貴方の血肉になれるなら

ななりゅー

貴方の血肉になれるなら(脚本)

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〇オフィスのフロア
  ──そういえば雨だったかしら
  私にとってはもう古い記憶
上司「おい 海島! ここまた間違ってるぞ!」
海島 かおり「はい・・・ すぐに直します・・・」
上司「いつまで経っても無能だな!お前は!」
「クスクス (あの人は本当に使えねぇな)」
「クスクス (今日で何回目だっけ? 無能呼び)」
海島 かおり「(・・・・・・)」

〇女子トイレ
「クスクス (ねぇ?聞いたあのババアの話し?)」
「クスクス (聞いた聞いた 私あいつ気味が悪くて大嫌いなのよね クビになってくれて正解だわ)」
海島 かおり「(・・・・・・)」
  どうやら私は泣いていた
  悲しみと憎悪が混じりあい頭が真っ白になるほど

〇街中の道路
  どうやら私は傘をさせなかったみたい
  頬を流れる水滴がなみだに見えてしまうから
海島 かおり「大丈夫よ かおり きっと上手くいく」
海島 かおり「ちゃんと歩いて かおり 歩いてくる人から悲しんでいるように見られてしまうから」
  私はどこか上の空だったみたい
  足の方向性がバラバラだったから

〇住宅地の坂道
  そう この時だったわ
殺人鬼「ねぇ 俺の──」
海島 かおり「え?」
「キャアーー!!!」
「ナ、ナイフが・・・!! 助けてくれぇーー!!」
海島 かおり「(あれ?何が起きたの?私は?)」

〇住宅地の坂道
  私はふと彼がフード取った瞬間を見た
  死ぬ時の快感物質が大量に分泌されると聞いた事がある・・・
  そのせいかもしれないけど・・・
  私はあの時・・・・・・

〇住宅地の坂道
  あなたに 恋をした

〇住宅地の坂道
  貴方の血肉になれるなら

〇安アパートの台所
  ──平成20年 2月
  あの時、私が殺された後
  私は何故か ”誰か”になり変わっていた
井上 陽司「お母さん!ただいま!」
井上 葉子「陽司(ようじ)!おかえり!」
  私は井上 葉子(ようこ)

〇黒
  未来、”私を殺してくれる”殺人鬼の養母だ

〇安アパートの台所
  この子は”この姉の子供”だった
  だけど私が”葉子”になって1人暮らしをしていた時、姉夫婦が亡くなり
  奇跡的に生き残った”彼”を引き取った
井上 陽司「じゃあ、遊びにいってきます!」
井上 葉子「いってらしゃい!気をつけてねー!」
井上 葉子「(もういったかしら・・・・・・)」

〇怪しい部屋
  ──あかりをつけず、カーテンを閉めたままの暗い部屋
井上 葉子「あん!あん!」
  私は息子の写真を見て自慰行為をしている
  私があの時のように、息子から包丁で刺されている妄想しながら
井上 葉子「あーーーん!」
井上 葉子「えへへ・・・ 陽司・・・ だいすき・・・」
  もう私は、この気持ちを抑えられずにいた
  将来あの子が”私を殺してくれる”!!
  そのためなら何を犠牲にしても構わない!!
  私のこの感情が恋愛感情なのか、それとも殺された事に関する憎悪から来ているものなのか
  私には分からなかった・・・

〇アパートのダイニング
井上 陽司「お母さん!このコロッケ凄く美味しいよ!」
井上 葉子「まぁ 嬉しいわ!お母さんのも1個あげちゃう!」
井上 陽司「わぁ!お母さんありがとう!」

〇怪しい部屋
井上 陽司「お母さん おやすみ」
井上 葉子「はい おやすみなさい」
井上 葉子「(あぁ なんて可愛い寝顔なの)」
井上 葉子「(立派な育ってね そして私はあなたの中で、共に”生き続ける”)」

〇アパートのダイニング
  ──月日が経つのはあっという間で、あの時私が殺された年月になった
井上 陽司「母さん 実は話があるんだ・・・」
井上 葉子「なーに?」
井上 陽司「俺、今 付き合ってる彼女と結婚しようと思う」
井上 葉子「(──!)」
井上 葉子「・・・・・・ そうね・・・ もうそんな年頃よね・・・」
井上 葉子「分かったわ でもその前にウチに貴方の彼女を連れ来て欲しいわ」
井上 陽司「あぁ! 分かった! ありがとう!」
井上 葉子「(・・・・・・)」

〇アパートのダイニング
赤坂 ゆず「初めまして!お母様! 陽司くんとお付き合いさせていただいてます ”赤坂 ゆず”です!」
井上 葉子「初めまして 陽司の母の葉子です 息子がいつもお世話になっております」
井上 葉子「良かったら一緒に夜ご飯でも食べて行ってください」
赤坂 ゆず「はい! お言葉に甘えて」
井上 陽司「ありがとう お母さん」
井上 葉子「いえいえ」

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コメント

  • 人生に疲れボロボロの精神状態の時に運良く誰かに殺されたということがかおりが快感のようなものを感じ続ける原因なのでしょうか。その殺してくれた本人に執着しつづける様が苦しいほど伝わりました。

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