秘密の鏡

マンダリン

エピソード1(脚本)

秘密の鏡

マンダリン

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〇大きな木のある校舎
  旧校舎には噂がある
  美術室の壁に掛けてある
  「秘密の鏡」に・・・
  22時22分に知りたい事を言って鏡を覗くと、映し出してくれるという──
彩芽「遅いわね。まだかしらあのロン毛馬鹿」
陸郎「彩芽さーん」
彩芽「陸郎!遅い!何やってんのよ!」
陸郎「何って、こんな時間に家を抜け出すのに、かーちゃん騙すのに大変で・・・」
彩芽「そんなのどうとでもしてさっさと来なさいよ。 私を待たせるなんて下僕失格じゃない!!」
陸郎「えー俺、下僕なんすか?彼氏じゃなくて?」
彩芽「んなわけないでしょ。旧校舎に行くために男一匹くらい引き連れてなきゃ、危ないと思ったから呼んだだけよ」
陸郎「うっそー。俺、桃太郎で言うところの猿ポジションすかー?」
彩芽「あんたは猿でも、私は桃太郎じゃないっつーの!」
陸郎「すいませんー この通りですー(ぺこり)」
  陸郎は平謝りした。
  綾芽を怒らせると陰湿で厄介なのである。
  そういうところも含めて、陸郎は彩芽が好きなのであるけど──
彩芽「ふん、まぁいいわ。 さっさと例の鏡を探すわよ」
  彩芽は旧校舎の中へ入ろうと、施錠が掛かったドアを工具で開けようとしていた
陸郎「ところで未来の何を見る気ですか?」
彩芽「それは当然。 私の結婚相手を見るのよ」
陸郎「えーそんなの見たくても、俺じゃないんすか?」
彩芽「ないから、絶対!」
陸郎「そおっすかー・・・・・・」
彩芽「よし、開いた」
彩芽「私がどんなイケメン御曹司と結婚してるか、楽しみね!!」
陸郎「はあー」

〇木造校舎の廊下
  二人は旧校舎に入った。
  中は埃っぽくかなり古い。
  歩くたびに木造の廊下がミシミシと軋む。
彩芽「思った通りのおんぼろね」
陸郎「彩芽さんの体重が重いからじゃないっすか?」
彩芽「やだ、うそ。 違うし!」
陸郎「冗談すよ、冗談」
彩芽「あんたね、暗闇じゃなかったらぶん殴ってるからね?」
陸郎「よかったー!暗闇でー」
  ニャア
彩芽「キャッ!なに?!」
陸郎「ただの猫じゃないっすか?」
彩芽「ね、ねこ・・・・・・?」
陸郎「てか、彩芽さん、俺にくっつきすぎっすよ」
彩芽「う、嘘。 あんたが私にくっついてんでしょ?」
陸郎「しょうがないなー 手でも繋ぎますか?」
彩芽「結構よ! さっさと美術室に行くわよ!」
陸郎「待って下さいよー!」

〇美術室
彩芽「どうやらここみたいね」
  美術室にはいくつかの絵が置きっぱなしにされていた
陸郎「なーんか、気味悪いっすね 絵の具も筆も当時のままで」
陸郎「見て見て、蜘蛛の巣もあるー」
彩芽「そんなものはどうでもいいわ。 例の鏡を探してよ!」
陸郎「しょーがないなー」
  彩芽と陸郎はスマホを懐中電灯の代わりにして、「秘密の鏡」を探した
彩芽「ないわね。 そっちはどう?」
陸郎「ないっすねー 壁、壁、壁、です」
彩芽「おかしいわね。 この部屋の壁に掛けてあるはずなのに」
  ニャアー
彩芽「キャッ! ちょ、ちょっとまた猫!?」
陸郎「ははは、猫に驚いてるー」
彩芽「・・・」
陸郎「すいません・・・」
彩芽「まったく、驚かさないでよ猫ちゃん」
  彩芽は黒猫をそっと抱きかかえた
  ニャアー、ニャアー
彩芽「ん?なにこれ? 首輪のところに何かある」
陸郎「それ、鍵っすねー」
彩芽「何処の鍵かしら?」
  ニャー
  すると黒猫が奥の方まで歩いて行って、あるドアの前で立ち止まった
彩芽「暗くて気付かなかったけど、こんなところにドアがある」
陸郎「その鍵で開けられるんじゃないっすか?」
彩芽「そうね。 開けて見ましょう」
  ガチャリ──

〇地下に続く階段
彩芽「階段!?」
陸郎「地下なんかあったんすねー」
彩芽「陸郎、先行って!」
陸郎「俺?彩芽さんが先行って下さいよー」
彩芽「馬鹿、こういう時は男が先に行くんでしょ!?」
陸郎「いつも男として見てないのにー」
彩芽「いいから、行きなさいってば!」
陸郎「はうう・・・」

〇地下室
  階段を下りるとそこは、防空壕として使われていたような暗くて湿気の多い場所だった
陸郎「彩芽さん!」
彩芽「何よ」
陸郎「何かヤバイ雰囲気のところに着いちゃいました」
彩芽「分かってるわよ、見りゃ分かるわよ」
陸郎「もう帰りましょ?ね?」
彩芽「ダメよ、目の前の壁を見なさい」
陸郎「これは、例の鏡!」
  鏡がぽつりと壁に掛けられていた。
彩芽「ええ。 これが「秘密の鏡」ね」
彩芽「さっそく、私の未来の結婚相手を見せて貰うわ」
陸郎「え~見ちゃうんすか?」
彩芽「そのために来たんでしょ? それに時間は22時22分 5秒前・・・」
  5、4、3、2、1、カチン────
彩芽「さあ、秘密の鏡さん。 私の将来の結婚相手を見せてちょうだい!」
陸郎「ワッ──」
  彩芽がそう言った瞬間、真っ暗な部屋が眩い光に包まれた。

〇ソーダ
彩芽「見える、見えるわ」
「何が見えるんすか?」
「凄いイケメン! それにお金も持ってそう!」
「将来の旦那が、見えるんすか?」
彩芽「ええ、最高・・・」

〇大きな木のある校舎
彩芽「やっと外に出られたわ」
彩芽「要件も済んだし、帰るわよ」
陸郎「結局、相手はどんな人だったんすか?」
彩芽「知りたい?」
陸郎「それはもちろん!」
彩芽「私から言える事は、あんたとは真逆の爽やかイケメンって事」
陸郎「そんなあ・・・」

〇華やかな裏庭
  それから一週間後、陸郎は彩芽を学校の中庭に呼び出していた。
彩芽「ここで待ってろって、何考えてんのよ」
「お待たせしましたー」
陸郎「彩芽さ~ん!」
彩芽「な、なに、誰?」
陸郎「陸郎ですよ、髪切ったんす」
彩芽「・・・」
陸郎「どうです?似合います?」
彩芽「ダメ、ダメよ、そんな髪型」
陸郎「何で?いつもロン毛馬鹿って言うから切ったのにー」
彩芽「だって、その姿、まるで・・・」
陸郎「ん?」
彩芽「まるであの」

〇ソーダ
「あの秘密の鏡に映った。 結婚相手と一緒じゃない・・・!」
陸郎「彩芽~~!」

〇華やかな裏庭
  なんて事は、
  自分だけの秘密にしておこうと彩芽は思った
彩芽(陸郎が未来の旦那?! 確かによく見ると、イケメン・・・)
陸郎「彩芽さん? なんで、頬赤いんすか?」
彩芽「んなわけないでしょ。 もう行くわ!」
陸郎「ちょ、彩芽さーん!」
  完

コメント

  • ロン毛馬鹿から将来の旦那様に昇格ですね! 彼女にとって複雑かもしれないけど、髪をきってさっぱりした彼にホロっときているみたいですね。きっと彼は大物になりそうですねえ。

  • なるほど。睦郎はイケメンで実家は大金持ちかもしれないね。彩芽は睦郎を下僕のように扱っているけど、鏡で見た通り、いずれは結婚するかもね。

  • 3つのトキドキで構成されていて面白かったです!
    1つ目のドキドキは秘密の鏡、2つ目のドキドキはオンボロの校舎に黒猫、3つ目のドキドキは気付かないトキメキ!?最初から最後までドキドキさせられました❣

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