴方のことをもっと知っていきたい」
パラディシア「・・・サリフ、ありがとう」
サリフ「? こちらこそありがとうございます」
サリフ「久しぶりに自分の身分を気にせずにお話が出来たように思います」
サリフ「では、本日は日も暮れてまいりましたのでこれで失礼致します」
パラディシア「そうか、ではここに出入り出来る通行証を与えておこう」
パラディシア「湖の水が入っている。これを一滴地面に垂らせば霧が出てここにやってこられる。 我の身体の一部だ。大事に使うのだぞ」
サリフ「貴重な物をありがとうございます。貴方自身だと思って大事に致します」
パラディシア「やはりお主は我を口説いているだろう!?我はこんなに冷静になろうと努めているのになんなのだ!!チャラ男め!!」
サリフ「いや、そんなつもりはまったく・・・」
キバ「バゥ」
サリフ「あ、あぁ帰ろうかキバ。 それではまた、パラディシア殿」
パラディシア「あ!逃げるかのようにおのれら!」
パラディシア「絶対にまた来るのだぞ!! 待っているからな!!」
〇荒野
サリフ「っと、ここに戻ってきたのか」
キバ「スンスン・・・((周りを確認して少し首を傾げる))」
サリフ「あぁ、パラゴン殿の領域は幻のように消えてしまったな。 慌ただしいせいもあったが、数分の出来事のようだった」
サリフ「っ!まさか本当に夢ではないよな? 頂いたボトルはどこに──」
キバ「バゥアゥ((サリフのポケットを鼻先でつつく))」
サリフ「!!あった。いつの間にポケットに。 夢や幻でなくてよかった」
サリフ「よし、日が沈む前に帰ろうキバ。 自室に置き手紙をしてきたが、さすがにこの時間まで戻らないと探されていそうだ」
キバ「バゥ」
〇城の廊下
サリフ「──よし」
「『よし』ではありません!!!!」
ジャスアロ「あまりにもご帰還が遅く心配したではありませんか!!サリフ殿下!!」
サリフ「ジャスアロ、さすがテンプレートのように来たな。すまなかった。 だが廊下で声を荒立てるな。 いらぬ混乱を招いたらどうする」
ジャスアロ「いらぬ混乱などではありません!! お供を付けずに皇太子殿下がこんな時間まで行方をくらましているのがそもそも・・・」
サリフ「供ならキバがいた。 とにかくオレの部屋に行くぞっ」
キバ「はむ・・・((騒いでる者のズボンを噛んで引っ張り、サリフの後に続く))」
ジャスアロ「あ、こら!!キバ、やめなさい!! ヨダレだらけになるからやめなさい!!」
ジャスアロ「行くからやめなさい!!こら〜!!(情けなく引っ張られていく)」
〇宮殿の部屋
ジャスアロ「失礼致します」
サリフ「あぁ、適当に座ってくれ。 とりあえず、今日は水源の調査に夢中になっただけで特に危険なことはなかったよ」
ジャスアロ「はぁぁぁ、危険な事など言語道断ですが、行方がわかりませんと皆心配致します(ヨダレだらけになった裾をまくりながら)」
サリフ「・・・ははっ。 お前以外に誰が心配するんだよ。他の連中は面倒が嫌で探しはするだろうけど、自分たちのメンツの心配だろ」
ジャスアロ「殿下、本日はやはり特別に何かあったのでは?不貞腐れるのは久しいです」
サリフ「え。あ、いや不貞腐れてる自覚がなかった悪い。 ただ、疲れただけだ」
サリフ(ここに帰って来たくないと思ったのは何年ぶりだろうか。オアシスの空気が清らかすぎたせいだな)
アレサンド「なんでも淡々としているサリフらしくないじゃないか。 探索に夢中になって心も不調になっているとは、何かあったんだろう?」
サリフ「お前!?アレサンド、なんでここに!」
ジャスアロ「また侍女が勝手に入室させましたね!?しかも、なんですかその寛ぎすぎた格好は!!」
ジャスアロ「いかに隣国の使節団の方で、尚且つ元皇太子でサリフ殿下とマブダチだからと失礼ですぞ!!」
サリフ「うんうんジャスアロ、テンプレートのような説明ありがとうな」
アレサンド「サリフ、君も早く皇太子なんぞやめて騎士になったらいい。王位継承権が低い者は自由な道を生きるのが一番だ」
アレサンド「自由時間が多くなって、暇だからここで湯浴みして寛いでたら眠ってたぞ。いやぁ、最高の風呂だった〜」
ジャスアロ「そういうことは宿泊先でやってください!!まったく、殿下の許しがいつもあるからと・・・」
サリフ「いいよ別に。疲れているならここで眠っていってもかまわない」
アレサンド「サリフならそう言ってくれると思ったよ。お泊りセットなら用意してきたんだ♪」
ジャスアロ「なりません!! そんな事を続けているから殿下に男色家なんて噂がでてくるのですよ!!」
サリフ「はぁ!?そんな噂が流れているのか!?」
アレサンド「あっはははは!!それは面白い!!」
サリフ「よし、帰れアレサンド」
アレサンド「えぇ!!酷いなぁ!!」
ジャスアロ「さぁさぁ、アレサンド殿ご退室ください」
サリフ「ジャスアロも下がっていいぞ。 本当に今日は何もなかった。疲れたからもう寝るよ」
アレサンド「ははは!君も追い出されて可哀想に」
ジャスアロ「うるさいですよ!! 殿下、明日は公務がありますので外出はお控えください。 不本意ですが、本日は下がらせていただきます」
サリフ「あぁ、わかってるよ。 おやすみ、二人共」
サリフ「はぁ・・・(ベッドに腰掛ける)」
キバ「・・・(足元でサリフを見上げる)」
サリフ「ん?あぁ、オアシスの事はパラゴン殿の信頼を得られてから話すよ」
サリフ「最終的に、オアシスが解放できたら皇族から抜ける。『アイツ』の功績にして、未来の皇帝としてうまくやっていけるように・・・」
キバ「・・・(横になったサリフに布団を引っ張ってかけ、自身も足元で丸くなる)」