〇荒地
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「・・・」
　　仲間を逃がす時間を稼ぐため
　　一人、敵軍に立ち向かった
　　赤熱 鋼（せきねつ はがね）
　　右手のドリルは砕け散り
　　地に伏す彼に迫る敵──
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（『リバース・ドリル』）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（残りの寿命を犠牲に ほんの少しだけ時間を戻す最後の秘奥義）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（今時間を戻せば、ギリギリで敵の自爆を回避できる、はず──）

〇黒
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（だが──）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（本当にそれで、勝てるのか？）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（決戦のための、たった一枚の切札を こんなところで──）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（──・・・）
「待て！　クソ野郎ども！」
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（この声は──）

〇荒地
？？？「──チクショウ　間に合わなかった」
ネジ太「アニキッ！」
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「──ネ、ネジ太！」
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「馬鹿野郎！ なぜ戻って来やがった！」
ネジ太「馬鹿野郎はアニキだ！」
ネジ太「たった独りで、俺達を守るために戦ってきたアニキを・・・」
ネジ太「最後まで独りで、いさせられるかよォッ・・・！」
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「──！」

〇黒
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（──ダメだ！　身体が動かねぇ）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（頼む、逃げろ！　ネジ太！）
赤熱 鋼（せきねつ はがね）（逃げてくれ！）

〇荒地
ネジ太「よ、寄るな！ 来るんじゃねぇ・・・」
ネジ太「──」
ネジ太「──」
ネジ太「汚ねぇ手で！」
ネジ太「指一本アニキに 触れるんじゃねぇ────ッ!!!」

〇荒地
ネジ太「ガ──ハッ・・・！」
　　仲間を切り裂く凶刃
　　──その瞬間
　　鋼の迷いは消し飛んだ

〇黒
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「──リバース（時間よ）」
赤熱 鋼（せきねつ はがね）「ドリル（戻れ）!!!」

〇清潔な浴室
　　〜前回までのあらすじ〜
　　激臭地獄から開放され
　　お風呂していたあゆむは──

〇漫画家の仕事部屋
　　勝手に家に入ってきた早乙女（犯罪）
　　と鉢合わせる！
　　『弟子にしてほしい』という彼の願いを
　　受け入れるも──
　　その攻防であゆむの『男』を
　　守っていた最後の一枚が剥がれ落ちる！

〇黒
　　ほんの一瞬の油断によって立たされた窮地！
　　あゆむは心の中で
　　こう叫ぶのだった──

〇古いアパート

〇漫画家の仕事部屋
早乙女 優（さおとめ ゆう）「ギャ────────────ッ!!」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「オメェが叫ぶのかよ!?」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「しかも気絶するのかよォ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「とにかく」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・服着よ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（見られた）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（・・・・・・終わった）

〇漫画家の仕事部屋
　　あの憧れも

〇病室（椅子無し）
　　あの悲しみも

〇漫画家の仕事部屋
　　あの努力も

〇雑誌編集部
　　──あの決意も

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（全部、無駄だったんだ）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（私が）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（私が、男じゃない、から──）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（・・・あ、これ）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（あの時の・・・）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（これ以上、何を削ぎ落とせば）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（ホントの男になれるの？）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（もういっそ）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（全部やめてしまおうか──）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──」
　　──ボタッ
　　ボタタッ
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・うそ、冗談だよォ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「そんなつもり、ないっ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「冗談ッ・・・なのにっ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「なんでっ・・・こんなに──」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・涙が」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・ヤダ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ヤダよぉ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「何にも届かず」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「誰にも知られず・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「こんなっ、ひとりで・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「うっ・・・ううう」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──さみしいよォ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・だれか」

〇黒
　　だれか、わたしを
　　みつけてよォ・・・

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・（ぐすっ）」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（泣いたらすっきりした）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「さて・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「知らなかったとはいえ」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「乙女の部屋で気絶かましてるこの変態」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「どうしてくれよう？」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「よく考えたら、コイツを亡き者にしちまえば問題解決なんだよね」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「冗談、冗談」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「流石に殺しはね〜」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「うまいこと殴って記憶消せないかな・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ウ〜ン」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「でも、ミスって脳漿とか飛び散ったら ばっちいしなぁ・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「う、う、う〜ん・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「お」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「アレ、僕・・・ここは・・・？」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「起きたぁ」

〇漫画家の仕事部屋
早乙女 優（さおとめ ゆう）「たしか男坂先生のとこに 一人で引き返して」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「弟子入りを認めてもらって──」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「それで・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「・・・嘘、ですよね」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「あの胸は── 発達した大胸筋ですよね？」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（何いってんだコイツ）
早乙女 優（さおとめ ゆう）「ドリルも──」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「よくある挟んで後ろに 隠してただけってヤツですよねッ!?」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「!?」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（男ってそんなことするの？）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（・・・愚かぁ〜）
早乙女 優（さおとめ ゆう）「男坂先生が、アニキが」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「『女』だなんて・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「──そんなはず、は」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（バレたからには）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（やることは１つだよね）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「俺は──いや」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「私は、女です」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「アナタの嫌いな──女です」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「騙していたことは、謝ります」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「でもッ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「どうしても、男じゃないと叶わない 目的があるんだ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「女じゃ、駄目なんだ・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・だから」

〇黒
あゆむ「──このとおり、お願いします」
あゆむ「秘密にしてください」
あゆむ「私が──女だってこと・・・」
早乙女「・・・」
早乙女「・・・やめて、ください」
早乙女「・・・・・・土下座なんて」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──秘密にしてくれるなら」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「なんでもします」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──なんでも・・・します」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「だから、どうか・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「──ち」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「違う・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「僕は・・・こんな・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「──違うッ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」

〇シックな玄関
早乙女 優（さおとめ ゆう）「あ、あの僕・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「男坂先生の大ファンです！」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「『ドリルマン！』いつも読んでます！」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「大好きですッ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「──」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「そっか、私──」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ファンを、裏切ったんだ・・・」

〇漫画家の仕事部屋
　　数日後
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「あれから何もないけど」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「早乙女さん、秘密にしてくれてるのかな・・・」

〇漫画家の仕事部屋
敷島 海（しきしま かい）「──ッシ　次回はこれで行きましょ」
敷島 海（しきしま かい）「そういや、アシスタントなんですけど」
敷島 海（しきしま かい）「早乙女クンから連絡あって 急に辞めさせて欲しいって・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「そ、そう──」
敷島 海（しきしま かい）「あんなにやる気になってたのにナァ」
敷島 海（しきしま かい）「なんか理由聞いてます？」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「知らない・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ごめん・・・」
敷島 海（しきしま かい）「なんでセンセが謝るんスか」
敷島 海（しきしま かい）「ヒャッハー先生と御出先生は来てもらえるみたいなんで、なんとかなりますヨ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」

〇漫画家の仕事部屋
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・幻滅したんだろうな」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「もう、読んでもくれないかも」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（ネームは、異様に捗った）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（仕事に没頭してる間は──）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（何も考えなくてすむから）
「男坂センセ！　来たっスよぉ〜」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）（そうだ、今日からアシさんが来るんだった）
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「しっかりしなきゃ！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「は〜い！」

〇シックな玄関
敷島 海（しきしま かい）「おはよざいマス！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「おはよ」
敷島 海（しきしま かい）「打ち合わせもあるし、上がらせてもらいますね～」
ヒャッハー「ヒャッハー！（挨拶）」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ひゃっはー（挨拶）」
ヒャッハー「男坂先生！　今日もよろしくな！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・こちらこそ」
御出（おで）「今日も勉強させてもらうんだな・・・！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「御出先生」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「気合い、入ってますね」
御出（おで）「なんだな！」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・・・・・・・」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「はよざいます」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「・・・・・・・・・・・・」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「!?!?!?!?!!!??」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「へ？　へ？　へ？　なに？ 目ぇおかしくなった？　はえ？」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「（ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ）」
早乙女 優（さおとめ ゆう）「来ちゃった」
男坂 独歩（おとこざか あゆむ）「ハァ!!?!??!!!!???!?!?!??!?!!??!?!?」